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役に立つ心理学コラム「「ハラサーは組織を潰す(5)」 」
「ハラサーは組織を潰す(5)」
次に、職場におけるモラルハラスメントの事例を見ていきましょう。
相談しにくいパワハラ・職場内いじめ
職場内におけるモラルハラスメントには、上司から部下への理不尽な精神的攻撃(パワーハラスメント)、及び、職場内の上司や同僚からのいじめがあります。
例えば、以下のような例があります(向後、2009,2010)。
・上司が、会議室に部下を呼び出し、数時間説教する。
・レポート用紙10枚にも及ぶ非難のメールを上司が送ってくる。
・ある日出社したら、自分の机が物置になっていた。
・上司から、『君には能力がない』と、全課員の前で言われた。
・他の課員は忙しく仕事をしているのに、課員のひとりには、ほとんどなにも仕事が割り振られない。
・課員ひとりだけ、忘年会に誘われなかった。
ひとつひとつは、PTSDのように死の恐怖にさらされるようなものではありませんが、こうしたハラスメントに長期間断続的にさらされると、複雑性PTSDをはじめとする深刻な精神的ダメージを受けます。また、そうした精神的なトラブルをかかえるようになっても、社内でだれかに相談することも困難です。パワーハラスメントは、本来職場内のさまざまなトラブルの相談窓口である上司本人からの精神的暴力ですから、直接人事などの相談窓口に相談するしかありません。しかし、へたに相談したら査定にひびくのではないかとの思いもあり、相談することを躊躇する人もいるでしょう。また、パワーハラスメントにしても職場内いじめにしても、職員の誰かを批判することになるわけで、その後の人間関係のさらなる悪化を懸念する心理も働きます。もちろんパワーハラスメントや職場内いじめに対応する相談窓口を設け、守秘義務をきちんと守って対応している組織もありますが、少数と言ってよいでしょう。さらには、精神的に不調をきたしても、心療内科やカウンセリングオフィスに気楽に相談に行くという習慣は、まだまだ日本の社会では根付いていません。そのため、精神的なダメージが相当深刻になるまでなんの対処もしない例が多数見られます。
(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)
向後善之(ハートコンシェルジュ・カウンセラー)