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さとう珠緒さんインタビュー
さとう珠緒(さとうたまお)PROFILE

女優、タレント。プチスマイル所属。1973年千葉県船橋市出身。
代表作品:スーパー競馬 (フジテレビ)(1997)  王様のブランチ (TBSテレビ)(1997)  ピカレスク (映画)(2002)  太田胃散 (CM)(2002)
テレビ:LOVE GAME 小悪魔な女になる方法 ナース&婦警 ナースマンがゆく すばらしき私の街
映画:ブラブラバンバン ヅラ刑事 いらっしゃいませ、患者さま GODZILLA FINAL WARS 釣りバカ日誌15

さとう珠緒さん

さとう珠緒さんインタビュー1

さとう珠緒さんインタビュー

向後:今日はお忙しいのに、ありがとうございます。

さとう: こちらこそありがとうございます。
私は、心理的なことに興味があり、もう少し日本でも普及しないかなと思っています。
世間では占いが好きで、占い師さんに観てもらって安心する女性も多くいます。でも、占いが悪いとは言いませんが、アドバイスを受けるにあたってアメリカのように、もうちょっと普通に気軽にできるようになればと思います。
ただもう、なりつつあるな、という気もしますけれど。

向後: 最近は段々変わってきましたね。以前NHKの「アリーマイラブ」という女性弁護士のドラマがあって、毎回カウンセリングを受けに行き、怒りをぶちまけるというストーリなのですが。

さとう: そういう話でしたか。

向後: よくご存知のようですけど、カウンセリングに対してどんなイメージを持っていますか?

さとう: 職場の複雑な人間関係で悩む社会人は多いと思います。誰かが的確なアドバイスをしてくれたら人間関係を円滑にする道が拓けたり、「ああ、そんなことだったのか!」と思えるようになればいいのだろうなあ、というのがカウンセリングのイメージです。
私の仕事だと、人も現場も毎回違うことが多く、OLやサラリーマンのように「上司が…」といったストレスは、さほどありません。

向後: でも、毎回新しい人と会うというのも、結構緊張しませんか。

さとう: 確かにそうですが、それが楽しくもあります。この仕事を選んで良かったのは、人との出会いがあるからかもしれません。
もしこれが、毎日9時〜5時で同じ人たちと何年もずっと一緒だとしたら、しんどいし、悩むかもしれませんね。

向後: そうですね。だいたい、来診するクライアントさんの7割ぐらいは人間関係で悩んでいます。
毎日一緒で、下手したらプライベートまで、となると、中には合わない人もいるし、大変なストレスになります。

さとう: そういう方には、どういうアドバイスをするのですか?

向後: 皆さん、イジメのような悪意ではなく、良かれと思ってやっているのに、つい行き過ぎるんですね。
例えば、食事に行く時に、「どの店に行く?」「イタリアンにする?日本料理にする?」となったら、「何でもいいよ」って言う方がいるじゃないですか。その方にしたら謙虚なつもりで、それでうまくやっていける時期もある。しかしただそればかりだと、逆にいつも自分の意志がないと人間だと思われ、何となくギクシャクしてくるとかね。

さとう: それだけで…。

向後: そのちょっとしたことで、「なんか、自分がいけないんじゃないか」と思ってしまう。そんな悪いことをしているわけでもないのに。

さとう: 相手の気持ちに配慮して「何でもいい」と言ったのかもしれないし、そこは難しいですね。互いに察すればうまくのに。
図々しく「イタメシ食べたい」と言えるキャラクターならいいですけどね。上司になら図々しく言った方が喜ばれるかもしれませんが、言葉って難しいですね。

向後: 珠獅ウんだったら大丈夫でしょ(笑)

さとう: 私はこう見えて、意外にそういうことが苦手なんです。
「イエーイ♪」みたいなノリで付き合える相手もいれば、「あんまり先輩に図々しく出来ないなあ」と気遣うこともあります。萎縮したり恐縮すると、「何かキャラと違うじゃん」と言われて、「そうなんですよ〜」と返すこともあります。人間ですからね。

向後: 失礼なこと言っちゃいましたね(笑)

さとう: いえ、全然。でも、二面性があるわけじゃないですが、相手によっては遠慮すると言う方もいますよね。

向後: 「キャラと違うじゃん」と言われると、落ち込む人もいるのですよ。

さとう・向後
難しいですよね。

さとう: 意思の表現方法で悩む方は、きっと多いでしょうね。

向後: 多いですよ。ただ、さっきの話のように、「何でもいい」と言う人は、人のことを考えてるという気持ちがひょっとしたらあるんですね。
カウンセリングでよくフォーカスするのは、自分のダメな点より良い点に気付いてもらうところです。
落ち込むと「私はダメだ。いつも何も言えない」となりますが、「確かに言えてないかもしれないけど、とってもいいところがあるじゃないか」というところから始めていくことが多いんですよ。

