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今日の心理学用語バックナンバー <い>

言いまちがい (Slip of tongue)
フロイトによって明らかにされた失錯行為の一種。書きちがい、読みちがい、ど忘れなどとともに、ある1つの意図が、それに対立する無意識的な意向や願望によって妨害される結果、姿を変えて現れるものである。心の内部で葛藤し合っている2つの意向の、無意識的な妥協形成の所産ともいえる。人間がふともらす言い間違いにもすべて意味があり、その意味を探ることによって隠れた無意識的心理を知ることができると言われる。
(例:早く帰宅したいと思っている会議の議長が、開会を宣言すべき時に、ついうっかり「ただ今から"閉会"します」と言ってしまう)

域外幻覚 (Extracampine hallucination)
通常の感覚範囲を超える幻覚を指すブロイラーの概念。自分の背後に人が見える幻視、外国にいる人の声が聞こえる幻聴などが含まれる。

移行対象 (Transitional object)
赤ん坊の最初の"自分でない"所有物で、内的体験と外的世界との間を"橋渡し"する対象。英国の精神分析家ウィニコットが精神分析的発達理論の中に位置づけた。
移行対象は赤ん坊自身に所有されながら外界に所属するモノであり、その位置は内のものとも外のものとも割り切ることができない。このため赤ん坊はこの対象を介して自分のものであるという錯覚と自分のものではないという脱錯覚を体験して、主観と客観を動揺させながら現実検討の糸口とすることになる。 具体的には、生後半年から一年にかけての赤ん坊がオムツや特定の毛布を自分のものとして所有するときの対象として観察される。

意識狭縮 (Narrowing of consciousness)
意識の広がりの障害で、意識障害の主要な病像の1つ。典型的には心因性にみられる。
(1)心因性:強い情動体験があると意識はその対象のみに絞られ、また逆にその対象を意識にのぼらせるのが耐え難いと意識野はその対象を避けるように狭まる。意識野の恐縮が高度な場合は催眠状態やヒステリー状態、さらに意識の統合性が失われると、せん妄などの意識変容に移行する。心因性では意識混濁の要素がないために、脳波的な変化がほとんどないのが特徴であり、心理的な力動に基づく意識変化であることを示している。
(2)身体因性:意識狭縮は意識変容の形で意識混濁と厳格などの脳の刺激症状を伴って、せん妄、もうろう状態、幻覚症、幻覚妄想状態などのさまざまな形を示す。

意識混濁 (Clouding of consciousness)
意識の清明性の障害で、意識障害の1つ。応答が不活発で茫然としてみえる程度の軽度の清明性の障害から、まったく応答がなく、強い痛覚刺激にも反応しない高度の清明性の障害までがある。
軽いほうから、明識困難⇒昏蒙⇒傾眠⇒嗜眠⇒昏眠⇒昏睡と分けられることが多い。

意識障害 (Disturbance of consciousness)
知覚・注意・認知・思考・判断・記憶などすべての精神活動の一過性ないし持続的の障害を指す。それは複雑な知性や論理的思考などの高次の精神活動の障害だけでなく、自分はどのような場面にいて誰なのかといった外界と自己についての知覚・認知・注意という提示のいわば精神機能の基礎的な障害を意味する。
意識の清明性が障害されたものが意識混濁、広がりが障害されたものが意識狭縮、清明性の障害がある上に、幻覚や夢幻様体験など、通常はみることのない舞台裏や舞台のそでしかみえないものが意識変容である。エー(H. Ey)によると、意識は1つの高次より低次にわたる階層づけられた構造で、この秩序ある活動が意識の清明性である。この構造は意識の統御機構でもあるが、上部構造が解体されると下部構造が露呈して、夢体験に似た妄想や妄想の出現を許し、秩序も損なわれて意識障害が現れるとする。

意識性 (Awareness)
我々がものを考える場合、それぞれの観念に相応した心像や直感的(感覚的)要素がその都度意識内に現れるのが普通であるが、一貫して文章を読んでいる時やある刺激に反応した直後の意識などでは、必ずしもそうではなく、心像や直感的要素の媒介なしに複雑な内容が一挙に与えられる。
(例:「鐘」という語を読めば即座にその意味を知るが、その際鐘を表象として思い浮かべたり、耳で鐘の音を聞いたり、皮膚で冷たい金属を感じているわけではない。)
これが無心像思考または非直感的思考で、その場合の意識状態をアッハ(N.Ach)は意識性と呼んだ。
その異常としては、実体的意識性などの現象が知られている。

意識変容 (Pathological dream states)
意識混濁を背景に、不安や緊張、夢幻状態や幻覚、運動不安などの精神的な刺激症状を示し、意識野も狭縮する。意識混濁は軽いことが多いが、狭縮や刺激症状の程度は軽度のものから高度のものがあり、せん妄・もうろう・夢幻などのさまざまな状態を生ずる。
心因反応では意識混濁の要素を伴わないが、もうろう・遁走・夢幻・せん妄などに良く似た状態が見られる。これらの同様に意識変容とされるが、状況によってかなり適切な言動が見られ、健忘も催眠操作によりある程度想起させうるなどの特徴がある。その心理的な機序については、強い情動体験により意識の統合性が一時的に失われるためと考えられている。

