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役に立つ心理学コラム「「エッセー:パワー オブ ダンス〜吉福さんのセラピー〜 2」-2」

「エッセー:パワー オブ ダンス〜吉福さんのセラピー〜 2」-2

吉福伸逸さんのセラピーについての第2回です。今回は「統合的セラピー」についてです。吉福さんは、精神分析、認知行動、人間性心理学、トランスパーソナル心理学を必要に応じて適用していきました。


・統合的セラピー
吉福さんが日本でのワークショップを再開したとき、「いまだにトランスパーソナル?」、「もう昔の人でしょ」などと批判的なコメントをする人達もいました。しかし、その批判は的をえたものではありませんでした。

吉福さんのワークショップには、神秘的な演出も、ヒーリングミュージックもなにもないのです。吉福さん自身も、なんの気取りも無い様子で、たいていはボーダーのTシャツを着てそこにいます。

吉福さんは、ワークの理論的な背景として、精神分析も認知行動も人間性心理学もトランスパーソナル心理学もすべて必要に応じて適用していました。吉福さんによれば、「どの心理学理論も完全ではなく、人間の心の一部をほぼ説明しているにすぎない」とのことでした。そのため、クライアント(ワークショップにおいては参加者)の状況や個性にあわせて、適宜その人にあうアプローチを選択していました。

心の構造を説明するとき等には、吉福さんは、自我・超自我・イドと言った精神分析の用語を使用して説明していました。自我とは、今自分が意識している「私」で、イドとは、無意識の中に存在する精神のエネルギーで、快楽原理に基づいて解を求め不快を避けようとします。超自我は、イドからの欲求・衝動を検閲し選別する機関です。

また、精神分析から派生し発展したユング心理学からは、ペルソナの概念などをさかんにとりいれていました。ペルソナとは、自己の外面です。どんな人でも、多かれ少なかれ、自分ひとりでいるときの顔と、例えば、家族の前での顔と、会社の中での顔が違います。この顔それぞれがペルソナです。ペルソナを意識してかぶるのなら問題ないのですが、ペルソナが厚くなり、ついには自分の本当の顔が分からなくなるということすら起こります。

吉福さんは、そのペルソナをとるワークとして、顔の筋肉を緩めていく「デスマスクのワーク」というワークを、ワークショップなどでよくやっていました。筋肉は心の動きと連動しています。中でも顔の筋肉は、心理を反映して非常に複雑にそして巧妙に仮面を作って行きます。例えば、心にも無いことを言っているときには、自分でも意識していなくても目元や口元が緊張するのです。また、つねに、人前でいい人であろうとする人は、顔から笑顔を消すことができなくなります。笑顔が張り付いてしまって、怒っているときも、悲しいときも笑顔で固まってしまうのです。ですから、意外に顔の筋肉を緩めるというのは難しいのです。「デスマスクのワーク」は簡単なワークですが、奥深い体験が得られるワークでもあります。

吉福さんが、認知行動療法のアプローチを使うと聞いて驚く人も少なくないかもしれません。認知行動療法と吉福さんが日本に紹介したトランスパーソナル心理学は、水と油だと思っている人も多いからです。認知行動療法は、思考・行動に対して介入し、人間性心理学ないしはトランスパーソナル心理学は、考えるというよりも感じる方に焦点を当てて、情動に直接アプローチするという違いがあります。しかし、これは、どこに焦点を当てたかという違いがあるだけで、本質的な矛盾は無いのです。

吉福さんは、「9割の精神疾患は、認知行動療法で治る」とまで言ったことがあります。「9割」というのは、少々大げさに言っているのかもしれません。この発言は、2004年頃トランスパーソナル系の人たちが多く参加していたワークショップでなされたものです。いわゆるトランスパーソナル系の人たちの中には、認知行動療法は表面的だと批判していた人も少なくありませんでした。そうした状況だったので、あえて吉福さんは「9割は認知行動療法で対応できる」と刺激的なことを言ったのでしょう。

実際、吉福さんはよく認知行動療法の手法を適用していました。吉福さんの個人セッションに陪席させてもらったことがあるのですが、行動を変えてみる宿題をクライアントさんに出すこともよくありました。また、自分の中にある「・・ねばならない」という固定観念をリストアップし、その中からもっとも優先順位の低いものをやめてみるというようなエクササイズをすることもありました。

さて、純粋なトランスパーソナル心理学的なアプローチはどうだったかと言いますと、少なくとも私がアシスタントとしてかかわった2004年〜2013年までの間、それほど多くないのです。

死と再生をイメージ誘導する「バルトのワーク」と言われるもの、ホロトロピック・ブレスワークと言って、変性意識状態に導く呼吸法などが時々取り入れられましたが、それがメインになることはありませんでした。トランスパーソナル心理学的なアプローチを以前ほど取り入れなくなったのにはさまざまな理由はあると思いますが、その中で大きなものは、1)個を超える成長が、トランスパーソナル心理学的な手法のみでひき起こされるわけではない、2)神秘的な体験に固執しすぎるのはむしろ退行である、3)まずは、個のテーマを徹底的に見つめることが大切であるといった考えが、吉福さんの中にあったのではないかと思います。

人間性心理学の考え方は、吉福さんのセラピーの根幹をなすものでした。例えば、周りが余計な手出しをしなければ、クライアントは自然に変化し成長していくというものです。セラピストは、クライアントが変化し始めたらなるべく手を出さないという姿勢です。しかし、そうは言ってもなにもしないで自然に変化をしていく人ばかりではありませんから、なんらかの介入が必要になる場合があります。そうした場合、まずは、自由に変化できる環境を整えるのです。何を表現しても大丈夫な受容的な環境を作ります。そこでは、泣きたくなったら泣いてもいいし、怒りたくなったら怒ってもいいのです。

また、マインドフルな状態を作るための瞑想・イメージ誘導も、しばしば行っていました。マインドフルネスとは、自分自身を、今この瞬間に、静かに体験し見つめている状態です。マインドフルな状態からわき上がってくる感情を、クライアントは、静かに無批判に見つめることができます。

そして、これも吉福さんのワークショップの特徴ですが、セラピーやワークショップの場には、常にユーモアがありました。自分自身を深く見つめるというのは辛く苦しいことが少なくないのですが、そんなとき、ユーモアのある雰囲気に救われることがよくありました。

そうした環境が整った上で、吉福さんがほんの少し背中を押すと言った感じの介入をするのです。

このように、吉福さんのセラピーにおいては、心理学の4つの理論全てが、必要に応じて適用されました。また、その理論を臨床的に応用するための技法も、さまざまでした。瞑想、イメージ療法、認知行動療法、身体からアプローチするソマティック心理学を適用した手法などがよく適用されました。

こうしたセラピーのやり方は、統合セラピーなどと呼ばれます。ひとつのセラピー理論で解決できるものは実は非常に少なく、うつ、不安、依存症、解離、人格障害、精神病などの精神疾患に対するセラピーにおいて、欧米のセラピストのほとんどは、複数の理論・技法を使っています。

<つづく>
向後善之




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