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役に立つ心理学コラム「薬物依存−2・・薬物の種類」

薬物依存−2・・薬物の種類

薬物は、その効果によって、アッパーズ、ダウナーズ、サイケデリックスの3種類に分けられます。

(1)アッパーズ(興奮剤)

アッパーズ(興奮剤)は、脳神経系に刺激を与え、興奮させる作用を持ちます。アッパーズを服用すると、人は、精力的になり、また、神経が鋭敏になった様に感じます(「ハイ」の状態)。

この「ハイ」の状態は、薬の直接的作用によるものではなく、すでに脳内に存在する快楽物質の消費によって引き起こされます。

しかしその作用は比較的短時間で、その後には、いわゆる「ダウン」の状態が起こります。「ダウン」になると、だるさ、眠気、精神的疲労、抑鬱といった症状が起こります。

この「ダウン」期を避けるために、常に薬剤を使用するというパターンにたやすく陥ってしまうため、非常に短期間に依存症になってしまう事が多いのです。中には、起きている間中、1時間毎に興奮剤を摂取し続けたなどという例があります。

主要なアッパーズとしては、次のものがあります:
・アンフェタミン、メタアンフェタミン系:シャブ、スピード、エース等と呼ばれる覚せい剤系薬物。
・コカイン


(2)ダウナーズ(抑制剤)

ダウナーズ(抑制剤)は、外界に対する感受性を弱める効果を持ちます。こう書くと、「アッパーズと正反対の効果なのに、何が楽しくてダウナーズをとるのか?」と思われる方もいると思います。これには、ちゃんと理由があります。

代表的なダウナーズであるアルコールを例にとって、その効果を説明しましょう。よく中年以上の人達が「カラオケ」に行くと、最初はなんとなく皆モジモジして歌わないのですが、お酒がある程度進んで行くと、突然陽気になり、「パフィー」なんかの歌を元気良く歌い始めます。

しかし、さらにお酒が進んでくると、だんだん暗い歌を歌う様になり、「酒と泪と男と女」なんかをしんみりと歌う様になるのです。この段階では、泣き出したり、説教魔になったり、けんかを始めたりする人が出て来たりします。そして、最後には、眠ってしまう人も出てきたりします。

つまり、ダウナーズの効果は、まず、心の最も表層にある通常の自我の防衛をゆるめ、「恥ずかしい」という感覚がうすれ、ひたすら陽気になる段階(「パフィー」を歌っている時)が訪れ、次に、その陽気な気分も抑制され、普段押さえている「悲しみ」、「怒り」等の感情が出て来る段階(「酒と泪と男と女」を歌っている段階)へと続き、そして最後にすべての感情が沈静される状態(眠ってしまう段階)へと移行するのです。

この様に、ダウナーズは、服用後の最初の段階では、自我の防衛をゆるめ、普段抑圧している感情を吐き出すという効果を持っているので、人はその開放感を求めて服用する様になるのです。

主なダウナーズとしては、次のものがあります:
・アルコール
・麻薬(ナルコティックス):アヘン、モルヒネ、ヘロイン等。
・マリファナ:マリファナには、幻覚作用もある。


(3)サイケデリックス(幻覚剤)

幻覚剤は、特殊な薬物です。服用すると、人は、気分の高揚・宇宙との一体感・時間感覚の喪失等の気分を味わうとともに、さまざまな幻覚を見ます。この気分は、とてもリアルなものだといいます。

幻覚剤の効果は一般的に非常に長く、ものによっては、12時間以上効果が持続するものがあります。後遺症としては、フラッシュバック(幻覚の再発)等が起こり、現実生活との接点を失う事があります。
また、いいようのない不安、恐怖感等を感じる等も典型的な後遺症です。さらに、精神錯乱状態にまで進む事もまれではなく、その典型的な例が、LSDパーティーの後に起こった「シャロン・テート(女優)殺人事件」です。

主な幻覚剤としては、次のものがあります:
・LSD:アシッド、シュガー等と呼ばれる。作用時間12時間程度。
・メスカリン:ピヨーテというサボテンから作られます。作用時間12時間程度。
・マジックマッシュルーム:作用時間4〜6時間程度。
・PCP:エンジェルダスト、スーパーグラス、ホッグ等と呼ばれる。PCPは、体内残留期間が長く、最も危険な薬剤のひとつ。

これら薬物は、アッパーズ、ダウナーズ、サイケデリックスとそのプロセスは異なるものの、普段抑圧されがちな、心の深層にコンタクトするという点では同じです。薬物依存者達の多くは、自分の価値を認める気持ちが少ないと言われています。
この「自尊心の低さ」は、彼等自身の生得的な性質というよりも、家庭・学校・社会からの影響で形作られた場合が多いのです。

彼等は、本当はすばらしいものを自分の中に持っていながら、その価値を認める事ができず、普段の生活の中で「自分は、ダメなやつだ。」と責め続けているのです。中には、「どうしてこの人が?」と思う様な社会的に成功した人達も、自分に満足できず、不完全な自分を責め続ける事があります。

「自分を認められない。」という事は、非常につらい事です。そして、その苦痛に耐えられなくなり、その苦痛を補うために薬物に依存し、薬物を服用している間だけでも、「普段抑圧されている自分自身」に接しようとするのです。

薬物服用中に彼等は、アブラハム・マズローが「至高体験」と名づけた気分の高揚感に似た感覚を味わいます。でもそれは、本当の「至高体験」では無いのです。

「至高体験」が、山の頂上に自分の足で登った時に見る景色によって得られる感覚とすれば、薬物による「擬似至高体験」は、ヘリコプターで頂上に行って景色を見ている様なもので、同じ景色を見ても、そこから得られる感動はまったく異なるのです。また、その感動を普段の生活の中に取り入れる事は困難なのです。

薬物使用による気分の高揚は、薬物自体が引き起こすものでは無く、すでに脳内に存在している快楽物質を薬物が利用して引き起こすのです。
つまり、自分自身で薬物に頼らずに「脳内の快楽物質を作り利用する」事ができれば、薬物に頼らないで高揚感を味わう事ができます。そして、その感覚は、真の意味で自分のものになるのです。

(向後善之)

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