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役に立つ心理学コラム「ひきこもりからの回復1」

ひきこもりからの回復1

ひきこもりにはさまざまなパターンがありますが、その多くは、以前にご紹介した様な「小さいけれど連続的になされる介入」により、マイクロトラウマを受けています。今回から4回にわたり、こうしたマイクロトラウマを受けたひきこもりの人たちの回復のプロセスについてお届けします。

マイクロトラウマを受けた人たちは、絶望感・無力感・恐怖・感情の鈍磨(自分の気持ちを感じる事が困難)、いいようのない怒りやいらいら感・自尊心の低下・不眠・頭痛・他者からの孤立等の症状を訴えます。
また解離症状の様な、あたかも自分の中に他の人格がある様な感覚、あるいは、自分が自分でないような感覚を覚えます。

これらの症状は、トラウマの研究家として知られるJ.L.ハーマンの主張する「複雑性外傷ストレス障害(文献1)」に当てはまると言えます。
ハーマンによれば、複雑性外傷ストレス障害とは、慢性的な虐待を受けた場合に起こり得る症状で、以下のような特徴があります(文献1、p171)。

1)断片的な自己規定

矛盾した二つの自己感(高められた『完璧な自己』感と、低められた『最低の自己』感を持ち、その統合ができない。つまり、ほどほどの長所と、ゆるされるほどの欠点を持ったひとまとまりの自己イメージを育てる事ができません(文献1、P.165)。
すなわち、「自分が、もし完璧でなくなれば、最低になってしまう」と感じ、そのために、子供は「良い子」になろうと執拗な努力を続けます。


2)感情状態の病的制御

喜怒哀楽の喪失、無表情、無感動、無気力等。
ダブルバインドやミスティフィケーション等の執拗な介入により、自由な感情表現が継続的に否定されるため、次第に素直な感情を無意識的に歪め、他人の期待や欲求にあわせているうちに、しまいには、自分がどんな感情を持っているのか(うれしいのか?悲しいのか?怒っているのか?)わからなくなっていきます。

さらに、なにかにつまずき(例えば、受験の失敗)、他者からの欲求に従って作り上げてきた「完璧な自己」を維持できなくなった時、今度は自分を「最低」と規定してしまい、それに伴う自尊心の喪失感、絶望感等のどん底の気持ちから目をそむけるために、徹底的に感情を抑え始めます。

彼らにとっては、そうしたどん底の気持ちに打ちのめされるよりも、無感情の方がまだましなのです。なぜなら、彼らの回りには、なにかにつまずいた時に「なんでもう少しがんばらなかったんだ」とか、「お前の努力が足りなかったんだ」と考えたり、あるいは実際に言ったりする人はいても、そうしたどん底の気持ちを共感的に理解し、癒してくれる人がだれもいないからなのです。

そして、抑え込まれる感情は、喪失感や絶望感に限られず、喜びや悲しみや怒りを含む感情全般に及んでいきます。


3)解離的防衛機制

感情の抑制がいきつくところは、解離的な防衛です。
解離とは、自分が自分でない様な感覚、自分が自分の体から離れてしまっている様な感覚、解離性同一性障害(多重人格)等の症状を指します。複雑性外傷ストレス障害の人たちには、しばしば自傷行為(頭を壁に打ち付ける等、自分を傷つける行為)が認められますが、ハーマンはこうした自傷行為に先立ち、深い解離現象が起こると指摘しています(文献2、P.170)。

また、東京理科大の服部雄一氏講師は、多くのひきこもりの人たちには、軽い解離性同一性障害的な傾向(自我状態障害)が認められると主張しています(文献3)。自我状態障害とは、世間にあわせようとする表の人格を持っているとともに、隠れた人格が存在する状態です(文献2、P.172)。

さらに、清和女子短期大学の坂上佑子氏は、相手や場面によって顔や性格を使い分ける多面人格の子供たちが増えていると指摘し、そうした子供達は、やがてどれが本当の自分かわからなくなっていくとしています(文献3)。

自我状態障害や多面人格のような軽い解離性同一性障害的な症状は、マイクロトラウマを長期間にわたって受けてきた人たちに多く認められます。

解離性同一性障害と、自我状態障害や多面人格との大きな違いは、解離性同一性障害においては、人格同士の記憶の共有が無いのに対し、後者では、人格同士である程度以上の記憶の共有が認められる点です。


これらの症状は、継続的に微細な虐待を受け、無力化されてしまった彼らの自己を守るための防衛手段でもあります。
喜怒哀楽を無くせば、喜びも感じなくなる代りに、辛さやも感じなくてすみますし、解離症状は、その辛い体験を一時的にせよ他人事にできます。
また、高められた『完璧な自己』感と同一化できる間は、なんとか自分を保ち、自分の欠点すなわち低められた『最低の自己』を見ないですみます。

こうした複雑性外傷ストレス障害からの回復の段階は、おおむね次の3段階に分かれます(文献2、P.241)。

1.安全の確立

ストレスフルな環境から離れ、安全な場所を確保する事。すなわち「連続的になされる介入」を受けない様に環境を変えるか、そうした介入を受けない環境に移る事です。

例えば、宿泊型の施設に移る、いじめを受けていた学校から転校する等もその選択肢のひとつになります。また、少しづつ外に出てみて(例えばセラピストやソーシャルワーカーといっしょに)、そこが安全であると確認する等という方法で、内側から世界に対する見方を変えていく方法もとられます。


2.想起と服喪追悼

自分が受けてきた介入を思い出し、理解する段階です。
複雑性外傷ストレス障害を受けている人たちの多くは、「全て自分のせい」と考えがちですが、この段階では、「自分が悪かったのではない」事、少なくとも自分だけでなく他人にも責任がある事を認識します。


3.通常生活との再結合

自尊心を回復し、自分を支える信念を再発見し、戦う勇気を得、他人との信頼関係を再び回復する段階です。


この3段階は、きちんと順を追って進んでいくわけではなく、いったりきたりの連続になる事が一般的です。

次回からは、この回復の3段階と、各段階における困難について、少し詳しく見ていきたいと思います。


文献1:「心的外傷と回復」、J.L.ハーマン著、みすず書房、1999年
文献2:「引きこもり生還記」、池上正樹著、小学館文庫、2001年
文献3:「青年期と家族」、こころの科学85号、坂上佑子、1999年


(向後善之)

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