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カウンセラーの対談「第11回斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第1回>」

第11回斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第1回>

斎藤環氏 プロフィール

斎藤環氏 1961年、岩手県生まれ。1990年、筑波大学医学専門学群環境生態学卒業。医学博士。

現在、爽風会佐々木病院精神科診療部長(1987年より勤務)。また,青少年健康センターで「実践的ひきこもり講座」ならびに「ひきこもり家族会」を主宰。専門は思春期・青年期の精神病理、および病跡学。著書に 「文脈病」(青土社)、「社会的ひきこもり」(PHP研究所)、「戦闘美少女の精神分析」(太田出版)、「『社会的うつ病』の治し方」(新潮社)、「キャラクター精神分析」(筑摩書房)。

 

山登敬之氏 プロフィール

山登敬之氏精神科医、医学博士。1957年東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。
専門は児童青年期の精神保健。

国立小児病院精神科、かわいクリニックなどに勤務した後、2004年に東京えびすさまクリニックを開院。ハートコンシェルジュ顧問。著書に「拒食症と過食症」(講談社現代新書)、「芝居半分、病気半分」(紀伊國屋書店)、「パパの色鉛筆」(日本評論社)、「新版・子どもの精神科」(ちくま文庫)ほか。

 

座談会第1回

新倉カウンセラー(以下 新倉):本日は東京えびすさまクリニック院長の山登敬之先生と爽風会佐々木病院の斎藤環先生をお招きしましております。お二人はですね、最近共著で「世界一やさしい精神科の本」を出版されました。それを記念して対談をしたいと思っています。どうぞ宜しくお願い致します。

向後カウンセラー(以下 向後):この本を中心に進めさせていただきたいと思います。色々と興味深いことがあります。まずは、解離性同一性障害についてお伺いしたいのですが。解離性同一性障害は、最近、以前より多くなっているような気がします。

斎藤環(以下 斎藤):えぇそうですね。多いですね。

向後:増えているのでしょうか?

斎藤:どんどん増えているとは言いませんけど、20年ほど前まではけっこう稀な疾患だったはずが、10年ほど前からは日常的に出会うような疾患になりつつあります。特に解離性同一性障害は日本人には稀と言われていましたけれど、もう普通に受診してきますしね。未だに少ないのは全生活史健忘、いわゆる「記憶喪失」です。精神科医が一生に一人見るか見ないからしい。僕は他のドクターの担当している患者を2例診たことがあるだけですけれど、最近は全然見ないですね。

向後:僕も一度もないですね。ドラマで見ただけですね。

斎藤:えぇ、韓流ドラマに多いでしょ(笑)。実際には滅多にいないと多います。

向後:解離性同一障害は非常に多くなっている印象があって、例えば30人以上人格がいる方がいらっしゃる方がいるじゃないですか。先生の新著の中に自分の中に街がいるって言っている人がおられましたね。

斎藤:人口数千人の都市があるというケースですね。そんな凄いのはさすがにはじめてでしたが。

向後:昔は二重人格って言われたのですけれど、最近ものすごく多くの人格を持つ例がしばしば見られますね。

斎藤:むしろ二重人格なんて見たことないですね。多重人格ですね、全例。いま二重人格が来ても、ただのスプリッティングに見えてしまうかもしれません。

向後:ああそうですか。僕は一例だけ二重があるんですけれど、それはアメリカで見ていたときだったんですけれど。まぁ、それ以外は10以上。

斎藤:そうですね、だいたい10人以上ですね。

向後:先生は本の中で、人格間の壁を薄くするということを書かれていますが、そのへんをもう少しお聞かせ願えますか?

