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カウンセラーの対談「第14回斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第4回>」

第14回斎藤環氏、山登敬之氏、新倉、向後カウンセラー座談会<第4回>

斎藤環氏 プロフィール

斎藤環氏 1961年、岩手県生まれ。1990年、筑波大学医学専門学群環境生態学卒業。医学博士。

現在、爽風会佐々木病院精神科診療部長(1987年より勤務)。また,青少年健康センターで「実践的ひきこもり講座」ならびに「ひきこもり家族会」を主宰。専門は思春期・青年期の精神病理、および病跡学。著書に 「文脈病」(青土社)、「社会的ひきこもり」(PHP研究所)、「戦闘美少女の精神分析」(太田出版)、「『社会的うつ病』の治し方」(新潮社)、「キャラクター精神分析」(筑摩書房)。

 

山登敬之氏 プロフィール

山登敬之氏精神科医、医学博士。1957年東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程医学研究科修了。
専門は児童青年期の精神保健。

国立小児病院精神科、かわいクリニックなどに勤務した後、2004年に東京えびすさまクリニックを開院。ハートコンシェルジュ顧問。著書に「拒食症と過食症」(講談社現代新書)、「芝居半分、病気半分」(紀伊國屋書店)、「パパの色鉛筆」(日本評論社)、「新版・子どもの精神科」(ちくま文庫)ほか。

 

座談会第4回

向後カウンセラー(以下 向後):ところで、最近増えてきたのは、会社に入ってからひきこもる人が増えているように思います。

斎藤環(以下 斎藤):最近ひきこもり初発年齢が上がりまして、平均で21歳ぐらいになっているんですね。かつては15歳だったんですが。というのは、かつてはほとんどが、不登校の延長だったからです。20年ぐらい前までは、就労経験のあるひきこもりはほとんどいませんでした。ですから私も当時は、就労した人はひきこもらないと思い込んでいたのですが・・。

新倉カウンセラー(以下 新倉):そのテーゼが崩れてしまったのですね。

斎藤:ひっくり返りました。『社会的ひきこもり』に書いたことで、訂正した点がふたつあります。ひとつは、定義にいれてあった「20歳までにひきこもる」という項目。それから、就労経験のある人はひきこもりにくいという記述ですね。この辺は大きな変化ですね。

向後:ひきこもりの若者の中に、一時的に統合失調症っぽくなっていく。そういう若者が入院したらその傾向が消えてしまうということがあるじゃないですか。

斎藤:よくありますね。ひきこもりによくみられる被害妄想ですね。隣人がいやがらせをしてくるとか、盗聴や監視されているとか、車を空ぶかししてあてこすりしているとか、自分が出ていくときに限ってふとんを叩くとか、どう考えても妄想なんですけどね。ただ、これは反応性に起こる妄想で、いわゆる妄想様観念というやつで、精神病の「真性妄想」とは区別されるものなんですね。

向後:なんといったらよいか、根拠のある妄想・・?

斎藤:妄想に関しては、根拠のあるなしよりも確信の度合いが問題になってくるのであって、例えば、近所の人が自分のうわさをしていると確信しているというのがあったとします。これは本当にうわさをしている場合もありえますよね。でも、確信の度合いが異常に強ければ、妄想と判断して扱わざるをえない。ただ、そういうケースを統合失調症と誤診して、まかりまちがって医療保護入院(強制入院)させてしまうと、本人は入院に同意した親御さんを恨んで暴れたりとか、大変なことになりますから、そこらへんはきちんと鑑別診断をして、そうではないケースについては、とりあえずは外来通院と薬物治療でやることになります。こういう誤診は多いんですが、確かにひきこもりと症状の少ないタイプの統合失調症の鑑別が難しいのも事実です。

新倉:日常的な妄想でないのであれば、統合失調症の妄想ということでしょうか?

