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今日の心理学用語バックナンバー <う>

ウェクスラー児童用知能検査[WISC, WISC-R](Wechsler Intelligence Scale for Children)
ウェクスラーが成人用に作成した知能検査法を母体として、1949年に発表した児童用の個別式知能検査。対象は5〜15歳。 検査法は、言語性検査と動作性検査から構成され、前者は知識・類似・算数・単語・理解・数唱、後者は絵画完成・絵画配列・積木模様・組み合わせ・符号・迷路の各6下位尺度に分かれている。
ウェクスラー成人知能検査と同様偏差値IQで表され、言語性IQと動作性IQと全検査IQの3種類のIQが算出される。 1966年に3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月を対象とした幼児〜児童用のWPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)が発表され、WISCも1974年にWISC-Rとして改定されて、適用年齢が6〜16歳に変わった。

ウェクスラー成人知能検査[WAIS, WAIS-R](Wechsler Adult Intelligence Scale)
成人用の個別知能検査法。精神発達遅滞児を鑑別するために作成されたビネー法が成人の臨床検査としては不十分であることから、臨床心理学者ウェクスラーが1939年にウェクスラー=ベルヴュー知能検査法を発表、その後欠陥を補修して1955年にウェクスラー成人知能検査と改名した。
彼は知能を「個人が目的的に行動し、合理的に思考し、かつ能率的に自分の環境を処理しうる総合的または総体的能力である」と定義し、知力以外の性格因子を含む新しい知能観に基づいて検査を作成した。検査法は、言語性検査と動作性検査から構成され、前者は知識・理解・算数・類似・数唱・単語、後者は絵画完成・絵画配列・積木模様・組み合わせ・符号の11尺度に分かれ、言語性IQ・動作性IQ・全検査IQの3種類のIQが得られる。
WAISの検査対象は16歳から64歳であったが。WAIS-Rへの改訂後、16歳から74歳にまで検査対象が広がった。

ヴェサニア(Vesanina)
ラテン語のvesanus(欠如を示すveと分別のあるという意味のsanusからなる)に由来し、すでに前1世紀の詩人ホラティウスの作品にこの名詞形が狂気の意味で登場するという。17世紀までは狂気一般の意味で用いられ、1769年にスコットランドのカレンが初めて明確な位置づけをした。
彼は神経性疾患という用語を導入し、これを昏睡・無力性疾患・けいれん性疾患・ヴェサニアの4型に分類し、ヴェサニアは痴呆・夢魔・発熱と昏睡を伴うせん妄からなるとした。また、フランスでカレンの考想を広めたピネルは、ヴェサニアに心気症・夢遊病・恐水症を入れている。
このようにヴェサニアの内容は変化するものの、当時は器質的原因の不明な精神障害を意味していたらしい。独自の疾病分類体系を構築したカールバウムは、抑うつで始まり興奮や錯乱を経て痴呆に至るいわゆる単一精神病をヴェサニアと記載している。今日ではこの言葉は全く用いられない。

迂遠(Circumstantiality)
回りくどいこと。形式的思考障害の1つで、枝葉末節にとらわれて要点をつかめず、長い回り路をしながらやっと結論に到達するような思考過程を指す。思考目標は見失われていないが、そこへ達するまでに長い時間がかかる。精神遅滞や脳器質性の障害には多少とのこの傾向がついてまわるが、典型的には粘着器質者やてんかん病者にみとめられる。

受身的女性的性格(Passive-feminine character)
ライヒがその『性格分析』(1933)のなかで概念づけた性格のタイプ。分析医に対して過度に従順で、過度に友好的で、あまりにも信頼深い良い患者であり、彼らは永久に陽性感情転移のうちに留まり、決して失意反応を示さない。
このタイプの患者は、初めに母を愛し父を憎んでいたが(正常なエディプス状況)、やがて父に対する恐怖の結果母への愛を放棄し、父への憎しみを、父に対する受身的女性的愛情に変換してしまい(陰性のエディプス状況)、この受身的女性的態度によって、父親および無意識的に父を意味する男性に対する不安(去勢不安)を防衛し、適応するようになる。

受身的対象愛(Passive object love)
精神分析学者フィレンツィが用いた用語で、乳児が一方的に母親の愛を求めるという意味で受身的であり、母親という最初の対象との対象関係の中で経験されるという意味で対象愛である。
フィレンツィは、乳児の愛情の発達は受身的対象愛段階、自己変容的段階、環境変容的段階を経ると考えたが、バリントはこの受身的対象愛を、人間の最も原初的な愛情つまり一次的愛情と呼び、最初の原初的対象関係は、受身的で愛されたいという欲望を基本とするが、現実によるその挫折によって一次的愛情は一つの迂回路として自体愛ないし自己愛に向かうといい、自己愛から自体愛へのいうフロイトの自己愛理論を批判した。
また一次的愛情のもう一つの迂路が、能動的対象愛である。しかしアリス・バリントは、一次的愛情は実は著しく能動的・太古的・自己中心的で現実感を欠き、対象(母親)の利害を無視して対象にすがりつく素朴な自己中心主義を特質とする点で、「受身的」対象愛という用語は不適切であるという。

