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役に立つ心理学コラム「共感」

共感

(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)

カウンセリングの研修に行くと最初に必ず習うのが、共感です。共感とは、「他人の気持ちを自分のことのように感じること」と定義されます。

人の気持ちに共感すると、あたかも、自分とその人の間の境界線がなくなるような感覚になります。まるで、同じ心理的なフィールドを共有しているような状態しなり、そうした状態になると、クライアントさん側からは、深いレベルでカウンセラーが自分の感情や感覚を理解していることを実感し、そのことが、例えば、それまで一人でかかえてきた問題を手放すきっかけになります。

しかし、共感は、カウンセリングの中で、常に起きているわけではありません。
例えば、クライアントさんが、カウンセラーに対し怒り攻撃的になり、誹謗するようなことをしたとき、カウンセラーが「あなたの怒りはもっともです」とにこにこしながら言ったとしたらどうでしょう?
カウンセラーが心の底からクライアントさんのカウンセラーに対する怒りに共感できたのならよいのですが、もし、そうでなくて、単に共感のふりをしていたとしたら、それはダブルバインドとなり、逆にクライアントさんを傷つけることになります。

真の意味で共感しているときには、カウンセラーは、自分の気持ちにも正直なはずです。偽りの共感は、クライアントさんには、すぐにばれてしまいます。クライアントさんのほうがカウンセラーより敏感な場面というのは、たびたびありますからね。


共感は、心の非常に深い部分、自分と相手の間の境界線が希薄になり、あたかも主観が、行き来するような感覚の場で起こります。
こうした、自分の主観が他人の主観と混じりあうような場を、「間主観的な場」と言います。そして、他人を主観的に感じている状態を間主性と言います。

例えば、自分のすぐ横に、とても悲しそうに泣いている人がいるとします。あまりに悲しそうなので、その人がなんで泣いているのかわからないけれど、自分も涙してしまうというようなとき、そのふたりは、間主観的な場におり、共感が生じていると言えるでしょう。

僕と妻で義母をモニュメントバレーに旅行に連れていったことがあります。そこで、先住民族のナバホ族の人が太鼓をたたきながら歌を歌ってくれたのですが、その時、ナバホ語がわかるはずがない義母が「意味はわからんけど、なんだか、悲しい曲やねぇー」と、涙を流していました。彼女は、ナバホの人の感覚をダイレクトに感じ、共感したのでしょうね。

共感は、「・・・だから」という理由のもとに起こるのではありません。
別な言い方をすれば、言葉や行動や思考に対して共感が起こるわけではなく、感覚や感情のレベルで、しかも言語的な理解が生じるよりもっと深いレベルで生じるものです。
そうした間主観的な深いレベルでの感覚や感情のやりとりがあった瞬間に、はじめて共感が起こるのだと思います。
だれにでも共感の能力はありますが、いつでもできるわけではありません。
カウンセリングの場では、カウンセラーに偏見や思い込みがなく、自分に正直でいるときに、共感が起こり得ます。


(向後善之)

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