意志欠如 (Abulia)
人間の精神活動を知性・感情・意志の3領域に区分した場合、意志の機能の障害を指す言葉。
ここでいう意志とは、願望・欲求・欲望などの動機に発して、意識された目標設定に対して、個人の行動・態度などを決定することである。したがって、意志欠如は意志決定の不能といいかえてもよい。意志の障害は古くから、意志亢進・意志薄弱・意志欠如または無為などに分類される。19世紀末頃から、意志欠如は主として精神病質人格者の自主性の欠陥を示す言葉として用い、無為を統合失調症の意欲障害に用い、後者の程度の軽いものを意志低下と呼ぶようになった。

いじめ (Bullying)
集団状況における人間関係の葛藤の一様態で、優位に立つ一方が他方に対して意識的に精神的・身体的苦痛を与えること。いじめ自体は、昔から子供の間では日常的に存在し、また継子いじめ・嫁いびり・村八分などの言葉もあるように、家庭内や地域社会、あるいは職場など、いろいろな場面で存在してきた。
わが国では1980年台頃から、子供が学校でのいじめを苦に自殺したり、いじめの仕返しにいじめっ子を殺害するなどの事件が発生するに及んで、学校教育上の深刻な問題としてとらえられるようになった。現代の学校におけるいじめは、単にいじめっ子(加害者)といじめられっ子(被害者)の相互関係によるものではなく、これにいじめを面白がってはやし立てる者(観衆)と、見てみぬふりをする者(傍観者)を加え、四者が密接に関わりあって影響しあう集団の病理として捉えるべきである。
また「いじめられ体験」から登校拒否・不安・恐怖・強迫状態・心身症・家庭内暴力・幻覚・妄想・自殺などの精神障害が誘発され、中にはいじめがなくなっても長期間にわたってその症状に悩まされ続ける者もいる。

異常心理学 (Abnormal psychology)
異常な心理現象について一般的概念や法則を見いだす科学。この領域は心理学の一部門として、また精神医学や精神病理学として研究されている。
異常心理学の範囲は異常な心的現象すべてに及ぶもので、すなわち正常人の例外的な心理状態(夢や催眠など)や、異常人格・神経症・内因性精神病(統合失調症・躁うつ病)・身体的基礎を持つ精神障害などにみられる心理が対象とされる。

異常性格 (Character disorder)
人格異常・人格障害・精神病質・変質者・変わり者・精神不均衡などというのとほぼ同様の言葉で、パーソナリティ(人となり)の偏りや異常のこと。人格が普通の人と大いに変わっていること。英語圏では、異常性格に代わって人格障害・人格異常などが使われることが多くなった。
精神遅滞・痴呆などの知的障害による異常や、性的倒錯・摂食障害などの欲動にもとづく行動異常、また統合失調症・躁うつ病などによる性格変化や心因反応などにおける一時的・例外的な行動の異常は異常性格とは言わない。 すなわち、性格異常における行動・反応傾向・反応準備性・反応強度・思考と態度・気分などの異常は、その個人にとって特有で持続的・恒常的なものを指すものである。

異食 (Pica)
平素口にしないもの、あるいは食物とはみなされないもの(例えばチョーク・鉛筆・粘土・砂・ごみ・毛髪など)に対する摂食欲あるいは摂食行動のこと。
picaはラテン語でカササギ(カササギは何でも食べる鳥として知られている)の意。本来は、妊婦にみられる如上の食欲倒錯に限ってpicaと称した。
精神医学の領域では、精神遅滞児・周囲から全くかまわれない乳幼児・神経性無食欲症・ヒステリー者・統合失調症者・脳器質性痴呆者に異食がみられることがある。乳幼児は手に触れるものは全て口に持っていく傾向があるが、妊婦や精神障害者にみられる異食傾向は、そのような段階への退行現象と解釈されることが多い。

依存性パーソナリティ障害 (Dependent personality disorder)
自分に自身がもてないために、自分の気持ちを抑えてまでも他の人に従い、過度に人に頼ってしまうことを特徴とするパーソナリティ障害。歴史的には「口唇性性格」や「従属性格」にその起源をもつとされている。本章外の特徴的パターンは、依存対象からの分離を契機として顕在化することが多く、特に女性に多く見られるとされている。DSM-IVによると、以下のうち5項目以上を満たすとされる:
(1)日常のことを決めるにも、他の人達からのありあまるほどの助言と保障がなければできない 
(2)自分の生活のほとんどの主要な領域で、他人に責任をとってもらうことを必要とする 
(3)支持または是認を失うことを恐れるために、他人の意見に反対を表明することが困難である 
(4)自分自身の考えで計画を始めたり、または物事を行うことが困難である(動機または気力が欠如しているというより、むしろ判断または能力に自信がないためである)
(5)他人からの愛育および支持を得るために、不快なことまで自分から進んでするほどやりすぎてしまう 
(6)自分の面倒をみることができないという誇張された恐怖のために、1人になると不安、または無力感を感じる 
(7)1つの親密な関係が終わったときに、自分を世話し支えてくれる基になる別の関係を必死で求める 
(8)自分が1人残されて、自分で自分の面倒をみることになるという恐怖に、非現実的なまでにとらわれる