打ち消し(Undoing)
すでになされた行為や意識された考えに伴う特定の情動を、正反対の情動的意味をもつ行為や考えによって打ち消そうとする"つぐない"と"やりなおし"の心的機制のこと。「やり直し」「復元」とも訳される。 この打ち消される行為や考えは、つねに超自我の批判を受け、罪悪感や恥の感情を引き起こすような情動を伴うのが常である。フロイトはこの機制を強迫神経症患者について観察し、自我の防衛機制の1つにみなした。具体的には、
1.一定の欲動に発する一定の情動を伴う行為を実際に行い、その正反対の欲動に発し、正反対の情動を伴う行為によってそれを打ち消そうとする場合。(例:相手を非難した後で、しきりに相手をほめたり機嫌をとる)
2.実際にその行為を行わなくても、空想や想像の中でその行為を欲求したりそれに関する感情を起こしたりした場合、実際の行為としては、その正反対の打ち消し行為だけを試みる。客観的には、反動形成と区別がつきにくい。(例:心の中で相手に憎しみを感じ、それを打ち消すために実際の行為としては過度に親切な態度をとる)
3.一定の感情を伴う行為をした後で、その感情を隔離して同じ行為をやり返すことによって、最初の行為に伴っていた欲求や感情を打ち消そうとする。この場合、打ち消しは合理付けと結びつく。(例:最初は覗き見をしようとしてドアを開けた人がすぐその後で、もっともな理由を思い出して、再びその部屋に入ってゆく)
4.最初の行為の欲求や感情を打ち消すというより、むしろそれらの欲求や感情に対する超自我の批判による罪悪感を解消するために打ち消し行為を試みる。(例:宗教的な戒律に反した行為を行ったり考えを抱いたりした後で、それを償う祈り、自罰的行為をくり返す)
打ち消しは魔術的全能感に根ざしており、呪い・祈り・儀式などの形をとる場合がある。また強迫手洗いはしばしば打ち消し行為の実例としてあげられる。また打ち消しが、個々の行動や考えについて生ずる心的機制であるのに対して、反動形成ではその人物の全体的態度が無意識の欲動に対してそれと正反対な形をとる点で両者は区別されるが、後者が不全または未発達な状態では前者が活発化する場合が多い。

内田=クレペリン精神作業検査法(Uchida-Kraepelinscher Rechentest)
心的な作業能力検査の1つ。一桁の連続加算作業を15分作業-5分休憩-10分作業という形式で行わせ、その1分ごとの時間経過によって起こる作業の消長を作業曲線に表し、その作業量と曲線の質的分析からその個人の作業素質、さらに人格の器質的力動的基底を診断しようとする検査法。判定は曲線の量と質の組み合わせの25通りにわたってなされる。 なお本検査は「仕事のしぶり」を通してその個人の知的能力、性格を診断するという本来の性格上、産業方面、特に労働科学の面で最も多く採用されている。

うつ[鬱]状態(Depressive state)
抑うつ症候群の総体と正常範囲の抑うつ、いわゆる基底抑うつや背景抑うつも含む広い概念。躁状態と並んで感情面だけでなく他の領域の症状も関係する。 (1)精神領域:悲哀、喜べないこと。思考制止、決断不能、無欲、不安、内的空虚、無価値観、絶望、何事も暗く考えてしまう傾向、全体感情妄想、自殺念慮、気分の日内変動。 (2)精神運動領域:抑うつ的欲動障害、陽性症状としては焦燥、陰性症状としては制止。 (3)身体領域:生気感情の障害とあらゆる自覚的他覚的自律神経症状。
これらの各領域の症状は症例によりさまざまな組み合わせと強度で現れるので実際の状態像もさまざまであり、ひとくちにうつ状態と言っても現象学的に単一同種でなく、病因についてもそうである。うつ状態は内因性うつ病に典型的に現れるが、心因性にも身体病の随伴症状としても現れる。

うっ[鬱]積不安(説)(Stasis anxiety)
フロイトの初期の不安理論。うっ積不安とは、解放・充足を妨げられてうっ積したリビドー興奮とその緊張によって生ずる不安のことである。フロイトは、不安神経症のような現実神経症の場合には、現実的なリビドー解放の挫折に伴うフラストレーションが、不安ヒステリーや強迫神経症のような精神神経症の場合には、心理的な抑圧の結果発生したリビドーうっ積が、それぞれ不安に変形されると考えたのである。
フロイト自身はこのうっ積不安説を修正し不安信号説を発展させたが、うっ積不安は外傷的状況で生ずるものとしては、依然としてその意義を認められ、自動性不安、ひいても不安の原型(例えば出産外傷説)の形に位置づけられており、自動性不安が信号不安へと転化する際にもなお一定の少量のうっ積したリビドーがその基礎になっている、と考えられる。

