本ウェブサイトでは、スタイルシートを使用しております。このメッセージが表示される場合には、スタイルシートをoffにされている、またはブラウザが未対応の可能性があります。本来とは異なった表示になっておりますが、掲載している内容に変わりはありません。

以下のリンクより、本文へジャンプができます。

カウンセリング ハートコンシェルジュ > 役に立つ心理学コラム>「パワー オブ ダンス〜吉福さんのセラピー〜 3」-2

役に立つ心理学コラム「「パワー オブ ダンス〜吉福さんのセラピー〜 3」-2」

「パワー オブ ダンス〜吉福さんのセラピー〜 3」-2

吉福伸逸さんのセラピーについての第3回です。今回は「スピリチュアル・エマージェンシー」と「統合失調症に対するアプローチ」についてです。
・スピリチュアル・エマージェンシー
吉福さんのセラピーの理論的な柱として、スピリチュアル・エマージェンシーという概念があります。
スピリチュアル・エマージェンシーとは、人が成長して行く過程で、その人の存在全体に関わる深い心理的変容をもたらす、苦難として体験される決定的な諸段階と定義されます(グロフ&グロフ、1997, P. 61)。そうした段階においては、強烈な高揚感、エクスタシー的喜悦、不安、怒り、悲しみ、孤独感、抑うつといった感情、死の恐怖、コントロール喪失への怖れ、感覚の超過敏化、震え、ねじれなどの激しい身体症状など、非日常的な体験にさらされます。こうした状態は、従来の精神医学では、精神病、気分障害、不安障害などとみなされてきました。しかし、これらの体験は、全体性へと向かい、個人の真の潜在能力を発見していく、あらゆる人間が生まれながらに持っている進化の能力、すなわちスピリチュアルな成長のプロセスにおける混乱状態なのだと解釈する人達が出てきました。スタン・グロフなど、主に、トランスパーソナル心理学の臨床家研究者たちです。
そして、混乱が終結した後、その人は、新たな価値観と世界観を得て、パーソナリティが変容し、新たな精神発達段階を迎えると考えられています。
こうしたスピリチュアル・エマージェンシーの考え方に、吉福さんは、基本的に賛同し、日本でも、スピリチュアル・エマージェンシー・ネットワーク ジャパン(SEN Japan)というグループを作り、スピリチュアル・エマージェンシーに陥っている人達をどのようにサポートして行ったらよいかを考える活動をはじめました。SEN Japanは、TEN(トランジショナル・エマージェンシー・ネットワーク)と名前を変え、現在まで活動を続けています。トランジショナル(Transitional)とは、「過渡期の」と言う意味です。これは、スピリチュアルという言葉が、日本では、神秘的なもの・超常現象的なもの・超能力的なものを連想させる言葉になってしまったため、吉福さんが「別の言葉にしたい」ということになり、吉福さんと私が相談して名称を変えました。
吉福さんの考えていたスピリチュアル・エマージェンシーの概念は、これを提案したグロフらとは少し違います。
グロフたちが、「従来の精神医学で、精神疾患と診断されたものの中には、成長に向う混乱、すなわちスピリチュアル・エマージェンシーと判断されるものが含まれている」と考えているのに対し、吉福さんは、「スピリチュアル・エマージェンシーと精神疾患には、何ら違いは無い。あらゆる精神疾患は、スピリチュアル・エマージェンシーなのである」と考えていました。
つまり、吉福さんは、あらゆる精神疾患は、個人の精神的成長のプロセスにおける混乱と考えたのです。そして、精神疾患の中には、当時から完治が難しいと言われてきた統合失調症も含まれていました。そして、統合失調症に対しても十分通用する、すなわち完治に導けるセラピーこそが、吉福さんのめざしていたものなのです。
・統合失調症に対するアプローチ
統合失調症とは、妄想や幻覚と言った症状を持つ慢性的で、最も完治しにくい精神疾患のひとつと言われています。妄想とは、「CIAに追われている」、「UFOにさらわれた」、「自分は皇族である」など、現実ではないことを真実と思ってしまうことで、幻覚とは、他の人が見えないものが見えてしまう、他の人には何も聞こえていないのに、はっきりと声が聞こえているなどの経験を示します。
統合失調症はこうした妄想や幻覚が慢性化する病気で、非常に治りにくい病気だと言われています。日本では、統合失調症は一生治らない病気と考えている専門家が多いのですが、欧米では4分の1程度は、全快すると考える専門家が大多数です(フラートーリー,2007、Maxmen J. S., Ward N. G.,1995他)。
吉福さんは、「4分の1程度は、全快する」などとは言わずに、「統合失調症は完治する」と言い切っておりました。完治するということは、抗精神病薬の服用を必要としないレベルに復帰するということです。そして、統合失調症からの回復のためのセラピーを、吉福さんは、ライフワークのひとつとして取り組んでいました。前述したSEN Japan/TENも、その試みのひとつです。吉福さんは、統合失調症は完治すると確信し、実際に実績を上げ、そのやり方を多くの人達に広めたいと考えていました。

しかし、こうした吉福さんの考え方は、日本の精神医学のメインストリームでは、なかなか受け入れられないものでした。日本では、統合失調症と診断されたら、まず長期的な投薬治療になります。何年も入院することも少なくありません。発症したら、もう完治は不可能と思っている方も少なくないでしょう。また、統合失調症にはセラピーは通用しないと考える専門家も多数日本にはいます。しかし、例えばアメリカでは入院期間が短く、できるだけコミュニティの中で統合失調症の人たちを支えて行こうという方針になっていることもあり、統合失調症のクライアント(患者)にも、最初からセラピストがつきます。