依託抑うつ (Anaclitic depression)
ボウルビーの母性的養育の剥奪の研究に先立ち、スピッツが行った乳児の母親からの長期分離の研究では次のような知見が得られた。生後約6ヶ月間母親との良い関係を体験した乳児が、生後6〜8ヶ月頃突然母親と分離し、代理母のいない状態におかれると、次第に泣き虫になり閉じこもり、目をそらし無表情になる。 約2〜3ヶ月後には体重が減り感染しやすくなり、発達指数が低下し、泣こうともせずに周囲に無気力無反応となる。このうつ病様の状態をスピッツは依託抑うつと呼んだ。
母親からの対象喪失に対する心身の病的反応であり、クラインの抑うつポジションともボウルビーの対象喪失の悲嘆とも区別される。約3〜5ヶ月以内に母親と再会すれば速やかに回復するが、それ以後は施設症と呼ばれる非可逆性の発達障害に陥り、マラスムス(消耗症)や死に至る場合もある。

いたみ (Pain)
生理的な現象であるが、その面だけにとどまらず、本質的に周囲の人に向かって発せられる、助けを求めることを中心とした情報伝達機能の側面を持つ。
例えば、嬰児と母親との関係に成り立つ初期段階のいたみは「甘い喜び」への期待であり、小児時代のそれは「罪と罰」の関連で罪悪感や、また敵意のコントロールと結びつき、後年さらには離別の悲しみと心痛への関係へと発達していく。このような情報伝達的側面の強調されたいたみが心因性のいたみと言える。いたみに関連した障害としては、DSM-IVには疼痛性障害などがある。

一次過程 (Primary process)
フロイトが夢事象の心理学的解明を試みることによって明らかにした、精神装置の機能様式の一つ。その基本的な特徴は、可動性の心的エネルギーの直接放散による緊張解放だけを目指す傾向(主観的側面からは快楽原則)と、放散が妨げられた場合、比較的容易に代理の放散対象や方法が使われることである。
一次過程思考は、本能衝動に密接した原始的・不合理的な思考であり、矛盾が並存し、条件や限定接続詞がなく時間観念もない。そして、置き換え・圧縮・象徴的表現が頻用される。この過程は、無意識・エスの心的活動・ある種の自我過程(自我の支配下における自我のための一時的・部分的退行)にみられる。
発達的には、乳児の心的過程の特徴であり、発達につれて現実原則に従う二次過程が優勢となり、一次過程はその深層にあって活動を続け、夢の仕事や神経症の症状形成の過程に現れる。

一次妄想 (Primary delusion)
直接的・自生的に発生する妄想。真正妄想ともいう。この妄想は心理学的にそれ以上さかのぼりえない、現象学的に究極的なものであるから、その発生を了解することはできない。
一次妄想はこの点で、幻聴やさせられ体験などの症状を説明するために生じた妄想や病的な感情状態から生じた妄想、つまり他の心的なものから導出しうる二次妄想ないし妄想様観念からは区別され、病的過程そのものから発生すると考えられる。一次妄想は統合失調症に特徴的である。
ヤスパースによれば、一次妄想体験は意味意識の根本的変化であり、次のように分けられる。(1)妄想気分:周囲がなんとなく意味ありげで不気味だと感じられるもの。 (2)妄想知覚:正常な知覚に特別な意味がつけられるもの。 (3)妄想表象:心の中に記憶や過去のことが新しい意味を持って現れる妄想追想と、突然ありえない考えを思いつく妄想着想とに分けられる。 (4)妄想覚性:とほうもない世の中の事件を知っているが、それを感覚的・具体的には少しも知っていないというもの。シュナイダーは妄想表象と妄想覚性をまとめて妄想着想としている。
一般的に一次妄想と言えば、妄想知覚と妄想着想、あるいはこれに加えて妄想気分を指している。なお一次妄想の了解不能性は異論もあり、また妄想の一次性と二次性の区別も実際の症例では困難な場合がある。

一次予防 (Primary prevention)
キャプランは『予防精神医学の原理』の中で、精神保健における一次予防の可能性を取り上げ、ボウルビーの分離不安を中心に乳幼児期の一次予防の可能性を主張した。一次予防、すなわち発生予防の考えは、典型的には急性伝染病に関して、病原菌やウイルスを発見し、免疫血清をつくり、病原自体を消滅させることであるが、精神障害に関しても急性伝染病による症状精神病は原疾患の減少とともに減り、途上国に問題が残されている。
慢性伝染病である梅毒による進行麻痺は抗生物質の進歩と普及によって稀な精神疾患となったが、アルコール精神障害・薬物精神障害・外傷性精神障害のように、外因が明らかでも法的規制によってアルコール・薬物・外傷などを減少させる一次予防が、必ずしも功を奏していないものもある。
精神障害の多くは遺伝因を含めて一次予防は困難であり、母子分離や同一性危機の防止を含め、有効な方法が見出せないでいる。一次予防・発生予防によって発生率の減少を目指すことが予防精神医学の目標ではあるが、精神障害の大部分に関する限り、二次予防・早期発見と早期治療による有病率の減少が当面の課題である。しかし精神障害の多くについては、維持薬による予防が行われ、服薬管理やデポ剤使用が挙げられるに留まり、多くは三次予防としてのリハビリテーション活動、とくに地域ケアの一環として、デイケア・作業所・宿泊提供・自助グループ・訪問指導などが行われているのが現状である。

胃腸神経症 (Gastrointestinal neurosis)
一般には、消化器領域に現れる神経症ないし消化器系の機能障害を総称する言葉として用いられる。
具体的には、不安神経症・転換ヒステリー・心気神経症・抑うつ神経症など、本来の神経症で胃腸症状を呈するもののほか、心因性嘔吐・反すう・過敏性腸症候群・胆道ジスキネジア・呑気症・非潰瘍性消化不良など、特定の器官に固定化して持続的に機能障害を呈する、いわゆる器官神経症や機能性障害としての心身症をも含めた広い疾病概念として用いられることが多い。

