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役に立つ心理学コラム「ひきこもりからの回復4」

ひきこもりからの回復4

3.通常生活との再結合

クライアントが自分の外傷体験について認識しはじめると、それまで押さえつけられていたり歪められていた感情が蘇ってきます。

その多くは、自分に対する理不尽な仕打ちに対する怒りです。そして、その対象は、クライアントをいじめた同級生であったり、いじめを黙認した先生であったり、虐待や小さな介入を続けてきた親であったりします。

しかし、長期間にわたって虐待や微妙な介入を受けてきた子供達は、そうした介入をした相手をかばう傾向があり、その相手に怒りを向ける事に強い罪の意識を感じます(たとえ、それが、暴力を伴った明らかな虐待であったとしても)。

クライアントは、怒りと罪の相反するふたつの感情を持ち、その間でひきさかれるような感覚を持ちます。

前回示した様に、ここでセラピストがすべき事は、クライアントの怒りを共感的に理解する事が第1で、クライアントと一緒になって対象(親や、いじめられた同級生や、それを黙認した先生等)を非難する事は、時にクライアントの罪の意識を刺激し、逆効果になる事があるので注意しなければなりません。

また、クライアントの怒りを批判したり、ラベリングしたりしては、意味がありません。この段階では、クライアントの怒りがもっともであると、クライアント自身が理解する事に焦点をあてるべきでしょう。

「怒り」は、正当な自然な人間のこころの動きなのです。セラピストは、「怒り」のような強い感情を表現しはじめたクライアントを勇気づけ、励まします。また、怒りを適切に表現するための「アンガー・マネージメント」の方法を教える事等も必要になってくることもあります。

怒りは、感情のかさぶたのようなものです。いったん怒りを表出しはじめると、その後からは悲しみ・痛み・絶望感等、さまざまな感情があふれてきます。あるいは、楽しかった時の感情もよみがえってきたりします。
つまり、ひきこもりの時には失われていた喜怒哀楽を再び獲得するのです。そして、そうした感情の放出と共に、クライアントは、自分の中のパワーに少しずつ気づいていきます。

セラピストは、さらに、これまでクライアントが、困難な状況に耐え生き延びてきた事を賞賛し、クライアント自身に、自分がこれまでがんばってきた事を認識してもらう事が大切です。こうしたセラピストからのサポートにより、クライアントの中に戦う勇気が芽生えます。

親子関係の歪みがひきこもりのひとつの原因とみなされる場合には、この段階で、家族セラピーを計画する場合があります。

家族セラピーは非常に効果がありますが、実施する前に、クライアントに十分なこころの準備ができている事を確認し、入念に計画をしなければなりません(文献1、P.315)。

また、セラピストが親と個別に会う事が必要です。いきなり家族セラピーをやってしまうと、セラピストはどうしてもクライアントに肩入れしすぎになり、親を一方的に責める事にもなりかねません。

そうした場合、前述したクライアントの罪の意識が蘇り、結局セラピーそのものが失敗に終わってしまう可能性があります。また、親にも理由がある事を理解し、言い分を聞く事も必要でしょう。
クライアントに肩入れしすぎない様に、場合によっては、他のセラピストが親の面接を行い、セラピスト2人制の家族セラピーを行う事もあります。

家族セラピーのセッションでは、いつもの家族のやりとり(時には家族げんか)が再現されますが、大きな違いは、そこにセラピストという第3者が存在する事です。家族に対する理解が、セラピストという第3者の存在により、新たな枠組みで理解する事が可能になります。

また、セッションでは、参加者(クライアントとその家族)に、“I”ステイトメントで話してもらったりします。これには、自分の発言に自分で責任をとってもらう効果があります。

例えば、お父さんが「かずきは、どうも不器用で・・」と言うのは、“You”ステイトメントであり、自分のではなく、息子のかずき君の責任をとろうとしているのです。
その代わりに「私は」を主語に話してみると、かずき君が不器用な事にいらいらしている自分の感情に気づくかもしれませんし、それは、例えばお父さん自身が、子供のときに自分の母親(かずき君の祖母)から向けられていた感情(いらいら感)と似たものであるかもしれません。

