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役に立つ心理学コラム「学んで来た事・とりくんでいく事 その46」
学んで来た事・とりくんでいく事 その46
その46 「自分が壊れてしまうほどの感情は出てこない」・・吉福伸逸さんの言葉の解説
例えば、精神的に不安定な人が、突然バランスをくずし騒ぎだす(アクティングアウト)と、多くの場合、廻りの人たちは、その騒いでいる人を押さえつけ、なんとか静かにさせようとします。鎮静剤を処方したり、極端な場合、拘束衣を着せて、身動きができない状態にしたりすることもあるでしょう。
吉福さんは、こうしたやり方は、好ましくないアプローチであると考えていました。
アクティングアウトは、今まで抑圧していた感情が、抑えきれずに表出し、行動が暴走する状態です。ですから、それをよってたかって抑えてしまったら、結局今までその人自身あるいは、その人の廻りの人たちが行ってきたのと同じ抑圧をしてしまうことになるのです。
吉福さんは、アクティングアウトをしている人の前で、「ただじっとそこにいる」ということを、よく言われていました。
アクティングアウトをしたからと言って、そのエネルギーがいつまでも続く訳ではありません。
吉福さんによれば、受容的な雰囲気の中で、その人の自然なプロセスが進んでいくのを邪魔しなければ、落ち着くところに落ち着いていくと言います。そのとき、まわりにいる例えばセラピストは、このシリーズの「その1」でお伝えしたように「クライアントのプロセスを徹底的に信頼する」存在でなければなりません。
そして、プロセスの中で、怒りなどどんなに激しい感情が出てきても、その人を壊すことはないと吉福さんは言います。
アクティングアウトがおさまっていく経験は、その人を成長させます。自分の感情に対する恐れが少なくなるのです。その結果、その人は、自分の感情を静かに見つめることができるようになります。
しかし、「世の中には、激しい感情のままに破壊的な行動をする人じゃないか」という反論もあるでしょう。
そうした破壊的な感情が出てしまうのは、むしろ、無理矢理感情を抑え込もうとしたのに抑えきれなかった場合なのです。アクティングアウトをしている人の側にいるということは恐ろしい経験かもしれません。無理矢理抑え込もうとするのは、その恐怖心のあらわれであることが少なくありません。廻りのそうした恐怖心が、アクティングアウトをしている側の恐怖心を喚起し、それが破壊的な怒りへとつながって行きがちなのです。
さらに、完全に押さえ込まれてしまったら、今度はその経験が無力感・絶望感の引き金になってしまう場合もあります。なにをやっても無駄であると思ってしまうからです。
(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)
向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)