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今日の心理学用語バックナンバー <え>

映画フィルム的思考([独]Bildstreifendenken)
自己活動感と同時に強い情動を伴った意識狭窄状態にある患者の表象における、映画フィルムのように繰り広げられる場面的な観念群、すなわち、"視覚化された思考"のこと。
例えば、被催眠者が平生考えていることを形象的に体験する。心的体験は絵巻物さながらであり、視覚化された形象が映画フィルムのように展開する。

影響感情('Made' feeling, Passivity feeling)
自分の思考や行為が外から干渉・支配されると感じること。自分がしているという自我の能動意識(実行意識)が障害されるさせられ現象を、患者の主観的な感じから表現したもの。
ジャネ(P. Janet)の収用感もこれに近く、他人がそばにいて自分の言動を束縛するように感じることで、察知・強制・奪取・侵入などの要素を含んでいる。させられ現象は自我の統制が及ぶ領域の心的生活に生じるので、おもに思考・意志欲動の症状として現れ、一般にさせられ感情はないとされているが、影響感情をこの意味に用いることもある。

影響妄想(Delusion of being influenced, Delusion of control)
自分が外から干渉され支配される内容の妄想。自我意識の障害によるさせられ現象に含まれる。催眠術をかけられて操作される感じは催眠感で、催眠妄想ともいう。「体に電気をかけられる」と訴える場合は物理的被害妄想に近くなる。何かが乗り移って自分に一部や全部を占領されるとつきもの妄想といい、社会・文化を反映して悪魔つき・狼つき・狐つき・犬神つきなどがある。
フランスでは影響妄想・つきもの妄想・運動要素の強い偽幻覚などを主徴とする妄想疾患を、影響症候群や影響精神病の名で一括し、感覚性幻覚を前景とする妄想疾患の対極におく傾向がある。さらにクロードやギローの外来現象は、外の何かに動かされるという意味で感覚性幻覚と精神自動症を含む一種の影響妄想である。

AMDPシステム(The AMDP-System, Association for Methodology and Documentation in Psychiatry)
ドイツ語圏で1960年前後から開発され、1979年に「AMDP-System(精神医学における症状評価と記録の手引」として出版された、欧州で使用されている精神科所見記録システム。 ドイツ語圏の精神医学に基づく精神科病歴(現病歴・ライフイベント・既往歴・家族歴)と現在症(精神症状と身体症状)の重症度を含めた半構造化面接による数量的記録方式であり、5枚のチェックシートによりコンピュータに入力して種々の解析が可能である。 評価対象疾患は内因精神病(統合失調症圏と躁うつ病圏)と身体的基礎のある精神障害(器質性・症状性・中毒性)および重症の神経症である。

A型行動パターン(Type A Behavior Pattern)
アメリカの循環器病学者であるフリードマン(M. Friedman)とローゼンマン(R. Rosenman)により1959年に指摘された一連の行動パターンであり、具体的には「気性が激しく、仕事においても余暇の時も競争心が強く、いつも時間に追われイライラした感じがあり、絶えず物事を達成する意欲を持つ」などの行動が挙げられる。
この概念は行動科学の流れの中で生じたため、「性格ではなく表面から観察できる行動様式である」点が強調されているが、その基本にある諸特性は、従来の精神分析的研究の中で述べられた性格傾向に類似している。
臨床的には虚血性心疾患の発症と密接な関係があり、従来の危険因子とは独立した冠危険因子であると言われている。しかし最近では、行動パターン全体ではなく、「敵意性」などの構成要因のほうが有意義であるという報告もある。また、A型の「A」に特別な意味はない。

エクスタシー(Ecstasy)
恍惚あるいは恍惚大悦と訳され、生命感情全般が興奮して最高潮に達している、「不安」の対極的反対像である内感情状態のこと。単語の起源であるギリシャ語では、「自分という個人性の限界から歩み出た、自分の外にある体験」を意味する。
エクスタシーは一時的な「狂気」だとも言われているが、臨床的には「催眠的もうろう状態のもとで意識の狭窄が生じ、外界との接触が失われて一過性に感覚や運動が中断され、ある心的能力が異常に亢進する反面、他の能力が抑止されるといった対照的な精神活動の相を示す症状」として知られ、強硬症と合併して、強硬性エクスタシーとなることが珍しくない。
発熱・重い結核・てんかん発作の前兆・ヒステリー・統合失調症・麻薬/LSD/シンナーなどの中毒・性的オルガスムなどの症状として認められることがある。内容的には、天来の声や音楽が聞こえて、天界が開け、聖なる神体や仏が現れて交流し、妙なる香り、妙なる味を感じ、筆舌に尽くしがたい快楽が身体を貫く至福感として、エロス的・宗教的な体験だと言われる。シャマニズムのような宗教的崇拝に際し、集団的なエクスタシーが生ずることも知られている。

