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役に立つ心理学コラム「「パワー オブ ダンス 〜吉福さんのセラピー〜 1」 -2」

「パワー オブ ダンス 〜吉福さんのセラピー〜 1」 -2

第2736回「吉福さんのセラピー〜 1」

これから、何回かにわけて吉福伸逸さんのセラピーについて、私(向後)が理解していることを書いていこうと思います。
今回は、その第1回目です。

1、統合的セラピーと、統合失調症へのアプローチ

・心理学の4つの流れと、トランスパーソナル心理学

吉福伸逸と言うと、「トランスパーソナル心理学を日本に持ってきて広めたセラピスト」と言う印象を持つ人が多いと思います。

トランスパーソナル心理学とは、人間は、自己実現を超えて成長しうると考える心理学の一学派で、精神分析学、認知行動心理学、人間性心理学に続く心理学理論の第四の波と言われていました。

自己実現とは、個人の才能、能力、潜在性などを十分に開発、利用することで、自分の情動、思考、行動の中に何の矛盾もない状態を示します。
トランスパーソナル心理学の主張する、「自己実現を超えた成長」とは、個人を超えた成長で、禅仏教で言う悟りの境地を示します。そこでは、自他を含むあらゆる二元論が消失するとされています。

ここで、少し寄り道をして、心理学の第一〜第三の波と言われる、精神分析学、認知行動心理学、人間性心理学について簡単に見ておきましょう。

精神分析学は、精神現象は、無作為に起こるものではなく、いかなる思考・感情・記憶・行動にも、それを起こす原因が存在するとし、こころの病は、過去の心的外傷体験を無意識の世界に抑圧する結果生じると考える学派です。臨床の場では、治療者が、患者の心理を分析し、心的外傷体験を解釈することに主眼が置かれます。

認知行動心理学は、最初、行動心理学から出発しました。行動学派では、心理学が科学であるためには、客観的な事実すなわち行動を対象としなければならないと考えました。したがって、客観的に確かめる事のできる刺激(Stimulus)と、それに対する反応(Response)との結合関係(S−R結合)の関係を明らかにする事が、心理学の仕事であるとしました。しかし、後年、S−R結合だけでは人間の心理を説明できないとの批判から、人間の行動と価値観、そして情緒反応の相互作用を考慮した認知行動学派が登場しました。臨床においては、行動学派、認知行動学派共に、精神分析学派が強調する心的外傷体験の解釈はせず、もっぱら、行動様式や認知様式の修正に焦点をあてます。

人間性心理学は、人間に元々ある、自己実現に向かう精神的成長の欲求を強調します。人間性心理学派の人達の中には、あらゆる精神疾患は、人間の精神的成長のプロセスであると考える人達も少なくありません。精神分析学派、認知行動学派が、「人間の不都合な部分を修正する」事に焦点を当てていたのに対し、人間性心理学派では、人間の心のポジティブな側面を強調します。臨床の場では、セラピストのクライアント対する共感や無条件の肯定的受容を強調し、クライアントに対し非指示的なのが特徴です。

トランスパーソナル心理学は、それまでの3つの心理学の視点に無かった、個を超えた俯瞰的な視点を提供したのです。1980年代に吉福さんが精力的にトランスパーソナル心理学関係の書籍を翻訳し、ご自身でも何冊かの書籍を出版したころ、トランスパーソナル心理学は、熱狂的な支持を得ました。日本トランスパーソナル学会が設立され、世界大会が日本で開かれ、著名な心理学者達も多数参加しました。大書店の心理学のコーナーの半分が、トランスパーソナル心理学系の書籍で占められたこともありました。多くの人達が、第四の心理学の登場ということに興奮したのです。

トランスパーソナル心理学に触れた人達の中には、「人は、基本的には繋がっている」、「だから人は深く理解し合える」、「ひとりひとりの成長が人類の成長にも繋がるのかもしれない」、「利他的な行為が自分自身の喜びとして感じられるかもしれない」という思いを持った人も多くいました。ほどなく、いたるところで、トランスパーソナル心理学をベースとしたワークショップやセミナーが開催されるようになりました。

しかし、中には、いかがわしいものもありました。例えば、トランスパーソナルな成長あるいはスピリチュアルな成長などと言いながら、超能力の獲得に固執したカルトが多くの信者を集めたりするようになりました。こうした動きは、スピリチュアルな探求をしている自分たちは、高次の成長段階にあると思い込む、いわゆる「スピリチュアルな物質主義」を示しています。スピリチュアルな物質主義とは、スピリチュアルな成長の度合いを目に見えるような尺度(例えば、「超能力があるかないか」、「神秘的な体験をしたかどうか」など)で測ろうとするもので、トランスパーソナル心理学でも、既存の宗教においても、成長というよりむしろ退行と判断される姿勢です。

この「トランスパーソナル心理学ブーム」が急激に冷えて行ったきっかけは、1994年、1995年に起きた、オウム真理教による松本サリン事件、地下鉄サリン事件でした。
オウム真理教は、トランスパーソナル心理学の、個を超える成長の可能性の考え方を教義の中に取り入れていました。しかし、それは、成長の過程で起こりうる神秘的な体験などを拡大解釈し、空中浮揚をスピリチュアルな成長の証にするなど、「スピリチュアルな物質主義」に陥っていました。

オウム真理教による一連の事件のあと、トランスパーソナルなムーヴメントは、すっかりしぼんでしまいました。トランスパーソナル心理学について語ることについては、ある種の抵抗が生まれるようになりました。世間からは、トランスパーソナル心理学は、オウム的なものとみなされてしまったのです。2000年代になると、トランスパーソナル心理学系の書籍は次々と絶版になっていきました。

吉福さんは、オウム真理教事件の数年前の1989年からハワイに移住し、翻訳活動からも、執筆活動からも遠ざかっていました。吉福さんは、トランスパーソナル心理学と日本から一時離れていった理由については、多くを語りませんでした。ある日ぽつりと言ったのは、「トランスパーソナル心理学が主張していることは現実と違った」と言う言葉です。トランスパーソナル的な意識が、必ずしも成長をもたらすわけではないと、吉福さんが感じたのかもしれません。スピリチュアルな物質主義に陥る人達が出て来たこと、神秘的な体験ばかりを追い求め、現実から逃避していく人達が多くいたことに無力感を感じたのかもしれません。また、アカデミズムの世界に対する違和感を持ったということもあったのかもしれません。吉福さんは、トランスパーソナル心理学に一度絶望したのでしょう。

吉福さんが日本でのワークショップを再開したきっかけは、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロです。「911が契機となり、世界が(そして当然日本も)大きく変わる」と考えたとのことです。そして、おそらく、その頃、より地に足の着いた新しい吉福さんのセラピーのスタイルができあがっていったのだと思います。
<つづく>
向後善之


(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)

向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)

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