一過性全健忘 (Transient global amnesia)
一過性の健忘症候群で、フィッシャーとアダムスの命名による。50〜70歳に好発し、突然に高度の記銘障害と逆向健忘(数週〜数年さかのぼる)の発作を生じ、困惑して同じ質問を反復し、教えてもすぐに忘れるが、昔の記憶や数字復唱能力は保たれており、運動・知覚障害はないような状態が3〜10時間ぐらい続き、多くは入眠し覚醒後に回復する。発作から回復後は発作期間についての全健忘と逆向健忘(数分〜数時間さかのぼる)を残す。再発は少ない。
原因としては海馬領域の一過性脳虚血発作が有力である。誘引には高温・低温のシャワーや風呂、性交、自動車運転および種々のストレスがありうる。類似の症状や経過を示す多数の症例が報告されており、片頭痛やてんかん、ベンゾジアゼピン系抗不安薬過剰服用、脳腫瘍、頭部外傷などに伴い同様の症状がみられる。

一級症状 (First rank symtoms)
シュナイダーが統合失調症の診断に際して特に重視されてよいものとしてあげた一連の症状。
考想化声・問答形式の幻声・自己の行為に随伴して口出しする形の幻声・身体への影響体験・考想奪取やその他の思考領域での影響体験・考想伝播・妄想知覚・感情や衝動や意志の領域に現れるその他の作為・影響体験。これらの症状がまぎれもない形で見いだされ、かつ身体的基礎疾患が何も発見できない時、臨床的にわれわれは控えめに統合失調症診断しうる、というのがシュナイダーの主張である。
なお、彼は統合失調症にしばしば見られるものの、一級症状ほどに診断的ウェイトのない症状として、その他の幻覚・妄想着想・困惑症・抑うつと爽快気分・感情欠如の体験その他をあげ、これを二級症状と呼んだ。

一孔仮説 (Cloaca theory)
フロイトがその幼児性欲論で明らかにした幼児の性理論の1つで、まだ女性器(膣)と肛門の区別がつかぬ幼児が、女性はただ1つの膣口しかもたず、それを通して排便も性交・出産も行われる、という空想から成り立っている。 「人間は、何かある特定の物を食べると子供ができる―おとぎ話にみられるように―のであって、子供は、糞便と同様に腸を通って生まれる、というのである。このような出産についての幼児のもつ理論には、動物界の機構、とくに哺乳動物以下の類の汚管を思わせるものがある」(フロイト『性に関する3つの論文』」

逸脱行動 (Deviant behavior)
社会学とくに社会病理学の重要な概念で、社会集団の規範や規則に一致せず、集団からの排除・非難・罰などの制裁を招く行動であり、同調行動と対をなす。 平均から偏倚するばかりではなく、集団の期待に反し、是認されない行動であるという点で、個人と集団との社会的相互作用が意味を持つ。非行・犯罪、アルコール・薬物乱用、自殺、売春、浮浪などが代表的なものである。

一般感情 (General feeling)
身体での状態的な感覚に伴って生じる、快・不快など身体全体で感ずる感情。精神生活の背景としての気分にも関係し、消化・呼吸・循環・内分泌など身体諸機能の状態が投影されて起こる感情ともいえる。身体感情や生命感情はほぼ同義に用いられる。
シュナイダーは循環病、とくにうつ病における身体感情の障害を重視した。統合失調症でも感情の荒廃が身体感情に起こると痛み・空腹・疲労感がなくなる。

一般健康調査質問紙法 [GHQ] (General Health Questionnaire)
精神症状・神経症症状の把握を目的とした自己記述式質問紙法のテスト。英国のゴールドバーグが神経症症状を持っている非器質性・非精神病性精神障害のスクリーニングテストとして開発したものである。
GHQは神経症の疫学研究のスクリーニングを目的としたので、器質性精神障害(痴呆・精神遅滞など)や機能性精神病はその対象外であったが、GHQの研究を進めているうち機能性精神病の一部も含まれることがわかった。 神経症・うつ病・失調感情障害・統合失調症の急性期にみられる精神症状・神経症症状の把握・評価に適切なテストである。
GHQは60項目の設問からなり、各設問には4つの選択肢があり、1つを選ぶ。選択肢には0点または1点と評価し合計して総合点とする。日本人を対象とした場合の区分点は16/17店でその感度は87%である。30項目GHQもある。 精神疾患のスクリーニングだけでなく、臨床的には病状・重症度を数量化しその推移を評価することにも使われる。

一般システム理論 (General systems theory)
ベルタランフィーによって1945年に定義されて以来、社会科学・自然科学・精神医学に応用されてきた理論。本理論は人間・集団・社会の活動を研究しようとする包括的な理論的枠組みだという意味で、精神分析理論とともに米国精神医学における2つの基本的準拠枠として位置づけられている。
システムは<相互に作用しあう要素の集合>と定義されるので、物質・社会・人間・諸科学などすべてシステムと考えられる。この理論は、どんなに異なった分野にも構造上の同一性があり、要素間の相互作用も同じ法則に従っているという<同形性>の認識によっている。
ゲシュタルト心理学は本理論の予見的仕事と位置づけられており、またピアジェの発生的認識論やメニンガーの精神病理学、あるいは特に現代の米国における精神病論や総合的なパーソナリティ研究にシステムアプローチが導入されている。また精神科入院治療・地域精神医療・集団療法・家族療法・受診-診断-治療-社会復帰といった治療過程の考察と実行に広範囲に活用されている。

