本ウェブサイトでは、スタイルシートを使用しております。このメッセージが表示される場合には、スタイルシートをoffにされている、またはブラウザが未対応の可能性があります。本来とは異なった表示になっておりますが、掲載している内容に変わりはありません。

以下のリンクより、本文へジャンプができます。

HOME > カウンセラーの対談 > カウンセラーの対談 第6回

カウンセラーの対談「第6回小原仁氏、新倉カウンセラー対談<第2回>」

第6回小原仁氏、新倉カウンセラー対談<第2回>

小原 仁(こはら じん)プロフィール

小原 仁氏1980年、関大大学院社会学研究科博士課程修了。同年4月関大社会学部専任講師/人権問題研究所研究員。'82年より'86年まで助教授。退職後、かねてからの人間学研究をベースに研究所所長、セミナー・トレーナー、カウンセラーとして生涯学習活動に従事。現在JBI日本バランシング協会、コハラワークス(小原心身教育研究所)代表を務める傍ら、30数年間のワーク体験をベースに「ホロノダイナミック・バランシング」を提唱し、個人ワーク、グループワーク、カウンセラー、セラピスト、ボディワーカーの養成に活躍中。

バイオシンセシス・インターナショナル認定セラピスト・セラピスト養成トレーナー。日本プロセスワーク協会大阪支部長。バイオシンセシス研究センター副所長・関西支部長。朝日カルチャーセンター講師(トランスパーソナル心理学)。所属学会:日本トランスパーソナル学会(理事)、日本人間性心理学会、日本精神分析学会、日本音楽療法学会、日本トランスパーソナル心理学/精神医学会、バイオシンセシス・インターナショナル(スイス)、日本ホリスティック医学協会。

インタビュー 第2回

新倉カウンセラー(以下 新倉):ところで、いろいろな主訴を抱えてクライアントが来ると思うんですが、ボディーサイコセラピーへのクライアントの不適応はありますか?一般的には統合失調症のクライアントはイメージ誘導とか箱庭などのアートセラピーは禁忌と言われていますが。

小原 仁(以下 小原):統合失調症は全部がダメとは言いきれないけれど、僕が持ったケースで、最初は体が凝って痛いからボディーワークをしてほしいって来たわけね。統合失調症という感じではなかったけれど、何かおかしいなと注意してみて、それで親にも聞いてみたら何か怪しいなと思った。それで精神科医とタイアップして相談したら、精神科医は、はっきり統合失調症と診断しました。その人の場合、ボディーワークやるとね、幻覚・幻聴が増える。要するに、エネルギーの流れが多くなり活性化するから幻覚・幻聴を形成しているエネルギーも増えてしまうので安易には出来ない。

新倉:確かに陽性症状が増えてしまうとなると安易には出来なくなりますよね。それらを強めてしまうとクライアントにとっては日常生活が今まで以上に困難になってくるし、場合によっては社会適応ができなくなってしまったり、家族や本人にとってはあまり宜しくないということになる。まぁ、それはあくまで社会適応を前提とした場合ですが。

小原:そのクライアントはやると楽になるんだけれど、親はやると幻覚・幻聴が増えてつきあうのが大変になるからと訴えてきた。本人は自覚がないんだけれど、家族のほうがやったあと困るので本人はボディーワークを望んでいるかもしれないけれど、しばらくは控えて欲しいということになるわけ。統合失調症のクライアントが不適応かと問われると全部がそうとは言えないけれど、妄想形成の回路があるのであれば エネルギーが活性化されそちらの回路へ流れていく可能性はあると思う。

新倉:根本的にはエネルギーの流れを活性化して解放するのがボディーからのアプローチをする大きな目的ですよね。筋肉の鎧化によってエネルギーがブロックされていて、そのブロックを解き放ちエネルギーの疎通性を高めるということにより、思考、情動、運動が本来の姿で起こってくるという理解でしょうか。でも、妄想であろうが症状を強調・拡大していくことによってどこかにグラウンディングして治まっていくというケースもあるのかな?