さとう: 長所を見つけ、誉めて自信回復ですか。
一度でもネガティブになると、全部ネガティブに考えがちですよね、人間って。でもポジティブになれるキッカケがあると、「そうか!」と思うんですよね。ただ、ちょっとしたドツボにはまる時があります。誰にもね。

向後: 僕も今、カウンセラーなんてやってますけど、ドツボにはまることはいっぱいあったし。今でもあるんですよ(笑)

さとう: そうなんだ。先生も。

向後: 一個歯車が外れると、どんどん「俺はダメだ〜」の繰り返しになる。
そこで、どうカウンセリングするかというと、あんまりアドバイスをしないんです。占いでは「こうしなさい」「こっちの方で黄色いのを着なさい」とアドバイスしますが、僕らはクライアントさんが自分で回復するのを信じる。元々誰でもそういう力があると。その力を自分で見つけ出すお手伝いをするのです。
だから僕らは、50分のワンセッションの中で1回ほどしかアドバイスしない。自分の中の「あ、私、意外にやれるじゃん」という、今まで気付かなかった解決策に、自分で気付いてもらいます。

さとう: それはいいですね。「ああしなきゃいけないこうしなきゃいけない」と、課題が一杯あると、「どうしよう〜」と、煮詰りますからね。

向後: 元々悩んでる方は、「ああしないさいこうしなさい」というのを沢山言われてきたので、そう言われれば固まってしまう。

さとう: 真面目な方が…

向後: 真面目で、周囲から「ああしなさいこうしなさい」と言われて、どうしたらいいか分からなくなる方が結構多いんですよ。

さとう: 自分で「これいいかも」と、重要なポイントに気付いて、少しずつ解決していくことですか。

向後: そうですね。「自分の中にこういうところがあったんだ」というのが見えてくると、その人の表情が変わってきます。
鬱やパニックの方が来ると、最初は、ぽわ〜んと、力がなくて、どよよ〜んとした感じなんですが、これが、「自分は大丈夫だ」みたいな力を認識して回復していく。回復したときは、ドアを開けただけで分かります。

さとう: オーラが違うなあ、と。
先生にとっても、それは嬉しいですね。どんどん元気になって。

向後: だからやめられない。

さとう: 人助けというか、人を元気にさせるお仕事なんですね。

向後: 自分が嬉しいから、やってるところがありますけどね。
実際、ちょっと感動的でね。ホント違うんですよ。なんかパーッとした…。これ、文章にならないね(笑)。

さとう: 分かります分かります。晴れやかな。

向後: そう、晴れやかな感じですね。顔もパーッと明るくなるんですよ。
それで、女の人は綺麗になり男の人は格好良くなる、と思っています。

さとう: おー。じゃあ、外見にまで繋がる「心のエステ」。心が元気じゃないと、態度や仕草、表情にもすべて出ますもんね。

向後: そうですよね。それから、「おっ!」といういい感じのコメントをくれるクライアントさんが一杯いましてね。
例えば、鬱でカウンセリングに来ていた女性が、もう治ったので卒業することになり、最後にクロージングセッションといって、これまでの振り返りをやったのですが、その時の彼女の言葉が印象的だったんです。「私に見えている世界は、鬱の時と今と、構図も登場人物も変わらない。だけど昔は白黒で見ていたのが、今は綺麗なカラーで見えている」と言うんです。
そうなると本当の回復で、こちらも嬉しいですね。

さとう: 心理は一人一人違うので、「鬱ならこういうパターン」のような数式的な正解がなさそうじゃないですか。それで先生も苦労したりしませんか?

向後: おーっ、いいポイントですね。一人一人の置かれた状況や環境、パーソナリティが本当に違いますから、「前はこの方法でよかったから全部大丈夫だ」といった数学のような公式にはなりません。同じ鬱や不安でも全く違います。

さとう珠緒さんインタビュー

さとう: どうやってそれを掘り下げていくのですか?

向後: なかなか言葉で表すのは難しいです。カウンセリングは、ジャズやロックで、「ベースがこう来たからキーボードがこう来る」みたいな即興部分のような感じです。その場その場でライブみたいにやっていくんです。
ちょっと、基本や裏技とか、お伝えしましょうか。

さとう: 裏技があるんですか?聞きたいです。

向後: 「呼吸合わせ」とか「ペーシング」といって、自分を相手の呼吸に合わせるんですよ。

さとう: じゃあ、鼻息が荒い人だったら、それに合わせるんですか?

向後: そうそう(笑)

さとう: 怒っているなと思ったらこう、穏やかだなと思ったらダウンとか…。スポーツ、格闘技みたいですね。

向後: 格闘技みたいなものです(笑)。簡単ですからやってみたら面白いと思います。言葉が少なくてよく分からない方でも、ちょっと観察していると、相手の呼吸が分かります。
今、分かると思いますよ。肩の辺りとか胸の辺りを見ていると、深いか浅いか、速いか遅いかが分かるでしょ。僕は今、あまり深くないんですけど。

さとう: 私が深くないので、合わせているんですか?

