本ウェブサイトでは、スタイルシートを使用しております。このメッセージが表示される場合には、スタイルシートをoffにされている、またはブラウザが未対応の可能性があります。本来とは異なった表示になっておりますが、掲載している内容に変わりはありません。

以下のリンクより、本文へジャンプができます。

HOME > カウンセラーの対談 > カウンセラーの対談 第1回

カウンセラーの対談「心理カウンセリングと精神科診療の違い<前編>」

今回は、ハートコンシェルジュの提携医療機関である東京えびすさまクリニックの院長・山登敬之先生と、青山初音カウンセラーの対談です。

心理カウンセリングと精神科診療の違い<前編>

1.初回面接について

カウンセリング:初回面接のすすめ方山登(以下:山):精神科も最近では敷居が低くなってるから、結構お悩み相談みたいな方が来られることもあるんですよ。でもやっぱり病院だから、病気の心配をされて来られる方が多いわけなんですが。こういうところ(ハートコンシェルジュ)は実際どうなの?どういう主訴の方が来ます?病院とあんまり区別がつかないで来る人もいます?

青山(以下:青):そうですね、いろいろな方がいらっしゃいますが、病院に行くのは抵抗があるんだけれども、カウンセリングでどうにかできるんだったらそっちで、という方も多いですね。

山:やっぱりサイトを見ていらっしゃる方が多いんですか?

青:そうですね。あとはご紹介で来て下さる方が多くいらっしゃいます。今の傾向としては、うつの方が全体的に多いですね。それ以外では、家族関係の悩みや、恋愛、職場の人間関係についてとか・・・

山:そうすると、「悩みがあるんです」みたいな言い方で切り出してくる?

青:「悩みがある」とストレートに話す方もいらっしゃいますが、初めて来る方は何から話し始めたらよいかわからなくて、緊張されている方も多いですね。

山:そういう時は、やっぱり質問するよね、こっちから。

青:はい。あと、ここの場所があまり分かりやすくないので「来るまでに分かりづらくなかったですか?」とか、お天気の話とかして、当たり障りなくスタートすることもあれば、「今日カウンセリングを受けようと思ったきっかけは?」など・・・

山:天気の話はしないなあ。

青:あ、しないですか(笑)

山:何度も通ってる人とはするだろうけど、初診の場合はまずカルテを見て、「○○さんですね、山登です、よろしくお願いします。今日はどういうご相談でしょう?」と、こういきますよね。

青:ストレートですね。

山:青山さんは、もうちょっとこう、なごませてから、って感じ?

青:そうですね、ストレートに来られたら、そのまま始める時もあります。ドアを開けた時点でスタートするので、その方の様子を見ながら・・・。

山:精神療法の教科書なんかを見ると、挨拶は必ずとしよう、とか書いてあるんですけど、昔の大学病院とかだったら、大学教授は挨拶なんてしなかったよね。もう、患者の顔も見ないような人もいたくらい。

青:シャイで(顔が)見られないっていう方も、なかにはいらっしゃるかもしれないですね(笑)

山:おまえの方が薬飲めよ、みたいなね(笑)。僕のところは1人で開業しているんで、大学病院と違って、若い医者が予診をとったりすることはないですよね。だから、患者さんが来て受付したら、すぐ次診察でしょう。で、ハートコンシェルジュもそうでしょ。主訴を聴いてアセスメントする、と。 ・・・で、どうするんですか、次は?

青:もちろん最初のアセスメントでわかるケースもあれば、後から出てくることというのもあると思うんですね。その日に初めて出会う間柄なので、いくら自分から思い切ってカウンセリングに来ようと思っても、いざ話してみると、思ったより話せないということもあると思います。そういうときは、こちらも、クライアントさんがじゅうぶんに話せていないな、まだ全部出てきていないな、という手ごたえを感じるものなんですね。初回だけではなくて1回1回がアセスメントというか、ケースによっては、5回、10回重ねた後に、「あ、実はこうだな」って変わってくることもあります。

2.カウンセリングと精神科診療の違い

山:初回の時間っていうのは、どれくらいなんですか?

青:ここは30分、50分、80分のコースがあるんですが、30分は初回ではお受けしていないので、50分か80分で選んでいただいています。2回目以降は30分もありですが。

山:なるほど。そのへんも全然、僕たちと違いますね。こっちは、初診の30分で話を聴いて、とりあえず見通しを立てたら、「たぶんこういうことだと思いますから、ここではこういう治療ができますよ」とだいたいの見立てを話して、薬を出す人には出すし、次はいついつに来て下さいと言う。その30分でいちおう最初の決着をつけるわけ。たとえば、50分なり80分なりの初回のインテークをメインにした面接をやるとして、その時には見立てをご本人にお話するんですか?