イディオ・サヴァン (Idiot savant)
全体としては明らかに知的発達が障害されている精神遅滞でありながら、ある限られた面で優れた特殊才能を示すものが時に見出され、イディオ・サヴァン、天才白痴と呼ばれている。通常はその才能が一般水準に照らしても卓越しているものをいうが、個人の発達の中で際立って優れているという現れ方を含める場合もある。
特殊才能としては、記憶力や計算力、絵画や音楽等の才能が多く指摘され、時にはチェス、将棋などに秀でているものもある。ただ記憶力といっても人名・住所・生年月日あるいはカレンダーや地図についての機械的記憶であることが多く、絵画や音楽でも細かい模写や忠実な演奏などに限られ、創造性に乏しい場合が多い。
近年これらの例について自閉症との関連が議論されている。確かに自閉症でも同様な才能を示すことがあり、男子に多いことも共通している。ただすべての例で人間関係の障害といった自閉症症状が見出されるとは限らない。個人内の差異を取り上げる際には、特異的発達障害との関連も問題となる。

イド (Id:ラテン語)
フロイトによって用いられた精神分析の基本概念で、人間が生得的に備えた本能的欲動に由来する心的エネルギーのこと。エス(Es:ドイツ語)とも言う。
ニーチェが人間の中の非人間的なもの、自然必然的なものについて文法上の非人称の表現"エス(Es)"を用いたのにしたがって、無意識的な本能的欲動をエスと名づけた。英語のitを意味する。
エスは系統発生的に与えられた本能エネルギー(攻撃的・リビドー的)の貯蔵庫であり、快感原則だけに従い、無意識的であり、現実原則を無視し、直接的または間接的な方法(症状形成や昇華)によって満足を求める。それは論理性を欠き、時間をもたず、社会的価値を無視する。したがって我々はエスを自我機構を介してしか体験することができない。
またフロイトは、このエスの内容を初め自己保存本能と性本能、次いでエロス(性の本能)とタナトス(死の本能)に分類したが、精神内界においてエスは、つねに現実の拒否-不安と超自我の批判-罪悪感、これらの不安にもとづく自我の防衛機制の働きによってその意識化を阻止されている部分と、これらの拒否-不安との内的葛藤を伴うことなしに充足-解放または昇華される部分とに分かれる。

遺尿 (Enuresis)
小児期に多い、昼間や夜間に尿をもらすこと。今日基本的には、その子の素因にもとづく膀胱機能に限定された発達の遅れないしは偏りとみなされている。本人と親の不安や自信喪失を招き、二次的葛藤を生じ親子の生活全体に悪影響を与える。
生物学的素因・家族的素因・家庭環境・社会文化的環境などの複数の要因が絡み合っているが、基盤には家族性素因と小児の体質が強く、生活上の心理的ストレスは症状の悪化に関与する。
尿量が機能的膀胱容量に達し尿意が生じる時、上位中枢のコントロールが未熟なため昼間はおもらし、夜はおねしょとなることを親子同席にてよく説明し、親には、起こさず、あせらず、怒らず、という指導原則を伝え、不要な親子の葛藤を防ぐ。 このカウンセリングに加え、三環系抗うつ剤(イミプラミン、アミトリプチリン)、ブザーマットの使用などを併用する。糖尿病、尿崩症、てんかんなどの身体疾患を除外する。

犬神つき (Cynanthropy)
文化結合症候群である憑依現象の一種で、西日本とくに四国地方にみられた。犬神筋または犬神持と呼ばれる特定の家系の人が、そうでない家系の人に対して、犬神という小動物を駆使して影響や害を与えると信じられる。
憑かれた人の主症状は急激な人格転換であり、継時的二重人格を呈する。第二人格の状態では、憑いたとされる犬神筋の人とそっくりの振るまいをするのが特徴で、周囲の人々とのあいだで感応を生じる。数時間ないし3〜4日間健忘を残して完全に回復する。
山村の閉鎖的な人間関係が背景にあり、犬神筋の家系の人との争い、慢性葛藤などの心因が発病契機となる。西欧でのcynanthropy, Kynanthropieは犬(Kynos)に変身する化身妄想であり、破瓜型統合失調症で稀にみられたり、神罰によって犬に変身させられるという、うつ病性妄想として現れる。

いのちの電話
1971年10月1日に東京で設立された日本最初の組織的な電話相談機関で、その後全国の主要都市に設置され、北海道から沖縄までゆきわたっている。活動の特徴は、あらゆる悩み事の相談に応じ、匿名性を重んじ、1日24時間・年中無休を原則としている。1年ないし2年間の訓練を受け、認定を受けた電話相談員が対応する。
東京いのちの電話:(03)3264-4343、千葉 いのちの電話:(043)227-3900、埼玉 いのちの電話:(048)645-4343、横浜 いのちの電話:(045)335-4343など