エクムネジー(Ecmnesia)
1887年にピートル(A. J. Pitres)の教室のヒステリー患者について、ブラン-フォントニーユ(H. Blanc-Fontenille)が記載した記憶障害。患者は発作的に、過去のある時期に戻り、当時の体験そのままをあたかも現在の出来事のように再体験する。その時、患者はその過去の時期以後に実際に体験したことを忘却して思い出せない。
エクムネジーの本来の意味は、この過去のある時期から現在までの体験を忘失していることに重点を置いていた。しかし、一般に広く用いられている意味では、それは過去のある時期に戻り、その体験を如実に再体験することに限定され、ヒステリー・てんかん・脳腫瘍などの意識障害にみられ、催眠術・幻覚誘起剤によっても惹起される。 また、エクムネジーは前向健忘の意味にも用いられるが、それは上述の、過去のある時期から現在までの体験を忘失しているという、本来の意味から派生した用い方ではないかと考えられる。

エゴグラム(Egogram)
デュセイ(J. M. Dusay)が開発した、交流分析の理論である「自我状態」のあり様やバランスを理解するために、各状態をダイヤグラムにしたもの。自我状態の心的エネルギーは各個人においては一定であるという仮定にもとづき、それぞれの心的エネルギーをダイヤグラムに表わし、このエゴグラムから自分の自我状態に気づき、人格のよりよいバランスを回復したり、自分が望む状態に変革していくために活用される。
交流分析は、自我状態の分析・狭義の交流分析・ゲーム分析・脚本分析という4つの柱の理論構成から成り立っている。この中の自我状態は、人格に見いだされる諸側面を主に機能面から以下のように5種類の状態に分類したものである:規範を指し示すような父親的な状態(CP:critical parent)、養育的な母親的な状態(NP:nurturing parent)、理性的で客観的な対応をする状態(Adult)、自由で生き生きとした子供のような状態(FC:free child)、無理をして大人に従っている子供のような状態(AC:adaped child)である。
当初は直感的に自分や他者のエゴグラムを描いて利用していたが、のちに質問紙も開発され、わが国において標準化されたものに東大式エゴグラム(TEG)がある。

エス(Id、[独]Es)
フロイト(S. Freud)によって用いられた本能エネルギー組織に関する精神分析の基本概念。彼によれば、人間は生得的に、生物学的に規定された本能的欲動を備え、この欲動は成長とともに発達のプログラムにしたがって自然に成熟するが、エスは、このような本能的欲動に由来する心的エネルギーを意味する。 もともとニーチェ(F. Nietzsche)が人間の中の非人間的なもの、自然必然的なものについて、文法上の非人称の表現"エス(Es)"を用いたのにしたがって、精神分析学者のグロデック(G. Grodeck)が無意識的な本能的欲動をエスと名付け、フロイトも自らの用語として採用した。
エスは系統的発生的に与えられた本能エネルギー(攻撃的・リビドー的)の貯蔵庫であり、快感原則だけに従い、無意識的であり、現実原則を無視し、直接的または間接的な方法(症状形成や昇華)によって満足を求める。それは論理性を欠き、時間をもたず、社会的価値を無視する。したがって我々はエスを自我機構を介してしか体験することができない。

HTP法(House tree person technique)
投影技法を用いた心理検査の1つで、家屋・樹木・人物の3種の課題を被験者に描かせて、描画とそれに関する質問から性格判断を行う方法である。
HTP法の特徴は、被験者が親しみやすく、しかも描画に投影しやすい課題を与えることによって、被験者の性格特性を明らかにできる点にある。検者は、それぞれの描画について、形式面と内容面から評価する。この方法により、被験者の性格特性に加えて、おおよその知的水準を知ることも可能であり、さらに統合失調症や躁うつ病などの精神疾患や神経症についてもその病態の一面を把握できる。
バック(J.N. Buck)は、これらの課題を1枚ずつ3枚の画用紙に描かせているが、人物画については男性像と女性像の2枚を描かせる方法もある。種々の変法が開発されており、1枚の画用紙に家屋・樹木・人物を鉛筆やクレヨンを用いて描かせる方法は統合型HTP法と呼ばれ、心理検査に加えて芸術療法の一手段としても用いられる。

ADL(Activities of Daily Living)
1人の人間が独立して生活を営むための動作であって、各人にとって基本的であり、かつ誰にでも共通して毎日繰り返される一連の動作を言う。日常生活動作と邦訳される。
具体的には食事・排泄・着衣・移動・入浴などの目的をもった動作を指すが、これらの各作業はさらにその目的を実施するための細目動作に分類される。リハビリテーションの過程や老人の動作について健常者と量的・質的に比較され、記録される。
ADLは三要素に分けられているが、それらは身体機能PADL(Physical ADL)、より複雑な道具を用いる機能IADL(Instrumental ADL)、これら二者と重複する移動機能(mobility)よりなる。評価法は標準化されたものを使用目的にしたがって選択し、用いることが望ましい。PADLの評価にはカッツ(S. Katz)らのものやグレンジャー(C. V. Granger)らのものがあり、後者には移動機能が含まれる。IADLの評価にはロートン(M. P. Lawton)とブローディー(E. M. Brody)らのものなどがある。

