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役に立つ心理学コラム「精神疾患は、病気ではない」
精神疾患は、病気ではない
(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)
アメリカの心理学者で、元アメリカ人間性心理学会会長だったビュージェンタールは、「全ての精神疾患は病気ではない」と言い切っていました。
彼によれば、うつや不安といった精神疾患は、人間の精神的成長のプロセスの一部であると言います。精神疾患を克服したとき、人間は、大きく成長すると言うのです。
カウンセリングに携わっていると、クライアントさんが、うつや不安を克服し、新しい世界観や価値観を獲得するという場面に出会います。視野が広まり、より大きな世界を見るようになるわけです。
人間の心の成長のプロセスは、およそ「習慣化した世界観の破壊と混乱」⇒「世界観の再構築」⇒「新たに獲得した世界観の習慣化」となります。そして、精神疾患(例えば、うつや不安など)は、大きな「習慣化した世界観の破壊と混乱」が起きている状態と、僕はとらえています。
精神疾患と言われるものから回復するとき、その人は、ひとまわりもふたまわりも大きくなると考えています。
ですから、僕もビュージェンタールと同じように、精神疾患といわれるものを「病気」とは、呼びたくない気持ちがあります。病気と言うより、成長のプロセスにおける混乱だと考えています。
クライアントさんが、さまざまな精神疾患から回復するときには、一目瞭然です。それまでとまったく雰囲気が違ってきます。
それは、カウンセリングオフィスの待合室でそのクライアントさんにお会いしたときに、瞬間的に感じることができるものです。言葉で説明するのは、難しいのですが、生き生きした感じやエネルギーといったものが、言葉を交わす前から伝わってきます。
うつ状態から回復した直後のあるクライアントさんが、「うつのとき、例えば、私から見える世界は、モノクロの世界みたいだったのですが、今は、まったく違います。構図はまったく変わらないのだけど、(世界が)色鮮やかに見える・・そんな感じです」とおっしゃっていました。
そうした瞬間に立ち会えるのは、うれしいものです。クライアントさんが回復し安定したことが確認できたら、クロージングのセッションをしてカウンセリングは終結となります。
クライアントさんが回復していく原動力は、自己治癒力、あるいは、成長へのエネルギーといったものだと思います。回復のプロセスは、例えば、さなぎが蝶になるプロセスにたとえることができます。
さなぎから蝶へ羽化というのは、観察していると実に大変なプロセスです。しばらくの間、自分をさなぎという狭い世界にとじこめ、時期が来ると、そのさなぎを破っていくわけですが、これがなかなか苦しそうに見えます。
だからといって、手伝ってあげようなんてことをすると、えらいことになります。人間が羽化のプロセスに手を加えると、飛べない蝶になってしまいます。
カウンセリングにも似たところがあって、カウンセラーがあまり手を出しすぎると、クライアントさんは、カウンセラーに依存するばかりになってしまうかもしれません。カウンセラーがやることは、さなぎになる安全な場所を探したり、天敵を追っ払ったりする程度のことです。
「私でなければ、このクライアントは治せない」などというのは、カウンセラーの思い上がりです。
カウンセラーに大切なのは、クライアントさんの成長に向かうプロセスを徹底的に信頼するということだと思います。
(向後善之)