EPPS (Edwards Personal Preference Schedule)
エドワーズによって考案された性格検査。誰もが持っている欲求の強弱を多角的に測定し、その人物の性格の理解に役立てることを目的としている。
この検査で測定される欲求は:(1)達成 (2)追従 (3)秩序 (4)顕示 (5)自律 (6)親和 (7)他者認識 (8)求護 (9)支配 (10)内罰 (11)養護 (12)変化 (13)持久 (14)異性愛 (15)攻撃。
これら15の欲求のそれぞれについて強弱を測定し、欲求の弱い者から順に並べて100人中の何番目にあたるかを示し、それによって当該人物の性格の全体像がとらえられる。この検査では、15の欲求の強弱は示されるが、神経質やヒステリー傾向あるいは抑うつ傾向などと表現される性格像は示されない。

イマーゴ (Imago)
ラテン語で、昆虫が変態をとげて精緻な成虫となった最終段階の意。ユングが1911年に『リビドーの変型とその象徴』で、他人が他者と関係する時に、その関係性の質を方向づけするような無意識的な人物の元型の概念として用いた。
対象関係論によれば、イマーゴは母親(対象としての母親 object mother、および環境としての母親 environment mother)からの関係性のありようによって意味を付与された心的な対象表象の原型である。この原型は、人生最早期の幼児の内的世界における、投影ととり入れなどの機制によって、混沌から個としての統合へ向かう過程において認められる。 その存続時間と回復力は、母親からの供給と、幼児の成熟の度合・防衛機制の様態にかかっており、後のさまざまな対象像の形成に関与することになる。すなわち、イマーゴは、イメージを呼び、象徴を生み、創造性の原点となるものである。

意味記憶 (Semantic memory)
言語・記号・概念などの、普遍的・客観的・体系的な記憶のこと。例えば「努力」の意味とか、物の名前などの知識の記憶であり、反復によって得られるもので、初めてその単語と出会った時の、時間的・空間的な刻印は失われている。
タルヴィングは長期記憶(ないしは遠隔記憶)を意味記憶とエピソード記憶(episodic memory)に分けた。
エピソード記憶とは日々の出来事の個人的・具体的な記憶であり、時間的・空間的に定位され、その時の感情も含むような記憶である。例えば、「昨日、友人とテニスをし、帰りに映画を観たがあまり面白くなかった」といったものである。いわば個人の生活史的記憶であり、最も普通の意味での記憶といえる。
従来より臨床的に記憶障害として扱われてきたものはエピソード記憶であり、意味記憶の障害は痴呆などの知能障害や巣症状との関連で(言語性記憶障害など)取り上げられたにすぎながったが、近年エピソード記憶の障害を伴わない意味記憶の選択的障害を示す症例も報告されている。この2つの記憶の神経機構は異なるとする見解が多いが、意味記憶はエピソード記憶としての経験が繰り返されて得られるものであり、両者の差は量的なものにすぎないとする考えもある。

イミプラミン結合 (Imipramine binding)
躁うつ病の生物学的指標の1つであり、うつ病者血小板においてこの部位の減少が報告されている。
イミプラミン結合の研究は、ランガーらのグループにより始められ、ラット脳内に抗うつ薬であるイミプラミンの結合部位が存在し、この結合部位の脳内での分布が、セロトニン神経の分布とほぼ一致し、セロトニン取り込みに関与していることが明らかとなった。さらに彼らは、ヒト血小板にもこの部位が存在し、うつ病者において減少していることを報告した。以後この追試が行われたが、うつ病者で減少しているとの報告が多いものの不変との報告もある。
当初、この減少が素質を反映したものとされていたが、最近では状態依存性の生物学的指標と考えられている。他の疾患についても検討され、偏頭痛・恐怖発作・慢性の身体痛・アルツハイマー病などで低値との報告もあり、イミプラミン結合の低下は、必ずしもうつ病に特異的な所見ではない。中枢との関連では、自殺者死後脳においてこの部位が減少していることが報告されている。

イメージ療法 (Image therapy)
イメージ体験を中核的に用いる心理療法の総称。広義には、東洋と宗教と結びついて発達したヨガ・禅などの心理療法的展開や西欧キリスト教的な瞑想法を軸にさまざまに発達したものも含まれる。
イメージ療法の多くは、覚醒閉眼でさまざまな誘導法や指示の仕方が治療目的によって工夫されている。患者が生起した視覚イメージが抽象・象徴的なイメージ内容から、次第に患者本人に了解できる中核的・具体化したイメージへの変化に伴い、生き生きとした感情を体験することになる。このことは患者にとって精神内界における危機的な状況を生み出す。 そこで例えば"三角形"や"壷"などを指定イメージとすることでそれが安全弁となるばかりでなく、その"壷"などを利用して、ある程度の治療ペースのコントロールが可能であるとされている。
ユング派では、イメージは夢分析や絵画、箱庭などを介することが多い。

医薬原性精神障害 (Drug-induced psychiatric disorders)
医薬品などの薬剤により引き起こされる精神障害で、症状は薬剤の急性ないしは慢性投与により発現するが、薬剤によっては中断時に現れる。症状はせん妄状態、幻覚妄想状態、躁状態、うつ状態、その他の精神症状に大別される。
医薬原性精神障害の治療の第一は疑われる薬剤を中止するか他剤に変更することである。原疾患の治療のため、薬剤の中止が困難な場合には、症状に合せて向精神薬を投与する。また、出現した精神症状が原疾患によってひきおこされていることも考慮する必要がある。症状精神病などがその例で、この場合は原疾患の治療により精神症状は改善される。