斎藤:治療のゴールをどこにするかという話です。治療目標を設定するときに一番合意してくれやすいのは壁を薄くしましょう、人格を統合していきましょうという目標設定なんですよ。世間の人がよくイメージしているように、どれか一人の人格だけ残して、あとの人には消えていただきましょう、ってやるともう反発を買って治療にならなくなってしまいますから。とにかくみんなでこのたったひとつの身体を仲良く共有しましょうと。人格や記憶をへだてている壁を薄くしていきましょうというイメージは抵抗が少ない。いったんそういう方針をとるんですが、ほとんどの場合は勝手に交代人格が、まぁやっぱり消えていく感じで解決することが多いですけどね。

向後:あれ全部統合していっちゃうとなんか、最初の思っていた主人格と全然変わってくることあるじゃないですか?

斎藤:う〜ん、私はそこまで変わった人は診た記憶がないですね。一応もとの身体についた名前と一致している人格が残るケースが多いのですが。変わるというか、病前よりも成熟した印象になることはありますけれど、こちらの予想外の人格が残るっていうケースは、僕は診たことがないです。

向後:そうですか。最初主人格は、感情が平坦化して、どこかぼーっとした印象があったけれど、だんだん統合していって、最終的には、元気にというか、活発になったという例を見たことがあります。

斎藤:ああ、そういう変化はあるかもしれません。

向後:非常に従順だった性格だったのが、言うことを聞かなくなり、自己主張するようになったという例もあったとのことです。

斎藤:名前はどうなったんですか?名前は変わったんですか、その方は?

向後:名前は主人格は主人格のままだったようですけれど。

斎藤:最後に残る人格は元もとの人格の名前であることが多いですけれど、その名前が主人格となって性格がちょっと変わったということですね。

向後:そうですね。

斎藤:最近、私はそんな重症事例は診ていないので、最近来るのはほとんど"なんちゃってDID"ですね。
やっぱりハードに解離しちゃった人と、"なんちゃって"レベルの人では対応を変えたほうがいいように思います。・・・なんちゃっての人は相手にしないとそのうち出て来なくなってしまいますので。解離の専門家には叱られそうですが、境界例と一緒で、臨床家がDIDを作るとまでは言いませんが、強化している面はあると思います。それはしたくないので。

新倉:相手にしないと治っていきますか?

斎藤:「ときどき別の人格が出てくるんですよ」とか言っても、「なるほどね」とか聞き流して深くつっこまなければ本人も忘れてしまう(笑)。こっちがDIDに無関心だと出す意味が無いのであきらめる、という感じでしょうか。事例にもよりますが、そういう対応でうまく行くケースも結構あります。

新倉:そうすると、先生は、「なんちゃって」とそうでない本物のDIDの人の見分け方はどのようにされているのですか?

斎藤:やっぱり病歴と経過ですかね。普段の日常生活の中で、はっきりと生活時間帯が人格ごとに分かれているケースがあるわけです。そのことを家族も認識している。名前もついていて、「さっき○○ちゃんが来てたよ」と家族に教えられたりする。それだけ日常生活の中に浸透しちゃっているケースについては、重篤なDIDとして見ることにしています。本にも書きましたけれど、それぞれの人格と治療契約を結んで、やっぱり入院治療をすすめますね、その場合は。

新倉:しっかりとしたDIDの方の入院治療はどのくらいの期間が必要になりますか?

斎藤:半年位かかる人もいれば一カ月位で済む人もいますし、色々です。

山登敬之(以下 山登):入院中にも、病棟の中で人格を使いわけるの?

斎藤:使い分けるような器用さはあまりないんですが、結局は場面に合った人格が出てきているようにもみえます。一番困るのは攻撃的な人格が出てきて暴れたりされること。病棟のルール違反がくり返されると、ちょっと入院継続できませんから、まずは彼(彼女)に来ていただいて、治療目標に合意してもらって「あなたが消えるわけではない」ってことを保証して、それで治療していきましょうとまず納得していただくわけですよ。

山登:交代人格って普段とまるで別人に見えるもんなの?別の名前を名乗っているってだけじゃなくて?

斎藤:いゃ、そりゃ、小説や映画みたいにきれいにいかないわけで、やっぱり演技臭いですよね。

新倉:ほぉ〜演技臭いですか?