小原:そうですね、SE(スピリチャル・エマージェンシー)といわれるようなケースでは活性化したほうがいいという考え方があるわけね。薬は抑えるという役割があるけど、活性化したほうが行き切って突破して到達するという考えかたを取るのであれば妄想や幻覚が増えようがエネルギーを活性化したほうがいいケースもある。でもこれはあくまでも仮説なので何ともいえないけれど、活性化したほうがうまくいくというケースもありうると思う。

新倉:クンダリーニの覚醒も内的・外的世界ともに揺さぶられ困難な苦痛を伴う体験だとCグロフが言っていますが、病院に収容されたり、精神病というレッテルを貼られることなくそのプロセスを行っていく場がきちんと提供されれば進化のプロセスの一部として活性化をすることが最終的には本人にとってはいいの場合もあるのかもしれませんね。

小原:そうそう、陰極まって陽に転ずるっていうように大きくなって極まってみたいなシフトが起こる可能性もあると思うのね。普通の心理療法でもあるからね。悲しみを感じていないのが、悲しみを感じはじめて号泣に移っていって沈静していくっていうのがあるから、そう考えたら所謂SEの人もぐわーと拡大していって終息する着地するというのは当然ありうる。周りが困るけれどそのプロセスがいちがいに良くないといは言いきれない。

新倉:薬を使うというのはあらゆる精神疾患の症状を抑えるというのが目的ですが、小原さんのクライアントさんでも服薬されている方もいらっしゃると思うんですけど、薬に対しては小原さんはどのようなスタンスなんですか?

小原:僕は薬は別に否定していないですけど、考え方としては薬はやはり対症療法だなぁというのがある。症状に対処しているだけで症状の形成プロセスに対してはあまり能力がないと思う。その人にとっての生活におけるQOL(クオリティーオブライフ)を考えて必要であればとってもらうってことにしてます。

新倉:ワークをやる前とかやった後で薬を調整することはあるんですか?ワークの前に飲んでいるとなんか抑制がかかっているからワークの効果が半減してしまうような感じがするんですけど・・・

小原:そうね、あるクライアントは、ワークを受けるときには朝薬を飲んでこないようにしてもらって、ワークが終わって出るときには飲んでもらう。そうしないと、電車の中で発作のようにわーと感情が出てきたりするわけね。だからワークが終わったあと安定剤を飲んで帰ってもらう。そういうことを繰り返しながら浄化がおわってもう安定剤がいらなくなる。それが一番最善のケースですよね、薬の使い方としては。

新倉:沢山服薬しているクライアントの場合、小原さんのやっているワークを阻害する要因にはならないということですか?

小原:ケースバイケースですね。僕は医者じゃないから、薬に関しては指示は出せないけど、本人がまぁ自発的に調節するとか、あと医者と相談して調整するとかでワークが出来るような状態にしてくれている医者もいる。

新倉:私たちセラピストの意見や見解を聞こうとする医師は少ないと思うんですが、こちらから医師にリファーすることはあっても医師からカウンセラーにリファーしてくるケースは稀ですから。薬の調整はクライアント自身が医師に相談するんですか?

小原:そう、僕が自分の意見をクライアントに伝えて、クライアントが主治医と話をする。あるクライアントはそうやって医師と相談していって減薬し、今はもう全く薬は使っていない。別のクライアントの場合は、このメジャートランキライザーはどうしてもはずせないと主治医に言われた。事故が起きたら医者が責任が取れないという話になったとクライアントが言ってきた。僕は医者じゃないからもうどうしようもないよね。そういう場合は、その範囲でやるしかないからそうする。

▲ページの先頭へ

新倉:クライアントがどうなりたいのか?ということを前提にセラピーをしますが、それは小原さんも同じですか?