向後: いえいえ(笑)そうじゃなくて。

さとう: えー。よく分からないです。今後は、人を見る時に注意して呼吸を見てみます。

向後: この辺(肩や胸)を見ていると分かります。

さとう: おおー。それを合わせると波長が合うみたいな…。おもしろーい。

向後: そうするとね、相手の気持ちがパッと入ってくるみたいな感じで。

さとう: 面白いなあ。

向後: 一緒に呼吸を合わせてたら、僕の頭が痛くなったんですよ。そうしたら、そのとき、クライアントさんも頭が痛かったということがあります。

さとう: へえー。

向後: 段々ヤバイ方向になってきたなと…(笑)
でも本当に、身体に反応することがあって、クライアントさんと同じ地面から世界を見るような状況になる。そうすると、「ああ、その状況は辛いだろうな」というのが分かってくるんです。

さとう: でも、相当優しくないと出来なくないですか?

向後: いや、僕は、あまり優しくないですよ(笑)

さとう: 今、仕事で狂言を演じている最中で、普通ならあるようなセットがなく、照明も変わらないし、少し音が出るだけの舞台でお芝居をしています。観客も役者も「ここに竹がある」と想像しながらやるんです。
すると不思議に、舞台上の共演者が「ああ、今、綺麗な海を想像している」と感じていることが、フッと分かったりするんです。
もちろん、対立するようなシーンでは全然プイッという感じですけど、共感するシーンでは、相手役の思いが分かる瞬間があります。無意識レベルで合わせよう、しようとしているだけで、全然違うのかもしれませんが。

向後: いや、同じだと思いますね。僕らが話を聞く時、ビジュアルに浮かべるのですよ。一緒にいようとするだけで、自然に呼吸が合い、フッと同じ情景が浮かぶことがあります。

さとう: 逆に、興奮気味でイライラしている人を落ち着かせるにはどうすればいいんですか?自分が落ち着いたことをやればいいんですか。

向後: お、素晴らしいポイントですね。その場合には、逆に呼吸を合わせないんですよ。ゆっくりした呼吸をするんです。ここでは滅多にありませんが、前に他の機関で、すぐ殴ったりキレたりする非常に暴力的な人を中心にカウンセリングをしたことがあります。そういう方と呼吸を合わせても仕方ないので、彼が興奮していても、こっちは、スーッと落ち着いていくんですよ。雰囲気的には、地面に足を付けて気の流れが上から下に流れていくイメージを持つんですね。

さとう: 自分がそういうイメージを持つ?

向後: そう。足の裏から大地に向かって気が流れて、この辺に出てくる恐怖が一緒に流れるような感じで。そうすると、スッと落ち着けるんです。こっちが落ち着くと、相手がワーッとなることはあまりない。

さとう: 怒っている人を目の前にした時に、落ち着かせたいと思ったら、「この人、なんか暴力的だ」と見るのではなく、そういう風に自分が変われば相手も心を少しずつ開いてくるんですね。

向後: そうなんです。ずっとこっちも落ち着いていると、どんなに興奮している人でも50分はもたず、だいたい30分ぐらいで落ち着く。

さとう: さっき先生が対談前に言っっていたDV。DVで悩んでいる奥様や女性は、どうして、そういうふうになってしまったんだろうって思います。実際そういう男性をたまたま恋愛して好きになって殴られたりしたら、たまらないですよね。どうしたらいいですか?

向後: なぜ、彼女たちが逃げられないかというと、時々男性がものすごく優しくなる時があったりして、コントロールされているんですよ。

さとう: 気持ち悪い…。イヤだ…。

向後: それなのに急にキレちゃうわけです。そのサイクルが繰り返されるパターンが多い。優しくされると、「あっ、この人変わってくれたんだ」と思ったのに、またドカンと怒りだす。そしてまた優しくなる。これが繰り返されるうちに、もう判断が出来なくなるのですね。

さとう: ちゃんと別れるのがいいのか、それとも彼にもカウンセリングさせるか。どちらがお薦めですか?

向後: 別れるか別れないかは難しいんです。殴る蹴るされているのに、「私、殴られて鼻の骨折りました」と、怖いというより淡々と話してくるんですよ。もう感情が分離している状態なんです。
そこで彼女の感覚や感情が甦っていくのを手伝うと、自分の中のエネルギーをちゃんとまた認識し、自分で判断出来るようになってくるのです。それで、「こんなことされる謂われはない」と。

さとう: 「怖かったんだ、私」とか「痛かったんだ」と。それすら忘れていた。

向後: そうなんです。忘れるんですよ。それが怖いところです。

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