日本は、あくまで投薬主体の治療がメインなのです。しかし、服薬による治療が効果を上げているとは、とても言えません。

吉福さんは、そうした投薬中心の考え方とは、まったく別のアプローチをしていました。
統合失調症のセラピーで、まず重要なのは、統合失調症のクライアントの心的世界を共感的に理解することです。

吉福さんは、「誰の中にも統合失調症の要素はあるのだから、クライアントの世界を共感的に理解することができる」と言い切ります。

例えば、現実より少し悲観的になって、「多くの人が、私を嫌っている」と思いなやんだり、「自分は、うまくいきそうになると、なにかアクシデントがあって結局失敗する運命なのだ」と思い込んでしまったりしたことがある人も多数いるでしょう。その悲観的な思いの少し先に統合失調症の心的世界があります。統合失調症の人は、「全ての人が、私を嫌っている。世界中で私の悪口を、Twitterでつぶやいている。私は耐えられない」、「私が何かしようとすると、恐ろしいことが起こる。世界で起こっているテロ事件も私のせいだ」といったことになるのです。

少し延長すれば統合失調症の世界に手が届く要素は、探してみればだれの中にもあるのです。従って、統合失調症の世界を共感的に理解することは、だれにでも可能だと吉福さんは主張します。セラピストの共感が夜の海の灯台のような役割となり、統合失調症の世界からもどってくるクライアントもたくさんいるのです。

セラピー手法として、吉福さんは、クライアントのプロセスに沿いながら、適宜ソマティック(身体心理学的アプローチ)な手法など適用し、クライアントの情緒・情動に直接アプローチしていきました。

そうしたアプローチは、日本では、統合失調症に対しては、なされていませんでした。クライアントは、幻覚や妄想によってかろうじて安定を保っているのだから、情緒・情動に直接アプローチするなんて、クライアントを混乱状態に導くだけだというのです。しかし、吉福さんによれば、注意深くアプローチすれば、混乱ではなく統合の方向に進むのだと言います。また、後述するように、混乱を招いたとしても、セラピスト側がしっかりと落ち着いて対応することにより、混乱は落ち着いていくと言うのです。

このような統合失調症への吉福さんの取り組みは、去年あたりから話題になっているオープンダイアローグと言われる手法と多くの点で共通点があります。オープンダイアローグとは、フィンランドで行われているアプローチで、20〜30%程度の治癒率と言われてきた統合失調症について、80%以上の治癒率(予後2年で再発無し)を示すというのです。特に初めて発症した場合に有効であるとされ、できるだけ早く複数の専門家が患者の元に出向き、患者の話を聞き、その過程で、複数の視点を引き出す、関係性に注目する、発言内容には対応するがその意味に注意を向ける、患者の前で専門家たちが患者の状況について話し合うことにより自分の状態を外在化するといったアプローチです。
吉福さんは、「できるだけ早く複数の専門家が患者の元に出向く」、「患者の前で専門家たちが患者の状況について話し合う」ということはしていませんでしたが、その他については非常に似ています。吉福さんは、統合失調症の人の幻覚・妄想の話を普通の話を聴くように聴き、そうした幻覚・妄想の背景にある、不安・恐怖などの感情に直接アプローチしていくのです。非常に共感的で、クライエントのプロセスに沿い、セラピストがクライエントの話を興味を持って聴き、クライエントがアクティングアウトしてもセラピストは、落ち着きを失わず、アクティングアウトが沈静化するまでクライエントと共にいるといった特徴があります。オープンダイアローグになくて吉福さんのアプローチにあるものは、クライエントの情動へのアプローチの際にソマティックの手法を適用するということです。吉福さんのアプローチは、統合失調症の発症当初でなくても、効果を上げていました。

吉福さんによれば、統合失調症の人達は非常に敏感で、彼らに対して、少しのごまかしもきかないと言うのです。ですから、セラピストは、Authenticな状態(真実性のある状態)でなければなりません。Authenticな状態とは、自分の心の状態を歪めずにごまかさずに見つめることができる、自分に正直な自己一致した状態のことです。ここが、吉福さんのセラピーにおいてもっとも重要なポイントだと思います。

そして、吉福さんの考える統合失調症へのアプローチは、その他のさまざまな精神疾患にも適用できます。

次回からは、第2部として、吉福さんの実際のアプローチのポイントを見ていきます。
<つづく>
向後善之


(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)

向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)

役に立つ心理学コラム 目次

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリングカウンセリング(417)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリング心理学(43)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリングカウンセリング技法(17)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリング家族・学校(52)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリングナルシズム(24)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリング解離、自傷、過去吸(23)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリングビジネス(144)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリング精神疾患(21)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリング依存(6)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリングカウンセラー倫理(28)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリングいじめ・暴力(93)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリング自己成長・スピリチュアリティ(33)

役に立つ心理コラム|ハートコンシェルジュカウンセリング本の紹介(5)

ご予約・お問い合わせは   フリーダイヤル0120-039-810
火〜金13:00〜22:00 土・祝13:00〜20:00 (日曜日・月曜日定休)

▲ページの先頭へ