小原:クライアントが来たときに来談目的を書いてもらうんだけれど、あるクライアントは「どうしてストレスをためてしまうのかを知りたい」って書いた人がいたんでけど、知ったところで何にもならない(笑)。自転車のチェーンが切れていて、どうして動かないのかというのを知ったところで自転車は動きますか?って聞いたのね。

新倉:(大爆笑)動かないですね、チェーンが切れているわけだから。

小原:チェーンをつなぐか、新しいチェーンに換えるかしないと自転車は動かない。悲しみを抑えているから夜は寝れなくなって体がばりばりだから、その感情を解放するってことは自転車で言ったら、そのチェーンをつなぐか新しいチェーンに換えないと走らないということなんで、そういうことを知ったからといって感情が解放されるわけではないし、やりますか?って聞いたら「うーん」とか言って決まらないのね。本人が解放しようという意思がなきゃ、ワークをやっても進まないよね。

新倉:そうですね、セラピーはクライアントの方にその準備が出来ているかどうかに大きく左右されると思います。準備が出来ていなければプロセスは進まないし、抵抗があって迷っているのであればセラピーは出来ないですよね。

小原:僕はいじわるやから、あなたもあと3−40年で死ぬのだから、苦しんで死ぬのもよし、解放して死ぬのもよし、好きに選んでくださいって言うんだけどね。僕はどっちでもいいんですって。「いやー、迷ってます」って、だからワークは出来ない、本人が決断しないからね。

新倉:クライアントの抵抗があると遅々として進まない、そんなときはセラピスト側の忍耐が求められるのかもしれないけれど、私もクライアントがやりたくないなら別に無理してやらなくていいんじゃないと思うのだけれど、それで来なくなるんじゃなくて、進もうと決心が出来ないのになお通いつづけているクライアントっているじゃないですか。

小原:それは本人に言うんですね、決断は残念ながらあなたに代わって僕がするわけにはいかないので、あなたが決断しなければ次の一歩は出ませんと、結構いいますね。

新倉:本人の決断とは別にして、出来ないというかボディーからのアプローチがしにくいライントさんは?

小原:一番やり易いのは、若い女性。年を取った男性が一番やりにくい、何十年もの鎧があるから。

新倉:やはり性差があるのでしょうかね、一般的に日本に限らず男性は感情表現をしないというか、オトコは泣いてはいけないという文化的な土壌がありますよね。それに比べて女性は感情表現が社会的に容認されている。ジェネレーション的なものもあるかもしれない。年配の男性は男たるもの泣くべからずで育ってきているし。

小原:何十年にもわたった筋肉の鎧ができているから難しい。今言ったように文化とかはあるけど、いわゆる性差ということがあるような気がする。女性の方が受容的だと思うし、男性は闘う生命体だと思う。

新倉:闘う生命体?何と闘うの?

小原:自分の悲しみと闘ったり怒りと闘ったりする。ケン・ウィルバーが引用で書いていたけれど男性ホルモンはいわゆるやるか殺すかだと。女性ホルモンはむしろつながりとか平和とか、そういう生物学的な性差。女性のほうが受容的、母性もそうですよね、包み込む性。男性は切断する機能。女性で若い方は鎧がまだういういしいからほどけやすい。

新倉:そうすると、筋肉のブロックをほどいていってエネルギーを解放していく作業は鎧の強度によって異なるから、その状態に合わせて定期的にセラピーを受けるということが必要になってくる。言語のセラピーもクライアントの防衛が強ければ時間がかかるし同じですね。終結はどんなタイミングで起こるのですか?

小原:僕は自分のこと見てもそう思うんだけれど、セラピー一生やってもまだ出ますわ。極論を東洋的に言ったら「悟り」を開くまでまだ出ると思うわ。

新倉:ニルバナですか?

小原:そう、だからどこで手を打つかだと思う。いつになったら治るんでしょうか?ではなくどこで手を打つか。ほとんどの人は多くのものを持ったまま死ぬと思う。未完了な悲しみや怒りとか・・・だからどっかで手を打たないとね。

新倉:そうすると、クライアント側からの自発的な終結が多い?

小原:そうね、自発的な場合もあるし、僕のほうがもういいんじゃないっていう場合もある。あるクライアントが主訴が夜眠れないっていうことであれば、その目的が達成できたら、他に色々あるけれどもそれでもういいという終わり方をする人もいるし、3年も4年もやっている人だと最初の目的はこうだったんですけど、今は違うことやっていたり、もう玉ねぎの皮むきやね。

新倉:(笑)欲がどんどん出てきて次から次へと。

小原:すんなり終わる人といつまでも続く人と両方やね。人間だいたい欲が出るなーと。

新倉:生きていれば、色々な問題が出てくるし、自分自身も変わるし周りも変わるし、そんな中で問題がゼロという人は殆どいないと思うんですね。だから本人がどこで手を打つかというところも大事だと思います。ケースにもよるけれど、長い間通い続けるクライアントは、セラピーに対して依存的な感じがしますが小原さんはどうですか?