上手くいった家族セラピーの効果は、非常に大きなものです。セッションの中で、家族メンバーは、クライアント自身がもつ力を認識できるでしょうし、クライアントも、セッションに参加した家族メンバーの勇気を認め、また、彼等が真剣にクライアントの事を考えている事を実感する事になります。

さらに、クライアントを含めたそれぞれの参加者が、家族の絆を維持しながらそれぞれの個性を認める事ができるようになります。そして、家族セッションの中で獲得した新たな家族の枠組みは、クライアントの社会復帰のための大きなサポートになります。

ただ、事情により家族が参加できない場合(家族が遠方に住んでいる等)や、どうしても家族セッションに参加しようとしない親御さん達もいらっしゃいます。そうした場合は、個人セッションやグループセッションを通じ、クライアントが新たな枠組みを獲得する事を支援する事になります。

また、中には、クライアントの方ではなく、実は、親御さんの方が問題を抱えている場合があります。そうしたケースで、親御さん達が家族セラピーにも、親の会への参加を拒否するような場合には、クライアントの親からの独立に焦点を当てたセラピーを行う事もあります。

クライアントが、ある程度まで自分の独自性を認め、自らを受容し、自分の感情にコンタクトし、それを表現できる様になったら、今度は、社会復帰へのサポートに焦点をあてていきます。

ここでは、グループ(自助グループなど)への参加が大きなサポートになり得ます。社会復帰へむけてのさまざまな情報が得られますし、なんといってもグループは、所属感を再創造します。すなわち、自分は社会の一員であるといった意識が芽生えます。

なんらかの理由(いじめ等)で元の学校にもどりたくない学生(除く大学生・大学院生)ならば、ひきこもりや不登校に理解のあるオルターナティブ・スクール(注1)に転校するのもよいでしょう。セラピストは、就職や復学・転校に伴う困難をクライアントが乗り越える事をサポートし、勇気づけます。

クライアントが社会に復帰して、安定した状態になれば、さらに数回のセッションをして、これまでのトリ−トメントを振り返り、自分の努力を再認識してセッションは終わります。

ひきこもりを克服した時、その人は、その克服のプロセスから大きなおみやげを持ってきていると私は思います。そして、そのおみやげが、きっとその後の人生にプラスになるものと信じます。

これまで見てきた様に、ひきこもりの克服は、その背景に社会からの阻害というテーマがあり、多くの場合、セラピスト単独でのサポートよりも、バイオ・サイコ・ソーシャルアプローチと呼ばれる、さまざまなメンタルヘルス機関との協力による統合的なサポート(セラピスト、ソーシャルワーカー、精神科医の協力によるサポート)の方が、はるかに効果が期待できます。

バイオ、サイコ、ソーシャルそれぞれの役割分担は、およそ:

精神科医(バイオ):
精神疾患の診断、経過の観察、アドバイス、必要に応じ投薬等。

セラピスト(サイコ):
クライアントおよびその家族の心理面でのサポート。トラウマからの回復、自己受容、家族関係や人間関等に対する新しい視点(準拠枠)の獲得へのサポート。個人セラピー、家族セラピーの提供。

ソーシャルワーカー及び学校(ソーシャル):
クライアントの社会復帰に向けてのサポートおよび、日常的な心理的サポート。クライアントおよびその家族メンバーに対し、「社会に所属している」感覚、相互援助の意識の獲得をサポート。デイケア、フリースペース、オルターナティブスクール、自助グループ、親の会等。

となります。

バイオ・サイコ・ソーシャル・アプローチは、アメリカでは、メンタルケアの現場で一般的になされているトリートメントです。

社会的要因も指摘される「ひきこもり」のような問題については、こうした統合的なアプローチが非常に有効であると、僕は思います。

最近、日本でもこうした統合的アプローチが注目されつつありますが、そのシステムを有効に機能させるためには、セラピスト、ソーシャルワーカー、精神科医が相互に協力してトリートメントに当たるという姿勢が必要でしょう。

(向後善之)

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