意欲減退 (Hypobulia)
意欲が減少し、行動へと移るのが妨げられること、またそうなった状態。精神分裂病・痴呆・器質性精神障害にみられる。
うつ病の精神運動抑制と区別すること。類語に意志欠如があるが、欠如といっても完全な喪失ではないので、ほぼ同じ意味で用いられる。意欲と意志という訳語の違いには意味はない。

意欲増進(Hyperbulia)
第一には衝動的な意志の病的な亢進を意味し、統合失調症者やヒステリー者が常軌を逸した痛みに耐えたり、統合失調症者が傷みに耐えつつ自傷行為を行うことなどを指す。
第二には行為への意欲の病的な増大を意味し、精神運動性興奮をその代表とする。ただし病的体験への反応として生じた精神運動性興奮は含まれない。また、単なる抑制の欠如として運動量が増加したものも除く。この場合には運動の質が低下するのが普通である。

医療心理学(Medical care psychology)
医療場面において、医師およびパラメディカル・スタッフが臨床的に実践するために必要な心理学知識と方法の体系のこと。精神科医のみならず、各科の医師・看護スタッフ・保健師・研修医・医療分野で臨床に携わる心理学者・ケースワーカー・リハビリテーションのスタッフ等全ての医療スタッフに役に立つ臨床的な心理学を意味する。
医療心理学を支える基礎知識と方法として、従来の精神症状学と疾病学などの神経精神医学に加えて、精神分析学、コンサルテーション・リエゾン精神医学、心身医学、コミュニティ精神医学、臨床心理学などの知識と方法が重要である。特に全人間的な視点に立った精神力動論、治療関係論、さらに各臨床場面で医療スタッフが担う種々の個別的な問題を扱うコンサルテーションを包括する。

医療ソーシャルワーカー(Medical social worker)
保健・医療分野に雇用され、あるいは関連機関での広義の医療チームの一員として働くソーシャルワーカーのこと。とくに精神医療分野におけるワーカーを、精神医学ソーシャルワーカーまたは精神保健福祉士(PSW; Psychiatric social worker)ということがあるので、医療ソーシャルワーカーにこれら両者を含める場合と、精神医療を除いた分野のソーシャルワーカーを意味する場合がある。
その職務は、患者および家族に対する療養生活上の諸問題への援助、例えば経済的問題、心理的問題、家族関係などへのカウンセリング、教育的プログラムの運営、自助集団の組織化への援助などから、特別な訓練を受けたうえでの家族療法、集団療法などへの参加、そして社会復帰活動の展開など、広範にわたる。また病院と地域の社会福祉期間・施設との連携、地方自治体の計画や住民活動への参加、ボランティアの募集・教育などにおける働きも有効である。
患者と家族の生活の全体的理解にもとづき、保健・医療・福祉の諸制度のそれぞれの充実と良い連携のもとに必要な社会的諸サービスを組織するために、医療の中にあって社会福祉を担当する医療ソーシャルワーカーの役割は重要である。

医療保護入院(Admission for medical care and custody)
精神保健法で定められた、保護義務者の同意による入院のこと。第33条では、「精神病院の管理者は、指定医による診察の結果、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要があると認めた者につき、保護義務者の同意があるときは、本人の同意がなくてもその者を入院させることができる」。 また第20条では「精神障害者については、その後見人、配偶者、親権を行う者及び扶養義務者が保護義務者となる」と規定されている。
扶養義務者の中から保護義務者が選任される必要がある場合、扶養義務者の同意によって、選任までの4週間に限り入院させることができる。病院管理者は、入院に関する患者本人への書面での告知(医療上の支障がある場合は延期できる)および入院・退院の際の都道府県知事への届出が義務付けられる。
任意入院と異なって本人にとっては強制的な側面をもつ入院であり、慎重な運用が要求される。人権擁護のため指定医による入院の際の診察と定期的な報告が義務づけられ、精神医療審査会による審査が行われる。

イン・アンド・アウト・プログラム(In and out programme)
英国の精神分析家で対象関係論を大成したガントリップが、シゾイドパーソナリティ障害(統合失調質人格障害)が示す最も特徴的な振舞いないしはその背後にある慢性的なジレンマとして述べたもの。
彼らは安心を求めて対象との関係に入ると、対象に呑み込まれ自己を失うという恐怖と、対象を破壊してしまうという恐怖を持ち、しかし自立のために対象から離れると自己と対象を喪失するという不安に襲われる。その結果「入る-出る」、「すがる-逃げる」という同様を繰り返し、安定した情緒関係を維持できない。 こうした不安や恐怖があまりにつよくなると、外的対象との愛情関係を放棄し、対象関係からの完全な撤退が起こり、愛や怒りといった情緒を体験しない情緒的アパシーの状態に陥り、さらに何も感じることなく行動する機械的ロボット・パーソナリティになってしまうという。

因果関連(Kausaler Zusammenhang)
観察や実験の多数例の蒐集によって起こった事象の規則を見いだし、因果的に説明するような関連のこと。自然科学においてはもっぱらこの因果関係を捉えようとするが、ヤスパースによって精神病理学にも導入された概念であり、了解関連と対立する。
この方法では、一方には原因となる要素(例えば身体的過程)、他方には結果となる要素(例えば幻覚)という2つのものが結び付けられる。さらに規則が見いだされることもあるが、法則を見いだすことは稀であり、まして数学的に因果方程式で表現することは対象を完全に数量化することが前提となるから、質的なものである精神的なものの場合には、その性質を失わずには原則的には可能ではないと言える。