小原:そういうのはあるよ。そういう場合はもうそろそろいいんじゃないって言って、目的書いてあるので、もう達成してますよねーとか言ったり、ちょっと嫌味を言ったり(笑)。

▲ページの先頭へ

新倉:セラピストがクライアントをラベリングしないということは大事だと思いますが、クライアントは「私はうつです」とか言って来ると思いますが、そういう場合にどうアプローチしますか?

小原:うつってことを具体的に話してくださいってことから始める。うつって何ですか?どういうことですか?と何をうつと呼んでいるんですか?と。

新倉:朝気持ちが重くて暗くなるとかクライアンとが言ったら?

小原:重いって体のどこで感じるんですか?と

新倉:朝起きると体全体が重くて動かないんですと。

小原:体のどこが動かないんですか?と。腕が動きにくいんですか、足が動かないですか? そうやってどんどん具体的に聞いていって具体的なところで接点とるから、クライアントが診断名できても診断名はあんまり相手にしない。

新倉:そうやって具体的なところで接点をとる。

小原:そうやな、体のことを言ってきたら身体症状から入るし、例えばみんなが自分のことをどう見ているのかが気になるんですっていってきたら、もちろん生育歴も見る。やっぱり生育歴上、ちゃんと愛された経験があるのかと、お母さんとの関係はどうなのか?と聞いて、そこからお母さんとのワークをやっていく。

小原:基本的には人間の動きは9種類に分かれるんですね。そのどれがブロックされているのかを見るわけね。中心にあるのはパルセーションっていう脈動。ストレスがかかるとその脈動が小さくなったり止まったりする。だから嘘発見器はうそつくと止まるのを利用している。それとあと8種類は4対ですわ。屈曲−伸展、押し出し−引き寄せ、直進−回旋、活動化−沈静化。どれが障害しているのかを見るから、その対極にある4つの動きの対極性をみる。例えば、お母さんに対して「来てよ〜」という引き寄せが出来ないのか、あるいは「嫌〜」という押し払いが出来ないのか。両方できて健全ですね。

新倉:身体言語のレベルで「嫌」が言いたいのにいえなかったら、どうもっていきますか?

小原:この手(小原んさの)を「嫌」といって押してみてと言うし、そのイメージワークだったらその動きにもっていきます。お母さんこっちに来てって僕が手を出して、クライアントの手を握って「こっちに来て」って言って引っ張ってみて下さいって促す。そういう動きとお母さんに対する感情と、言語、何のワークするにせよ、内・外・中胚葉を統合にもっていく。

新倉:常にその3つを統合することを意識するということですか?

小原:そうそう、動き(中胚葉)から出ている人は、その動きをしていると何を感じるのか?その人が感情(内胚葉)の方に意識を向けられるようにする。ゲシュタルト的に手が動いていたら、もし手がしゃべれるならばなんて言いますかとやるでしょ。動きと外胚葉を統合しようとする、それで何を感じると?そうやって感情(内胚葉)をつなげようとしている。だから、言葉(外胚葉)が出るか、動き(中胚葉)が出るか、感情(内胚葉)がでるか、欠けているものを補うようにもっていく。

新倉:とっかかりとしては、感情・動き・言葉の3つのどこか出ている部分をつかまえて、そこから出ていない部分に働きかけつなげていくという方法なんですね。

小原:そう、それはブリッジワーク、橋を架けるという意味の。

新倉:何か問題がある人はブリッジがどこかで途切れているからそれをつなげてあげるのがセラピスとの役目。

小原:つなげるだけでは駄目で、例えば、内胚葉の鎧化で、泣いているんだけど本当に腹のそこから泣けていない場合、もっと深く泣けるようにしてあげる。その方向性ですよね。動きは中胚葉の鎧化だけど、小さくは殴れるけど、ぼーんと殴れない、叩いてっていうとちょっとしか動かない。これは肩がブロックされている、そんなのは中胚葉のブロツク。だからそれぞれの胚葉も鎧化があるから、それをはずすっていうことと、なおかつ統合するということ。

新倉:セッション中は動きにせよ、大きな声だしにせよ可能ですが、自宅で何かできるエキササイズはありますか?