青:セッションの最後に、「おそらくこういうとても大事なテーマがあると思います」とお伝えして、もし通っていただくのが可能なようなら、そしてカウンセラーが私で良かったら、一緒に取り組んで行こうというお話をします。だいたい1週間か2週間に1回のペースで、全部で5回から10回通っていただければ、とお伝えします。もちろん強制的なものじゃないので、カウンセラーを変えたいとか、もっと通いやすいところに行きたい、というのもご本人の自由です。

山:最初に回数を提示するんですか?

青:ケースによります。なかにはそれこそ「悩み」でくるのではなくて、心理学を学んでいる方が教育セラピー(教育分析)を希望していらっしゃる場合や、スーパービジョンを受けにいらっしゃる場合もあるので、ケースによりけりなんですけれども。

山:へぇ〜、そういうこともやってるんだ。

青:はい。教育分析だと、学校によってなんですけど、年に30時間とか規定があります。それから、ケースによっては最初の1回で決着がつくこともあるのですが、だいたい5回から10回で「手ごたえ」というか何かしらの変化が感じられるように、ここに初めていらした時よりも楽になった、前に進めたと感じられるように、という姿勢でやっています。ほかには、ご本人ではなく、ご家族の方が「どういう風に関わったら良いのか」ということでご相談にいらっしゃることもあるので、本当にケースによります。

山:戻りますけど、最初の時には「どうしましたか?」とか「いつからですか?」とか、そういうヒストリーも聴くわけですよね。

青:そうです、そうです。

山:生育歴とか、家族のことまでは深く突っ込まないにしても・・・

青:そうですね、「ご実家ですか」とか「お1人暮らしですか」とか。先生は、30分で決着するために、絶対に家族歴まで聴かれるんですか?

山:初めからあんまり立ち入ったところまでは聴かないけど、「今どなたとお住まいですか?」ぐらいから聴くよね、ひとまず。それから、「ご家族に病気の方はいらっしゃいますか?」とかは聴いておかないと。

青:「30分で決着する」というのは、すごいことですよね。

山:いや、30分っていうのは目安なんで、実際にはもうちょっとかかってるんじゃないですかね。最近までカウンセラーさんたちにインテークをとってもらってたんですけど、あとで分からないことが出てくるんですよね、それだと。やっぱり最初から自分で聴いておかないと抜けてしまうことがあって。足りないところは後から自分で埋めていくわけだけど、最初に時間を割いて聴いておかないと、結局あとで自分が困る(笑)。

青:そうなんですか。

山:それでやめちゃったのね、カウンセラーのインテークを。患者さんがいらしてから30分インテークをして、その後30分待ってもらって、それから僕が30分診るとなると、1時間半とか2時間とかかかっちゃうでしょ。時間かけて聴いてもらった感じがしていいかなぁと思っていたんだけど、患者さんにすれば、早く終わらせて帰りたいって思うかもしれないし、それだったら最初っから自分で聴いちゃえ、と。

3.カウンセリングにおける個人情報のあつかい

カウンセリング:カウンセリングにおける個人情報のあつかい青:ハートコンシェルジュとは違うなぁと思ったのが、インテークシートなんですけれども。私も前に病院や小学校で働いていた時には、それぞれ決まったインテークシート(質問紙)があったんですが、先生のところではどんなものを使ってらっしゃるんですか?

山:どっかの病院が使っているようなものを参考にして作ったんですよ。でも、大学病院みたいなところのシートだと、患者さんのデータを取るために、聴かなくても良いような項目が入ってたりするんですよ。細かく埋めてたら時間もないので、そういうのは省いて・・・まぁ、おおざっぱなもんですよ。

青:患者さんご自身が書かれるんですか?

