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役に立つ心理学コラム「薬物依存−5・・スピリチュアリティーと依存」

薬物依存−5・・スピリチュアリティーと依存

人間の精神がどの様に発達していくのかについては、宗教や心理学の観点から実にさまざまな理論が提案されています。

アブラハム・マズローというアメリカの心理学者は、自己実現を人間の精神的発達のひとつの到達点としています。

自己実現とは、「個人の才能、能力、潜在性等を十分に開発、利用すること」と定義しています(文献1)。マズローによれば、自己実現に至ると、人は至高体験と呼ばれる非常に高揚し、楽しく、幸せに満ちた体験をするといいます。

さらに、近年トランスパーソナル心理学と呼ばれる心理学の一学派では、個を越えた自己の発達があると考えています。すなわちスピリチュアルな発達です。

彼等によれば、トランスパーソナルな領域にまで到達した場合、自分と世界は繋がっているという強い意識を持ち、その結果、完全で永続的な平穏がおとずれるといいます。この状態は、仏教における悟りの状態とも言えるでしょう。

悟りの状態は、人間の最初の段階での精神状態に似ています。

例えばもし、母親の胎内にいる胎児が言葉をしゃべれたら、「私は宇宙である」と言うかもしれません。彼(彼女)は、自分以外の世界を知りませんから、宇宙と一体であり、完全に安全で、無条件の愛情に囲まれており(たいていの場合は!)、安心感に満ちていると感じているのかもしれません。

悟りの状態と胎児の状態の違いは、悟りの状態に至った人が、自己の感覚を持ちながら世界との一体感を同時に感じる事ができるのに対し、胎児ないし生後6ヶ月くらいまでの幼児は、自己と世界及び他者がごちゃまぜになっているのです。

悟りの状態の事を、ある禅寺のお坊さんがこう言われていました。彼によれば、「悟った状態でもいろいろな考えが浮かんでくるが、それを追いかけなくなる」と言います。つまり、「考え」に捕らわれないから、完全なこころの平安が訪れるのだそうです。
いろいろな考えが浮かんでは消え、浮かんでは消えするのですが、それにとらわれず、じっと眺めている自分がいるといった状態なのでしょう。

トランスパーソナル心理学の理論家であるケン・ウィルバーは、自我が形成される前の幼児までの精神状態を「プレパーソナル(前個)」の状態と呼び、人間の精神発達の最終的な状態(例えば悟りの状態)を「トランスパーソナル(超個)」の状態と呼んでいます(文献2)。

プレパーソナルからトランスパーソナルへ至る道のりは苦難の連続です。
胎児の状態は、完全に幸せな状態です。ところが、その幸せな期間も10ヶ月程で終わり、胎児はむりやり母親の胎内から追い出され、やがて自分は母親とは別の生き物であり、世界とは分離している事を認識する様になります。その分離の中で、人は、幸福感以外に、怒り、悲しみ、絶望等の感情を持つ様になります。

場合によっては、幼児の頃まで受けていた無条件の愛情が条件付きの愛情に変わり、虐待を受け、いじめを受け、他人と比較され、ランク付けされ、時には敗者とみなされるといった経験の中から、自我を形作らなければならない事になるかもしれません。

そして、こうしてできあがった自我は、彼(彼女)が本来持っている欲求や能力を充分に活用できないものになってしまうかもしれません。本来持っている欲求や能力を表に出したら、危険だからです。

まわりの人は「お前にそんな事できるわけないじゃないか!」とか、「なにばかな事を考えているんだ!」等と言うかもしれません。こうして彼(彼女)は、自分の欲求や能力から目をそらして生きていく様になり、ついには、そんな欲求や能力が自分にあった事さえ忘れてしまいます。
その時、彼(彼女)は、「自分はなんのために生きてきたのだろうか?」と悩み始めるかもしれません。人によっては、深刻な鬱状態になって、人生に絶望してしまいます。

しかし、悩み始めるのが、自己実現あるいは、それに引き続くトランスパーソナルな成長への一歩なのです。
悩む事によって、自分の内面から涌き出てくるものに耳を傾け、その結果、ゆがんでしまった自我を、自分が最も自分らしく生きるために、最高の自分を実現するために、修正していく事ができます。長い道のりだし、さまざまな抵抗にあったりして、つらい思いをする事もあるのですが、こうした地道な作業を続ける事によって、やがて自己を受容し、至福と平穏を手に入れる事ができます。

人間は、おそらく、こうした至福と平穏を実現するために生きているのでしょう。それを得るには、長い時間がかかるのかもしれませんが、長い時間かけただけに、得られた至福と平穏は安定した恒久的なものになります。

アルコールやドラッグは、そうした至福と平穏を、ほんの短期間だけですが味あわせてくれます。アルコール等のダウナーズは、自分を非難する自我の働きを弱め、コカイン等のアッパーズは、自我をバイパスして直接的に自分の本来の欲求に接する働きをします。
そして、ある人達は、アルコールやドラッグを継続的に使用する事により、その刹那的な至福や平穏に耽溺し依存するようになってしまいます。

アルコールや薬物への依存は危険です。まず、健康を害し、最終的に命を落とす可能性があります。また、幻覚を伴い、事故を起こす(例えば、気分が高揚し、自分が空を飛べると確信して、ビルから飛び降りたりする等)かもしれないし、多量に服用した結果、ショック死するかもしれません。

さらに、薬やアルコールがきれた場合に抑鬱状態がひどくなり絶望して自殺する事もあります。依存がひどくなれば、社会生活に支障をきたします。会社に行かずに朝からお酒を飲む様になるかもしれません。長期間薬物の服用や飲酒を続けた結果、現実と妄想の区別がつかなくなる事もあります。ひどい時には、妄想が殺人にまで発展します。

また、脳への影響も深刻です。記憶障害等を起こす事になります。

アルコールやドラッグによって得られた至福や平穏の感覚は刹那的で、別の言い方をすれば、自分のものにはなっていないのです。
トラウマ(こころの傷)は相変わらず癒されていないため、薬の切れた状態にもどると、つらい状況はそのままです。そのため、酩酊時の至福や平穏の感覚とのギャップや罪悪感や羞恥心から、絶望はより深いものになります。

精神科医のスタニスラフ・グロフは、「ドラッグやアルコールをほしがることやその他の中毒の背後に、多くの人々の、高次の自己あるいは神を求める渇望が存在する」と言います(文献3)。

しかし、ドラッグやアルコールによって得られた感覚は、「神秘的合一状態の悲しむべき戯画であり、より大きな自己の感覚を求める激しい渇望のにせの満足」なのです(文献3)。

依存からの回復のためには、自分にも自己実現する、あるいは、さらにトランスパーソナルな成長をする能力に気づく事です。
そしてその能力は、だれの中にもあるものなのです。その能力を信じて、真の意味でのスピリチュアリティーを探求する事で、依存から脱出し、やがて安定して恒久的な至福や平穏の感覚を得る事ができると、僕は考えます。

(文献1)「人間性の心理学」、A.マズロー著、産業能率短期大学出版、1971年
(文献2)「アートマンプロジェクト」、K.ウィルバー著、春秋社、1986年
(文献3)「魂の危機を超えて」、S.グロフ著、春秋社、1997年

(向後善之)

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