小原:声を出しても全然大丈夫なレンタルルームが東京にはあるようですよ。声を出さない宿題だったら、呼吸の解放のワーク、グラウンディングのワーク、感覚と繋がるワークです。悲しみにしろ、怒りにしろ、恐れにしろ何かが閉じ込められブロックするためには、僕は3つ考えているのね、呼吸の抑制、筋緊張、もうひとつはゲシュタルト流に言うと空想界に入る。だから感覚という現実界につながるということ、感覚と繋がる練習とグラウンディングと呼吸をすすめている。

新倉:グラウンディングとは?

小原:グラウンディングっていのはローエンの言葉だけど、僕はちょっと違った意味で使っていて、僕が使っているのはこれも大雑把に言うと「自我」と「命の働き」のバランスを取るということをやっているわけね。グラウンディングのポーズのあのストレスポーズをとると脚がぶるぶる震えますよね。あれは命がやっていて自我がやっているのではない。いわゆる、自発動、命の自律運動、自然運動ですよね。命のセルフ・レギュレーションです。

新倉:命がやっているというのは、自分が意識して動かしているのではなく自然に動いているということですね。心臓や呼吸のように無意識でも生きているかぎり勝手に動いている。 じゃ、自我がやっているというのは体に関連してはどんなことがあるのか?

▲ページの先頭へ

小原:グラウンディングのワークのときの姿勢がそうですね。自我がやっている、自我が弱い人は姿勢を保持できない、崩れてしまう。だから姿勢を維持できていて、尚且つバイブレーションが起こる場合は自我と生命体が調和している。自我が強すぎるとバイブレーションが起きないし、自我が常に泣いちゃダメとか怒っちゃ駄目って生命体を支配、抑圧しているような構造が出来てしまっていると起きない。だからバイブレーションがよく起きるように練習していってもらうと、命のプロセスと、これまたひとつはライフストリームという概念もあるけれど、バイオシンセシスの学派作った人の本の題名が、あれ、俺なにいった・・(笑)

新倉:命の流れ?

小原:命の流れっていうのが自我を越えたこところであるわけよ。例えば心臓が動いているとか、自我がやっていない命のプロセスがあって一方は自我があってそれが調和しているときに人間という生命体は上手くいくんでね。それをやるのが僕のいうグラウンディングのワーク。僕は、自我と命のプロセスの調和する関係をつくらないと色んな問題を起こすと思う。それが自我防衛機制だからね。調和を起こす練習をしてもらっていると感情解放のプロセスはやりやすくなる。それと呼吸の解放。家でも簡単にやれるし、俺がクライアントのかわりに出来ないこと。

新倉:それはそうですね(笑)、でも教えてもすぐにできるようにならないと思いますが、 そういう練習をして次のセッションに臨む方が効果的ですね。あと、脱力、力を抜くワークをやったことがありますが、部位によって難しささがあるというのは部位のブロックの問題ですが、例えば腕のブロックといのは何と関係しているのか?

小原:さっき腕の基本機能は欲しいものをつかんで引き寄せるか嫌なものを押しのけたりして追い払うって言ったでしょ。そこにブロックがかかっているということは、それに対する緊張やね。骨格筋が自我に対応しているから、骨格筋というのは随意筋なわけ。意識して動かす筋肉。不随意筋は心臓とか。だから腕の脱力が難しいというのは随意筋が不随意化してしまうんやね。だから欲しいと思って手を伸ばし掴みたいんだけれど、一方で 自我がダメと言って引っ張って抵抗している可能性がある。

新倉:ところでブレスワークはいくつかあると思うんですけれど、小原さん自身はブレスワークをセラピーの中で使うんですか?