山:いえ、こっちで聴きます。でも、予約の段階では、いちおうメモでいいから「いつごろからどうなった」とか書いてきてください、っていうお願いはしてるんです。きちんと書いて来てくださる方もいるし、書かずにいらして話していく方もいるし。病院によっては、事前に書類をFAXして書き入れて来てくれとかいうところもあるみたいだけど、うちではそういうことはやってないです。

青:そうですか。でも、大きい病院とかだと、ご本人にインテークシートを書かせるところがありますよね。

山:そうそう、学歴とか、家族構成とか聴きにくいことを、自分で書き入れてもらう、っていう。

青:たとえば婦人科なんかの話だと、「こんなことまで書かせるの!?」っていうことがあるじゃないですか、例えば「パートナーの国籍」とか。たぶんそれは、病気にかかわることなんだと思うんですが、書くほうとしては抵抗があったりしますよね。

山:そうですよね、個人情報にうるさくなった、いまみたいな時代だとなおさらですよね。まだ関係ができてないのに、そういう聴きにくいことは聴けないし、そもそも最初の時間でいっぺんに聴けるわけないし、それは後から埋めていけばいいことなんですよね。

青:おっしゃる通りですよね。でも、そういうふうに思って取り組んでくださる先生って、少ないと思います、ものすごく。

山:まぁ、大きい病院だと「データ集め」や「調査研究」みたいな必要もあってのことだと思うんだけど、町のクリニックの「医療サービス」という点から考えれば、そんなこと必要ないわけだからね。

青:そうですよね。でも、他のカウンセリングルームに通われたことのあるクライアントさんが、ここにいらした時に「先にインテークシートを書かなくていいんですか?」とおっしゃることがあるんですね。私たちのところでは、個人情報保護法に基づいての書類とか、お名前・ご住所などを書いていただく書類はあるんですが、そういう細かいところまでは伺ってないんですね。で、初回でどうしても必要なテーマでなければ、無理やり踏み込むことも一切しないんですが、なかにはそれをしっかり書かせるところがあるんです。実際、私の前の職場でも、初回のインテークの時に、細かく書かせたんですね。「求めているゴールポイントは?」とか「こういうふうになりたい」とか。

山:いきなり来て、まだカウンセラーの顔も見ていないうちに質問用紙に書かされるのと、会った後で聞かれて答えるのでは全然違うから、それはやっぱり抵抗ありますよね。だから、それはしないほうが、むしろ親切だと。そういうのって、結局、時間の短縮とかデータ集めが狙いだから、そもそもクライアントの希望じゃなくて、こっちの都合じゃないですか。だから、インテークシートの質問項目なんかでも、ひとつの良い例だと思うんだけど、カウンセリングも「こっちの都合をいかに少なくできるか、クライアントのニーズをどこまで優先できるか」を、ちゃんと考えてるかどうかってことなんだよね。

青:本当におっしゃる通りですよね。本当にそうです。

山:「サービス業」ってことで考えたら、本当にそうあるべきだと思うんだけど。さっきの最初の治療契約っていうのは、個人情報保護法に基づいて規定されたものが、なにかあるわけですか?

青:はい、細かく規定されたものがあります。

山:じゃあ、それをクライアントさんに読んでもらって、相談を始める前にサインしてもらうとか?

青:そうです。

山:医者には守秘義務があるから、そういう契約書なんかを書かなくても、もともと法律のしばりがあるわけですよね。だけど、こういうところはフリーでやってるわけだから・・・

青:お互いの関係をしっかり守るために必要なんですね。

山:でも、医療機関といえども、だんだんそんなふうに世知辛くなるかもしれないな。

青:そうですね。だから社長が、「プライバシーマークを取得しよう」って情熱を傾けているんですけど。

山:それはなかなか興味深い・・・

青:プライバシーマークというのは、個人情報保護法に基づいた規定なんですが、ものすごく細かい規則があるんです。書類はすべて厳重に鍵をかけたキャビネットに保管して、帰る時には机の上に一切書類を置いておくことはできない。メールで個人情報を含んだファイルを送信する際には、必ずパスワードをかける。お客様の個人情報はもちろん、従業員の緊急連絡先だとしても、事務所内に電話番号や名前を書いてあるものが貼ってあったらいけない、などなど・・・。。情報を漏らそうものなら「この会社は漏らした」と晒されてしまうとか、罰せられたりもするようです。

山:ハートコンシェルジュの信用を、そういう目に見える形で確保しようっていうことですよね。素晴らしい!どうせなら、そういうところにお金をかけなくっちゃ。

青:ありがとうございます。

<対談者紹介>

山登 敬之(やまと ひろゆき)山登 敬之(やまと ひろゆき)

精神科医、医学博士。1957年東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。
専門は児童青年期の精神保健。

国立小児病院精神科、かわいクリニックなどに勤務した後、2004年に東京えびすさまクリニックを開院。ハートコンシェルジュ顧問。著書に『拒食症と過食症』(講談社現代新書)、『パパの色鉛筆』(日本評論社)、『芝居半分 書店)、『子どもの病気半分』(紀伊國屋精神科』(筑摩書房)ほか。

 

▲ページの先頭へ