うつ[鬱]病(Depression, Melancholia)
古代からメランコリーの名で知られている状態。症状としては、(1)精神症状:悲哀的気分失調、思考制止、決断不能、無力、不安、内的空虚、無価値観、絶望、全体感情妄想、自殺念慮 (2)精神運動症状:抑うつ的欲動障害。陽性症状としては焦燥、陰性症状としては制止。 (3)身体症状:生気的感情の障害とあらゆる自覚的他覚的自律神経症状。これらの各領域の症状はさまざまな組み合わせと強度で現れるので、実際の状態像もさまざまである。うつ病の概念を一言で言い表す症状はない。
病因として良く挙げられる分類は、(1)身体因性うつ病:身体疾患(脳動脈硬化症・進行性麻痺・感染症など)との因果関係がはっきりしており、器質的過程の直接の結果として起こってくるうつ病。(2)内因性うつ病:古代からメランコリーとして記載が豊富にある、うつ病の古典型。症状は早朝覚醒と朝の気分の悪さを伴う典型的な日内変動、全体感情妄想(貧困・心気・罪業など)、原発性罪業感、特有の圧迫感を伴う生気的悲哀、動機のない抑うつ的気分失調など。治療には抗うつ剤が有効である。(3)広義の心因性うつ病:抑うつ状態が心的契機から生じたことが了解できるもの。
一般に経過の長短から予後や疾病学的分類について確実なことは言えず、遺伝や脳内アミン説など、身体的側面もまだ仮説の段階である。

運動幻覚(Motor (kin(a)estic) hallucination)
身体の一部や全体の運動感覚に関する幻覚で、実際とは裏腹に当人は手や足が動いている、自分の体が空中を遊泳しているなどと感じる。統合失調症や感覚遮断、せん妄状態、入眠時などに生じる。長く自動車に乗ったりした後などに、なお体が引き続き同じように動いていると感じる体験も、運動幻覚に入る。

運動心迫(Motor unrest, displacement impulse)
欲動の亢進によって生じる目的のない過活動のことで、緊張病性の精神運動興奮状態でみられることが多い。患者は絶えず行動するが、個々の動作には意味や目的がなく、全体としても統一性や一貫性を欠く。
一般的には不安緊迫感の表現と理解されるが、行動そのものの意味はまったく了解不能である。なお日本では、意味や目的が明確でまとまった行為を際限なく続ける作業心迫や、注意の転導性の亢進により行為の目的がめまぐるしく変わる行為心迫と区別されるが、欧米圏ではこれらをほとんど区別していない。

運動暴発(Outburst of movement)
急激に現れる衝動的で無統制な過剰な運動を指すクレッチマーの用語。無計画な攻撃運動ないしは逃避運動よりなる。動物が突然危険な状況に置かれた時の行動と類似なものと考えることができ、高等な精神機能が作動しないために、系統発作的に古い行動様式が働くことによると説明されている。パニックの際や、緊張病性興奮ないしはてんかん性興奮の場合にみられる。

運命分析(Fate analysis)
チューリヒの精神科医ソンディによる人間学的深層心理学説(運命心理学)。この学説によると、人間は遺伝的・家族的無意識(必然運命)の種々の可能性の中から、その個人と社会にとって最も幸福な実存可能性を選択し、対立を弁証法的に解消し超越する個人的自我(自由な選択運命)の担い手である。そして人間は「恋愛・友情・職業・疾病・死」の対象や様式の選択において祖先の失敗を強迫的に反復せず、遺伝的・生物的条件の基盤の上に、自由な発展可能性を展開する道を進む存在であると考えられる。
運命は(1)必然運命(遺伝素質・衝動性質・社会環境) (2)自由な選択運命(自我・魂) (3)精神的・知的・世界観的環境((1)と(2)が交錯する)に分けられるが、固定的なものではなく、矛盾・対立を解消されるべき可能性の束としてみなされる。
運命心理学は(1)家族的無意識と運命可能性の選択理論 (2)精神分析的衝動病理学説 (3)宗教的・実存的自我心理学 を含むものであって、単に過去や現在の分析だけではなく、未来の実存可能性を志向する価値観的方向づけをもった信仰機能の自我分析を重視する。
臨床的には、(1)家族歴(家系樹)を詳細に検討して家族的無意識を解明し、(2)ソンディテストにより無意識の衝動と自我の状態を診断し、(3)標準的精神分析療法を経たうえで運命分析療法を行い、衝撃的・実感的に家族的無意識を自覚させて、本来その人のあるべき姿を実現させることを目指している。

※出典:新版精神医学事典(弘文堂)

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