小原:もちろん、呼吸の解放のワークという意味ではセッションの中で使いますけれど、意図的に過呼吸を引き起こすブレスワークを使うことはほとんどありません。ただ過呼吸系の人は、過呼吸が起きたらむしろ促進するようにもっていくからブレスワークになっていくこともありますね。若干昔のブレスワークとは違うと思いますが。呼吸が促進してくると身体症状や感情がでてくるから、出てきたらそれに合わせてそれがさらに解放されるような方向にどんどんかかわっていく。ホロトロピックブレスワークはトランスパーソナルな体験というけれど、トランスパーソナル体験をしていただきますというより感情解放と動きの解放ですね。パーソナルな解放が主眼ですね。

新倉:まさに自己の解放ですね。私もホロトロピックは何度かやったことがありますが、その最中は異次元空間に意識が飛んでいる感じがしましたが、終わったあとはすっきりとした状態でしたが、何か意識変性が起こったという感じではなかったです。

小原:以前、大学院生がホロトロピックブレスワークについて論文書くということで、吉福さんのWSを受けた人の体験を数十例集めてね、受ける前と受けたあとの意識の調査をやって有意差検定をやったのね。有意差なし(笑)。

新倉:有意差なし。それじゃ、面白い論文が書けないじゃない・・・。

小原&新倉:有意差ありませんって論文書いた(大笑)

新倉:最後になりますが、ボディーサイコセラピーはまだ日本では普及していませんが、現在何名くらいセラピストがいるのですか?セラピストの育成は?

小原:5年間コースで5期までやってきたのですが、もともとなんらかのセラピストとして働いていたバックグラウンドがなかった人でこのコースを修了してプロになった人はほとんどいません。

新倉:かなり難しいということですね。コースを受けるための前条件は何かあるのですか?

小原:30時間のボディーサイコセラピーの受講体験とプレトレーニング(2日間=12時間)の受講ですね。現在のコースは、毎年23日間(4泊5日×3回、土日通い×4回)のトレーニングを4年間受けて論文出して、認定受けてプロとして今やっているのは6人前後だと思います。その中でも実力はピンきりです。

新倉:現在日本で6名。小原さんもいずれいなくなりますよね、その後はどうなるんでしょうか?

小原:遠からず、さようならって。それはそのあとの人が考えること。

新倉:さようならと(笑)。

小原:そう何も考えていない、知ったこっちゃないと(笑)。

新倉:なんだかすごく小原さんらしい感じがします。いま、ここで起こっていることしか自分は体験できないから将来は分らないと(笑)。本日は長い時間お話を聞かせて頂きまして本当にありがとうございました。

小原:どういたしまして。 なお、ボディサイコセラピーのトレーニングコースに関しては、こちらをご覧ください。

▲ページの先頭へ

【インタビューを終えて】

小原さんとお話しをしていると話題がどんどん広がっていきます。その瞬間、瞬間をとらえながら会話は進むので、どのように展開するか全く予測することが出来ません。それはまるで何か「生き物」が動いている感じで聞き手の好奇心や興味を喚起します。

小原さんも私もセラピーをする上でゲシュタルトセラピーがバックグラウンドにあります。「いま、ここ」を純粋に体験する気づきのセラピーがベースにあり、そのためには、いま自分の身体や心に起こっていることを判断せずに、ただただ体験していくことがクライアントにもセラピストにも求められます。

セラピストは様々なテクニックや知識を持ちあわせていますが、ラべリングせずに、その瞬間、瞬間に起こっていることに沿って自らの感覚をアンテナに介入して行くことがいかに重要かということが、小原さんのお話からよく伝わってきました。

人の健康というのは体、心、思考3つがバランスよく繋がっていて、そこにエネルギーの疎通性があり成立するというボディー・サイコセラピーへの理解も深まりました。体からのアプローチは、言語からのアプローチでは時間を要するようなクライントさんの情動の解放を短期間で可能にするダイナミックなセラピーであり、心理面談で行き詰っているクライアントさんの助けになるのではないかと思いました。

小原さんの数十年間にわたるご経験から養われたセラピストとしてのセンスは、決して教科書的な学習から得られるものでないことを痛感しました。今回のインタビューは、小原さんが東京へ出張された際にお時間をいただいて行ったものです。