斎藤:日常的ではないと言っても、たとえば「テレビやラジオが自分のことを噂している」などというレベルまでいくと、ありふれてはいますが統合失調症の可能性が高くなります。

新倉:例えば、特定のタレントさんがTVで自分に対して好きだよってメッセージを送っているとか?

斎藤:これも統合失調症でしょうね。メディアを巻き込む妄想はその可能性が高くなります。面白いのが、ネット妄想と言うのは案外無いんですね。

新倉:インターネットですか?

斎藤:統合失調症の人は、つい最近まで、最新のテクノロジーを妄想に取り込むという有名な仮説がありましたけど、ネットだけは、なぜか取り込まれにくいんです、意外なほどに。ネットに悪口を書き込まれているとか、ネットで自分のプライバシーがダダもれになっているとか言いだすケースを見ていると、どうもひきこもりの方が多いようです。どこらへんに違いがあるのかは、分らないのですが、テレビやラジオは電波でどこにでも届くというところがけっこうポイントなのかなと思いますけどね。まだ、よくわからないところではありますけど・・。

向後:臨床心理の現場で感じることなんですけど、受容、共感、傾聴というようなことばかりが強調されていて、コンフロンテーション・直面化させるということがあまりなされていないような気がしますね。

斎藤:今でもそうなのですか?僕はその風潮はそろそろ終わりかけているのかなと思っていたんですけど。びっくりしたのは、珍しく家庭内暴力の記事が最近の朝日に載っていて、未だに専門家の「暴力は受け入れてあげましょう」なんてコメントを掲載しているわけですよ。そういう根拠のない受容万能説のおかげで、今まで何件の親殺し、子殺しが起きたかを想像していただきたいですね。「暴力を受容」はわれわれの「黒歴史」と考えるべきです。

向後:いきすぎた受容の傾向と言うのは、未だに非常に強いところがあると思います。

斎藤:本当に影響が強すぎて困るんです。カウンセラーに暴力も受容しましょうとさんざん言われて、追い詰められた父親が子供を殺しちゃったという、平成八年の事件以降、さすがに受容説の化けの皮が剥がれたかなと思っていたのですが、まだこんなこと言っているのかな思って、愕然としました。

新倉:そう考えると、例えば、患者さんの家族は、最初にかかったところで、そういう指導をされて、全面受容が正しいのかなと思って盲目的にやっていたりするケースもあると思うのですが?

斎藤:でも、結果の評価と言うものを普通はするでしょうと思うのですがね。暴力が全然改善しなかったら、それはやり方が上手く行っていないわけで、それなら失敗を認めましょうよということですね。私も自分の方法論に関しては、結果を見てだめだったら他の方法をためしますけど、今のところ自分の家庭内暴力の対応法で、だいたい収めていますから、自信を持ってお勧めしてますけど。

新倉:先生は、家庭内暴力にはどういう対応をされているのですか?

斎藤:開示と避難と通報です。

新倉:その三つが大事なのですね。

斎藤:暴力で困っていることを他人にどんどん伝えていく。お客さんにもどんどん自宅に入ってきてもらう。他人を家にあげるのが第一で、それがどうしても出来ない場合は、軽いものに関しては避難で、重いものは通報で対応ということです。これが一番効くのに、なんでやらないのか不思議でしょうがない。

向後:そうなんですよ。一番効くのですが、最初は、抵抗する人多いですよね。特に通報と言うとね。

斎藤:親がどこか暴力を容認していると、暴力は終わらないのですよ。ある意味、それこそ演技でいいから、親が「暴力は許さない」と一回言えれば終わる暴力もずいぶんあると思うのですけど、それが言えないんですよね。言えないから、私は、避難か通報というパフォーマンスをお勧めしているわけです。