斎藤:演技臭いけど、やっぱり一所懸命演技しているんだから、つきあわなきゃって感じで割り切ってます。「一生懸命演技しなきゃいけないほどキツイんだろうな」と。

新倉:よく主人格は東京弁をしゃべるけれど、交代人格はイントネーションが違うとか、或いは外国語をしゃべったりするとか言われますが、話していて違う人格だと、その都度分かるのでしょうか?

斎藤:あぁ、あります。ノートに違う筆せきでこの日はこうだったんですとか書いてくるのがあって、その子は中学生だったんですけれど、あるときは英語の日記を書いてきたり、またあるときは読めない字が書いてあって、フランス語だったりとかね、よくよく調べてみるとどうもなんかの歌詞らしんですけれど。まぁ、そこがんばってDIDを演じているとも言えるし、本気かどうかはあまり確認しないことにしています。少なくともそこになんらかの「心的現実」はあるだろうと。

山登:女子高生がタジン、タジンって言うから何かと思ったら、「多重人格」のことだったんだよね。そういう言い方、流行ってるのかな?

向後:DIDという言葉は、結構広まっていると思いますけど、多人ですか・・。

新倉:タジンって鍋じゃないんだから(笑)

向後:解離性同一性障害の患者さんを担当する時、最初におっかない人格と会うって書かれているじゃないですか。なるほどと思いました。

斎藤:それしないと病棟がもたないんですよ。暴れまわりますから。

新倉:攻撃的な人格と契約を結ぶにあたって素直に向こうは「うん」と二つ返事ではかえってこないような感じがするのですけれど、その辺はどのように上手くやっているのですか?

斎藤:どんな攻撃的なすごいのが出てきても、「強がってるけどホントは治りたいんだよね?」と心でつぶやきつつ、治療を求めてきているということは、全人格の総意に間違いないので、たとえばメジャートランキライザー出すと、攻撃的な人格が怒ったりするから出すなっていうアメリカ流の"常識"がありますけれども、これもまぁ、日本人ではそこまで反応しませんしね。

新倉:今、日本ではとおっしゃったのはどういう意味ですか?

斎藤:初期の研究はみんなアメリカの輸入ですから、セレネースとか出すとかえって怒らせるからやめろと論文には書いてあるわけですけれど、僕はそういう事例の経験が一例もない。怒るとしたら主人格がNOと言えなくて他の患者からのストレスをため込んでいるのに、そいつに反撃できなくて悔しいとかいって怒ることはあります。ため込んだストレスは攻撃的な人格に集中しちゃうらしいので、「何で俺だけこんな目に」って暴れることはわりとわかりやすい構図としてあります。

向後:DIDの交代人格の中には、非常に優れた能力を持っている人格がある場合があります。例えば、英語がネイティブ並みに話せるとか、さまざまな資格を持っているとか・・。そうした場合、統合しちゃったらその能力がなくなってしまうのではないかと恐れていることがあります。そうすると職を失ってしまうっていうのを恐れていらっしゃる。そのような場合、先生は、どうアプローチされますか?

斎藤:ちょっと想像つきません。まず交代人格がそれほど高い能力を発揮できるケースを診たことがない。それと、もしそういう高い能力があれば、僕が目指すのはあくまでも人格の統合ですから、能力が失われることはないはずですけれど。だから、あまりそこで悩んだことはないですね。

向後:能力がなくなるってことはない?

斎藤:僕はDIDの問題を純粋に心因性の領域、つまりソフトウェアだけの問題と考えていて、ベースにあるハードウェアーとしての脳は共通ですから、もともとハードの能力が高いとしたら、能力が落ちるわけがないですよ。脳は、最高機能が残るだけだと僕は思っていますけれどね。色々診ていますが、だいたいそういう形で終わる。少なくとも、能力の低い方に統合されることはないでしょう。記憶も統合するわけですから、知識を忘れるわけでもないし。

向後:それはよかった。一安心しました。DIDの治療は結構長いことかかるんですよね。

斎藤:短くてすむ人とそうでない人がいますね。それこそ"なんちゃって"レベルの人はあっさり治ることもありますし、その一方で5年〜10年と診ている人もいますね。

新倉:その10年の治療過程の中で、新しい人格が出てきたり、一度統合されたところがまた崩れてしまったりとか、そういうケースはあるのでしょうか?