インクルーデンツ(Inkludenz)
テレンバッハが提示した内因性うつ病の精神病理学的な概念の1つ。「几帳面・強い責任感・勤勉・献身的・徹底的」などの性格像をもつメランコリー親和型の人間は、引越し・転職・定年・結婚・閉経などに直面したとき危機的な前メランコリー状況にさらされる。テレンバッハはこの状況の空間性をインクルーデンツ(封入性・自縛性・内包)と呼び、時間性をレマネンツ(負い目・残留・仕残し)と呼んだ。
メランコリー親和型の人間は自己の日常生活の変化があった際、新しい秩序で他者の期待に応えなければならないと腐心する。義務を中途半端にせず能うかぎり几帳面にやりとげることが秩序に借りを残さないことであり、細部を無視し部分を犠牲にすることに耐えられない。インクルーデンツとは、意志の力ではどうにもならないこうした自家撞着のうちに閉じ込められることである。
メランコリー親和型の人間はこの状況の中で、予定した仕事が決められた時間内で決済できず自己の要求水準に達しない時、「なすべきことを完璧になし遂げたいが、なすべきことが残されている」という自家撞着にも陥る。これをレマネンツと呼ぶ。
インクルーデンツとレマネンツは、一方が他方なしには現れない相補性を持ち、あらゆる前メランコリー状況に現れる。

因子分析(Factor analysis)
一般に心理検査などの検査を作成する手順として、@検査で測定したい特性を理論的に特定する Aその特性を反映していると考えられる下位項目を作成する B予備検査を行ってAで作成した下位項目が真に@の特性を反映しているか否かを吟味する、という段階が取られる。
この時@で特定された特性は理論的に構成された概念で直接測定することができない。そこで、Aの下位項目によって間接的に測定を試みることになるが、因子分析では@の理論的構成概念(これが因子と呼ばれる)とAの下位項目の測定値の間に線形な回帰モデルを考えて、その回帰係数のふるまいから、下位項目が因子をよく反映しているか否かを検討する。

インスリンショック療法(Insulin shock treatment)
精神病に対する身体的治療法として、インスリンによる低血糖昏睡を積極的に生じさせる方法。ウィーンのザーケルによって確立されたもので、主として精神病者の栄養改善や拒食に用いられていたインスリンを、麻薬中毒患者の治療に応用するうちに、これによる低血糖昏睡およびけいれん発作に注目したのがその端緒となっている。
妄想型統合失調症や緊張病性興奮に有効であるとされた本療法も、現在ではほとんど用いられなくなっている。本療法の確立以降、カルジアゾールけいれん療法、電気ショック療法などのショック療法が次々と登場した。

陰性幻覚(Negative hallucination)
一定の感覚印象が、その客観的条件は十分成立しているにもかかわらず、それとして知覚されない現象を指す。例えば、外界の対象や人が視野の中にありながら、これらが見えないと感じる体験をいう。
陰性幻覚は、実在する対象が存在しないと感じる主観的知覚から成り立っている点で、存在しないものがあると主張する通常の(陽性)幻覚の対極にあるということができる。このように一般化すると、統合失調症で時に観察される、自分や他人の身体の一部が消えてなくなるなどの体験も、陰性幻覚に組み入れられる。

陰性症状評価尺度(Scale for the assessment of negative symptoms)
統合失調症の陰性症状を定量的に評価するために評価尺度。アメリカのアンドレアセンにより1982年に発表された。
全体は情動の平板化・情動鈍麻、思考の貧困、意欲・発動性欠如、快感消失・非社交性、そして注意の障害の5つの大項目からなる。

陰性症状(Negative symptom)
統合失調症の症状のうち、無感情・思考と動きの緩慢・寡動・意欲欠如・会話の貧困・社会的ひきこもり等のこと。

陰性治療反応(Negative therapeutic reaction)
精神分析療法の途上で治療の進捗と病状の改善が期待される時に、かえって患者の具合が悪くなる現象で、1つの「抵抗」とみなされる。
フロイトは、この現象を患者の道徳的マゾヒズムないしマゾヒズム的性格構造に発する無意識的罪悪感(病気にかかることにその満足を見いだし、この苦痛の罰を捨てようとしない)と結びつけた。

隠蔽記憶(Screen memory)
幼児期記憶の想起をめぐってフロイトが明らかにした精神分析概念。幼児期体験は抑圧によって想起困難になっているが、その代わりしばしばその些細な断片的な記憶が保たれている。そして患者が幼児期のそれとして想起するこれらの断片的記憶は、多くの場合 その時期の実際の記憶ではなく、別の経験の記憶であって、しかも一見無意味なものに見える。このような記憶を、記憶内容が抑圧された重要な幼児期体験を蔽い、その代理をなしていることから、隠蔽記憶と呼ぶ。精神分析技法の1つに、この隠蔽記憶の連想をたどって隠蔽された幼児期体験を再構成するものがある。

意味付けされたアイデア (Idea of Referenceisorder)
妄想と似ているが、自分のアイデアのリアリティーに疑問を持っている点で異なる。
(例:バスの乗客全員が自分の事を話しているのではないかと思うが、そのアイデアは、現実的ではなさそうだという事はわかっている。)

意味付け妄想 (Delusion of reference)
とるにたらないコメントや物、または出来事を、患者にとって特別な意味があると信じる事。
(例:患者が、ラジオから流れる音楽が、彼の潜在意識に向けられたメッセージであると信じる。)

※出典:新版精神医学事典(弘文堂)

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