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HOME > カウンセラーの対談 > カウンセラーの対談 第2回

カウンセラーの対談「心理カウンセリングと精神科診療の違い<後編>」

今回は、ハートコンシェルジュの提携医療機関である東京えびすさまクリニックの院長・山登敬之先生と、青山初音カウンセラーの対談です。

心理カウンセリングと精神科診療の違い<後編>

心理カウンセリングと精神科診療の違い

青山(以下:青):精神科とカウンセリングの違いを考えてみた時に、私たちは先生たちと違って、診断はできないんですが、それを求める方々ってとても多いんですね。まぁ「何かの診断をしてほしい」ということ自体に、とても意味があると思うんですけれど。

山登(以下:山):「あなたの悩みはこういうことなんですね」というふうに、その人のもやもやしているものをはっきりさせてあげることはできる。だけど、僕たちみたいに病名をつけて分類するっていうことはしない、と。僕たちは考え方を整理するために病名を必要としているわけなんだけど、心理の人たちは、「病気」のことは頭のまん中にはないですよね。

青:そうです。

山:僕たち精神科医には、考える道具として診断学があって、それを使いながら患者さんを診ている。この患者さんは病気の疑いがどれくらいあるのか? 昔の物差しで言えば、神経症圏なのか、精神病圏なのか、とか。その物差し、基準を僕たちは医者になる過程で叩き込まれるわけなんだけど、心理の人たちにとって、それに代わる物差しってなにかあるの?

青:それは、診断基準ということで、ですか?

山:僕たちの場合は初めに診断ありきなんだけど、心理の人たちは、初めにも終わりにも診断はないじゃないですか(笑)

青:ないですね。いろいろな(診断の)可能性を、心の中で考えたりはしますけれど。

カウンセリング:心理カウンセリングと精神科診療の違い 山:だからそれをどけて1人のクライアントさんと向き合うとき、初めに何があるんでしょうかね?心理の人たちにとっては、「初めに○○ありき」の○○には、何が入るんですか?

青:そうですね、カウンセラーによって違ってくると思うんですけど・・・

山:何か暗黙の大前提みたいなものはないんですか?それを、それぞれのカウンセラーさんに聞いてみたら、面白いかもしれないですね。精神科の医者同士で話した時には、「初めに診断ありき」で異議を唱える人はいないと思うんですよ。

青:私の場合は、初回に限らず全部のセッションに共通して言えることなんですが、「いま目の前にあること」を見ることですね。

山:それはいわゆる「いま、ここ教」の教えですね(笑)

青:「いま、ここ教」・・・(笑) そうじゃない方(カウンセラー)も、たくさんいらっしゃると思うんですけれども。

山:僕なんかは、患者さんの話を聴きながら、気になることがあれば「それはいつのことですか?」としつこく時系列で並べていくんですよ、とっても単純なことなんだけど。そうやって並べていくと、出来事の順番だけじゃなくて、その人の精神生活のヒストリーがみえてくるんですよね。で、うちのカウンセラーさんたちの記録なんかをみると、そのヒストリーっていうところが、少しゆるい気がするの。それは「いま、ここ」から始まっているせいなのかな?

青:そうですよね、ゆるいですよね。

山:僕たちは生まれて今までの時間を埋めようとするわけだよね、それこそ。

青:埋めていかないといけないケースも、あります。ただその時系列っていうのは、カウンセラーによってそれぞれやり方が違うとは思うんですけど、私はパズルのピースを1個1個もらってる感じなんですよ。このへんは形になってきたんだけど「ここのピースに穴がある」というところは、やっぱり聴いていきます。で、聴いた時にそのパズルのピースをくださるかくださらないか、それは私との関係とか、その方の状態にもよると思うんですけれど。で、いただいたピースがはまると、それはクライアントさんにとってもカウンセラーにとっても、手ごたえのあるセッションになると思うんです。

山:つまり、僕たちに必要な情報を集めるためだけに聴くんじゃなくて、そうやって失われたピースを集めてきてはめてあげることで、クライアントは「あのとき起きてたことは、そういうことだったんだ」とすっきりするわけですよね。

青:そうですね、それがお友達とかご家族とかにお話するのとは違うところだと思います。

山:カウンセリングって、ちょっと前までは人生相談や占いみたいにナイスなアドバイスをもらえるものと思われてたり、あるいは、カウンセラーはフンフンて話を聴いているだけじゃないかと文句言われたりとか、あったと思うんですよ。そういった誤解を解くために、カウンセリングはこういうことをするんですよ、って話はするわけ?

青:私は初回の時に説明しています。スタートする時にお話しすることもあれば、すぐにご自身の話をされたい場合は、ある程度吐き出していただいて落ち着かれた時やセッションの最後にする時もあります。基本的に「アドバイスとかお説教はしない場所」というふうにお伝えしています。「自分の悪いところを見つけ出して、それを治してほしい」とおっしゃる方もいらっしゃるのですが、そういう場ではないことをご説明しています。

カウンセリング:心理カウンセリングと精神科診療の違い山:医者もそうだし、ちょっと前のカウンセラーもそうだと思うんだけど、お説教してる人いるよね、けっこう。

青:いると思います。でもそれって、「説教しなきゃいられない」という弱いところだと思うんですよね。それじゃないとカウンセラーが落ち着かない。それが、1番まずいケースだと思うんです。違和感もそうですし、お説教しちゃうのもそうなんですけど、カウンセラーが自分の問題をやっつけておかないと、転移とか逆転移が来た時にきちんと感じ取れないと思うんです。でも、カウンセラーの中には自分のパーソナルセラピーを受けないで、この仕事に就いている方もいると思うので、それはちょっと危険かな、という感じはします。

<対談者紹介>

山登 敬之(やまと ひろゆき)山登 敬之(やまと ひろゆき)

精神科医、医学博士。1957年東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。
専門は児童青年期の精神保健。

国立小児病院精神科、かわいクリニックなどに勤務した後、2004年に東京えびすさまクリニックを開院。ハートコンシェルジュ顧問。著書に『拒食症と過食症』(講談社現代新書)、『パパの色鉛筆』(日本評論社)、『芝居半分 病気半分』(紀伊國屋書店)、『子どもの精神科』(筑摩書房)ほか。

 

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