斎藤:それは無いですね。僕が診てるケースは、年単位でゆっくりまとまってきている。出るといっても週に数回ほど、交代人格が出てくるという、そういうレベル。

新倉:時間的にはかなり短いですねが、その方の生活に未だに支障があるのでしょうか?

斎藤:短いですね。ただ、その人格が一番攻撃的な人格なので、彼が納得しないとなかなか就労トレーニングとかも受けられないし、惜しいところで足踏みが続いてる感じもします。

新倉:彼はどんなことが納得いかずに出てくるのでしょうか?

斎藤:その攻撃的な人格はもっといろいろな刺激的な経験をしてくれと要求するんです。旅行したりとか、映画を見たりとか・・・。統合されてしまう前に、自分も楽しい経験をしたいと。そしたら納得して消えるからと言うんですね。そう自分から言い出したので、そういう約束をしたんです。

新倉:働くだけでは退屈だから、もっと楽しくやって欲しいと望んでいるわけですね。その方はどんな日常を送っているのですか?

斎藤:もっぱら家事ばっかりやっているので、それ以外のことも色々やって欲しいと。真面目な子なんでなかなかそういう風にはいかないですよ。まあ本人の潜在的な要求を代弁しているというわかりやすい構図ですけれど、それで10年以上かかっています。

新倉:10年間ずっと治療に繋がっているというのは、患者さんのコミットメントが強いのだと思いますが、10年経って現在はどのくらいの割合で治療を受けているのですか?月に1回とか?

斎藤:2週間に1回。

新倉:2週間に1回の治療構造は崩れていないのですね、凄いな〜。

斎藤:いつのまにか家事要員としてほかの家族からあてにされてしまって、友達と遊びたくてもなかなか遠出もままならない。家を出れば治りそうな感じがすごくするんですけれど・・・

新倉:何か出られない特別な事情があるのでしょうか?

斎藤:母親がちょっと体が弱かったり、父親がわがままな人で母親を困らせていたりと、そういう葛藤を家庭内で調整したり緩衝したりする役割を担ったまま、気がついたら10年経ってしまったという感じですね。

山登:そういう困らせる人格じゃなくて、交代人格集めて自分の応援団作ってるみたいなケースってない?

斎藤:さすがにそれは無いでしょう(笑)

一同:

新倉:そしたら病院に来る意味がないんじゃないですか?

山登:自分が一番困っていて、その自分を助けるために分身つくって応援するの。

斎藤:むしろ自分(主人格)が困らないために、わざわざ困り役の人格を分けるわけですから。

山登:いや、だから、その困っている自分をさ、イマジナリーフレンドとかじゃないけど、自分の味方が、ゴレンジャーみたいに大勢出てきて助けてくれるわけよ。「自分戦隊・ゴレンジャー」!みたいな。

斎藤:ゴレンジャー?(笑)

新倉:「自分戦隊って・・・」(笑)

向後:いゃ、ゴレンジャーいないけど・・。たまにね、危機のときに出てくる人格がいる。

斎藤:ありますね、メタ人格みたいたいなのがいたりとか、全てをお見通しのやつとか、あるいは他の人格が絶対さからえない権力を持ってるやつとか。主人格に協力的とは限らないんですが。

山登:必ずしも攻撃的な悪い奴がいなくてもいいんでしょ。

新倉:だいたい悪いのがいるんじゃないですかね、主人格を手こずらせる役割を担っているような攻撃的な人格が。

斎藤:悪いのがいないと解離する意味がないのでは。だいたいいますね。クレーマーと暴れん坊を兼ねたような人格が。

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