向後:パフォーマンスと言ったら、けっこう受け入れやすいかもしれませんね。

斎藤:警官に連れていってもらうことが目的じゃないわけです。親が本気だっていうことをアピールできれば、それで終るわけです。予告だけで終わる場合もありますからね。

新倉:「通報するよ」と本気で向き合うということですね。

斎藤:「このつぎは通報するよ」と言うだけで、ぴたりと止まるケースが随分あります。それが言えないっていうのが、非常に残念ですね。というか言わせない専門家も困ったものですけどね。

向後:親が全て受け入れるべきだと教わっていた方もいらっしゃいました。

斎藤:ありえません。じゃあカウンセラーや医師は暴力を受け入れるんですか? いかなる暴力も絶対悪と考えて対応すべきです。長年暴力に耐え続けた結果、母親がPTSD化してしまって、家に帰れなくなったケースもありますからね。

新倉:家の中のもの、家具から窓ガラスまで殆どすべて破壊されたお母さんは「息子が怖くて安心して眠れない」って言っていました。全てガラスを入れ替えて家を元の状態に戻すのに随分と時間がかかりました。息子が暴れだして、夫婦で避難して数時間後に帰宅したら家の中はそんな状態だったそうです。その後、父親が次回やったら必ず通報して警察に連れていってもらうと断言してから暴力はピタッと止まりましたね。

向後:子供、特に息子から暴力を受けたお母さんなどは、息子に会うのが怖くなっちゃうケースが少なくないですね。

斎藤:家を出て別居するしかないわけですよ。別居じゃなくて避難してくれと言っているわけですけれど、それはもちろん、「帰るための避難」です。短期間でも避難すれば、本気さが伝わります。家庭内暴力とは基本的には退行の産物ですから、それだけで終わります。怒りや暴力は抑えこむと別の方で爆発するというもっともらしい理屈がありますけど、あれはウソなんで、私は、そんなことはないから大丈夫、暴力は徹底して拒否してかまわないと保証するわけですけどもね。神田橋さんの名言があって、家庭内暴力の背景にあるのは、「怒り」ではなく「悲しみ」だ、と。暴力の本質は悲しみなのであって、ふるわせない方が親切なのですよ。本人が、自分はもう暴力を振るえないという言い訳を自分にできれば、もう暴力を振るわないですむわけです。「親が通報するって言ってるし」、「避難すると言っているし」とか、しぶしぶでも自分を納得させることができれば、終わるんですけど。それができていないから、なかなか終わらないですよね。

新倉:本人が暴力をふるえないと納得できるような理由を与えてあげると言う意味で、親が避難や通報をするということが大事なんですね。

斎藤:家庭内暴力だけに関して言えば、ひきこもりに比べたら・・。

新倉:ひきこもりに比べたら簡単に終息すると?

斎藤:ものすごく簡単です。コツがわかっていれば専門家に相談する必要すらない。こんな簡単な問題で、毎年人が死んでいると言うのが、なんとも悔しいですね。もう本当に、カウンセラーや精神科医の中に蔓延している「受容万能主義」や「退行万能主義」と言うのは勘弁してもらいたいです。あれはもうイデオロギーで方法論なんかじゃありません。なんでも退行させればうまくいくと信じている人が、やたらスキンシップをするとかハグしましょうとか、まったく信じられません。そうやってよそで悪性の退行を起こして尻拭いをさせられたケースが何例もありました。私は、新規事例については、スキンシップやハグはだめですと断定的に言ってますけどね。たくさん会話していればいいんですよ。スキンシップはいっさい必要ないと断言できます。少なくともひきこもりに関しては、必要無いです。

向後:少し話題がかわりますけど、先ほどの、暴力に際して通報するやつなんですが、DVの場合にも、基本は同じだと思いますけど、もう少しやりにくいなと思うんです。

斎藤:大人のDVはものすごくやりにくいです。もう子供とは全然違います。DVは、とても僕は手に負えません。あれはあくど過ぎます。むしろ社会の問題であり制度の問題ですよ。シェルターがしっかりしているとか、被害者を徹底して守る体制がしっかりしていないと、対応できませんね。なぜか世間は、暴力をふるう子供は治療対象にしたがりますけど、DVをする大人は治療対象としませんね。