余談になりますが、初回の録音テープを私がアクシデントで消してしまったため、翌月再度お願いする形になりました。そして収録時間は2時間弱にもおよびました。掲載の都合上多少割愛部分や校正箇所があることをご了承いただければと思います。

お忙しい中、時間を割いていただいて、小原さんには大変感謝をしております。

最後にいくつかの用語について、私なりの解釈で説明します。

<ゲシュタルト療法>

ドイツ人の精神分析家FS.Perlsにより提唱された。ゲシュタルトとは、ドイツ語で全体・統合・形態を意味する。この療法の目的は自己の全体性を回復することで身体的コミュニケーションを重視する。「今、ここ」、「経験」、「気づき」、「現実」を強調している。

<ウィリヘルム・ライヒ>

オーストリア生まれの精神分析医。著書「性格分析」の中で、患者の態度に現れる性格抵抗に注目し、習慣化し、慢性化した「性格の鎧「」ともいうべき自我防衛について示した。

<自我防衛機制>

人が不安や欲求不満を解消して心の安定を図るための自我による様々な無意識的な働き。フロイトによると、代表的な防衛機制として、抑圧、同一化、合理化、代償、補償、昇華などがある。

<アレクサンダー・ローエン>

バイオエナジェティックス(生体エネルギー療法)の創始者。精神分析とヨーガなどの身体運動法とをミックスして出来上がった療法。W.ライヒの実験助手でもあり、60年代に北米のエサレン研究所内に研究所を開設した。 純粋自我に至るには心と体が一致しなければならないと身体技法と取り入れて実践した。

<チャクラ>

チャクラは脊髄に関連するエーテル体にあるエネルギー・センター(渦)で、肉体の7つの内分泌腺及びメンタル体、アストラル体、肉体の調整と活性化を司り、意識の中枢と各身体の中継点としての役割を果たしている。

<フォーカシング>

T.ジェンドリンやE.アイビなどによって開発された技法。心の問題をより深く理解するために焦点づけること。漠然として言葉に表現しえない様々な感情に注意の焦点を集め、隠れていた意味を明確なものとしてくみ取って理解する一連の過程。

<フェルトセンス>

フォーカシングのプロセスのなかで、からだの内部に生ずるある特別な感じへの気づき。言葉やイメージで表現することはできないが、確かな身体感覚として感じるもの。

<センサリー ・アウェア二ス>

感覚の覚醒。知的な気づきではなく、その場その場の直接的知覚。自分自身の機能の仕方を感じとると同時に、それにともなっておこる態度の変化に気付いたり、変化していくままに自分を委ねたりすること。

<ロルフィング>

A.ロルフが創始者。バランスを失った身体の緊張やコリを一つひとつの部位に働きかけ、慢性的な動きの癖を解放し、その部位の動きを通じて他の殻だの部位と統合するボディーワークのひとつ。

<SE(スピリチャル・エマージェンシー)>

トランスパーソナル心理学でC.グロフが表現した言葉。霊的修練などにより、精神の危機的な状態に陥ってしまう場合、それを精神病として捉えるのではなく人間成長のプロセスとして捉える。

<クンダリー二>

クンラリー二とは、尾骨にとぐろをまいて眠る生命エネルギー。ヨーガなどある種の行で活性化させると精髄を通って7つのチャクラを活性化させる。

<QOL(クオリティーオブライフ談第1回)>

人がどれだけ人間らしい尊厳を保つ生活を送ることが出来ているかを計るための生活の質の尺度。

<ケン・ウィルバー>

「意識のスペクトル」などの著者でアメリカの現代思想家でありインテグラル思想の提唱者。 トランスパーソナル心理学の代表論客としてその発展に大きく貢献した。

<ホロトロピック・ブレスワーク>

S.グロフにより開発されたセラピー。深く速い呼吸を繰り返しながら脳に変性意識を起こし、感情の解放が行われるとそれに伴い身体の自然運動が起こることにより心と体の統合を行う。実践的なトランスパーソナル心理学。

ご予約・お問い合わせは   03-6800-0057
火〜金13:00〜22:00 土・祝13:00〜20:00 (日曜日・月曜日定休)

▲ページの先頭へ