向後:僕は、DVをする人達と、パワハラをする人達と、ほぼ同じメカニズムだと思っています。

斎藤:中には、いろいろな人がいると思いますけど。暴力をふるって後悔して煩悶している人達も一部いるだろうし、自分が被害者だと思っている人達もいるだろうし、いろんな人がいるでしょうけど・・。

向後:前者の方は、治る傾向があると思いますが・・。

斎藤:そういう人はそれこそ、DVの夫の会とかに参加していただいて、治療に乗っけるということもできるでしょうね。

向後:そうじゃない人は、本当にむずかしいですね。

斎藤:難しいです。はい。最近、弁護士が殺される事件が続いたせいか、弁護士さんも妙に及び腰で、明らかにDV事例なのに強引に和解させようとしたり、なぜなんだろうと思うことが最近ちょっとありましたけどね。まあ実際、へたするとDV夫は、弁護士を逆恨みして殺しかねないですから、本当に恐ろしいです。精神科医だってわかりませんよ、それは。

新倉:加害者の方は、なかなかお会いすることは少ないけれど、逆に被害者側である配偶者が、重いうつで長い間治療にかかっているようなケースは、結構あると思います。私も何件かそういうクライントさんを持った経験がありますが、なかなか難しいですね、病気へのアプローチだけでは・・・。

斎藤:被災者と一緒で、そういう人達に対する治療は、まず、安全と情報だと思うんですよね。マズローの5段階じゃないですけど、とりあえず、安全とか、基本的な欲求を確保して、初めてそこで、トラウマやら承認やらの問題を向き合えると思うんですけど。身の安全が確保されていないような状態では、薬を飲もうがカウンセリングしようが効かないというのが現実ですね。
最近、治療以前に実効性のあるアクションが必要となるケースが多くて、なかなか大変です。例えば、パワハラを受けた会社員の例でも、それは治療も大事だけど、会社との交渉はさらに重要で、意見書を出してパワハラ上司との接点を無くすよう配慮してもらうとかですね・・これ医者の仕事じゃないだろうと思いながらですけど、結局やらざるを得ない。

向後:ずっこけた例があるんですけどね。パワハラを確実に受けている例なんで、これはもう「パワハラ相談室に相談しなさい」ってことになったんですけど、相談しようとしたら、パワハラをしているまさにその上司が、パワハラ相談室長を兼務していたなんてことがありました。

斎藤:ひどい話ですね。

新倉:本当に、そういう会社ありますね。セクハラなんかもそうですね。何件かそういうケースを扱いましたが、セクハラをしている当事者が、セクハラ相談室を管轄している部署のお偉いさんでした。

向後:人事部長だとか総務部長だとかが、パワハラ・セクハラ対策室長を兼任している場合が少なからずあるんですよね。そういう人達がパワハラやセクハラの当人だとどうしようもない。

新倉:だから被害者は制度を利用できないわけです。もし、相談したら加害者に筒抜けになることが目に見えているわけですからね。それに会社も被害を受けた一社員とお偉いさんを両天秤にかけると、お偉いさんは会社への貢献度が高く実績があり実力者だからそちらを切るという動きにはなかなかなりにくいですね。結局、被害者がうつになって二重に被るわけです。

向後:こういうケースじゃ被害者が会社辞めることを選択するケースが多いんです。

斎藤:そうですか・・。そりゃ、ひどい。

向後:そういう人がトントントンと出世してしまうシステムも不思議だなと思います。

斎藤:パワハラ上司は絶えないですね。

新倉:そうですね。まだまだお話は尽きないのですが、そろそろお時間になりましたので終わりにしたいと思います。先生、本日は多方面に渡るお話しをありがとうございました。

斎藤:ありがとうございました。

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