A-Tスプリット(A-T split)
精神分析的方向づけの下に行われる入院治療において、管理医(Administrator)と精神療法者(Therapist)とを分ける治療形態、またはその治療的機能。
米国メニンガー・サナトリウムでの臨床実践の中から生まれたもので、とくに境界性人格障害などの自我機能水準の低い、重篤な病理を持つ患者の治療にしばしば用いられる。 これらの患者には時として現実認識の歪曲や行動化が認められるため、投薬や行動制限、医学的管理・指導などの現実的側面を担う管理医と、患者の秘密を保持しつつ精神内界の病理を扱う精神療法者とを機能分化することが治療上有効であるとされる。
一方ではこの機能分化が治療者集団の分裂を助長するという批判もあるが、利点が上回るということで1940年代までに一応の結論が出ているとされる。臨床的には、管理医と精神療法者がどこまで情報交換を行うか、また治療開始後どの時点でA-Tスプリットを導入するかなど、さまざまな問題点が議論の対象になっている。

エディプス・コンプレクス(Oedipus complex)
フロイト(S. Freud)が提唱した、無意識心理に関する精神分析の基本概念の1つ。この名称は、父であるテーベの王ライウスを殺害し、母たる王妃ヨカーテスと結婚し、やがて真相を知って自ら両目をえぐり抜いた「エディプス王」の悲劇(ソフォクレス作)に由来している。
子供が両親に対して抱く愛と憎しみと恐怖を中心として発展する観念複合体。2種類あり、陽性のものでは、異性の親に性的愛情を抱いて同性の親に嫉妬や憎しみや恐怖を抱く。陰性のものでは、この逆に同性の親に愛情を抱いて異性の親に憎しみを抱く。実際には、この2つは種々の度合で並存し、男の子が父親に女性的な優しい態度をとったり、母親に嫉妬的態度をとったりすることもある。 これは、自我がこのコンプレクスにどのように対処し、どう解決しようとしているかによって規定される。
フロイトによれば、このコンプレクスは、幼児が3〜4歳になって精神・性発達上の男根期に入ると生じ、6歳頃の潜伏期の始まりとともに抑圧され、思春期に再び復活して対象選択に重要な役割を演ずる。例えば男の子は、男根期に入ると性の違いに目覚め、母に対して性的欲望を感じて父に嫉妬し、父の死を願うようになる。しかし父を愛してもいるために苦痛を感じたり、自分の敵意のせいで父に処罰されるのではないかという去勢不安を抱くようになるという。
通常、男の子は去勢不安に脅かされてこのコンプレクスを抑圧し、父同一化を行って男性らしさを確立していくが、女性性に向かった本能素質が強い時には、父への敵意や競争心を放棄して、母同一化することによって父に愛されようとして、男性性を失って同性愛傾向を強めていく。このように、このコンプレクスの解消のされ方は性格形成と深く関わるが、その他にも性的同一性の確立、超自我や自我理想の形成、神経症の発症とも重要な関連をもち、精神分析理論の要となっている。

エネルギー恒存の法則(Law of constancy)
心的過程は発生した興奮(心的エネルギーの高まり)をできるだけ解消して安定した無の状態に向かおうとする基本法則に支配されている、という精神分析の基本仮定。
精神分析以前に、すでにフロイト(S. Freud)は、物理学者フェヒナー(G. T. Fechner)によるエネルギー恒存の法則を神経的に適用し、各ニューロンは補給されたエネルギー量の緊張を失ってゆこうとする「ニューロン慣性の原理」を仮定したが、やがて「恒存の法則」が心的過程を支配し、欲動緊張の増大が不快・その減少が快として経験され、心理的には、この法則が快感原則として現れると考えた。
またフロイトは、バーバラ・ロー(Barbara Low)の提起した涅槃原則(Nirvana principle)とこの「恒存の法則」を同義のものとみなしている。しかし、1924年になると「恒存の法則」ないし「涅槃原則」と「快感原則」を区別するようになり、当時の本能二元論(エロスとタナトス)の見地から「恒存の法則」つまり「涅槃原則」は死の本能に由来するが、生の本能と結合することによってそれが「快感原則」に変容されると述べている。 一般に、フロイトの「死の本能」論に批判的な人々も、飢え・性欲などの本能的欲動に関してこのエネルギー恒存の原則が働き、この法則が心理学的な原則としては「快感原則」の形に現れるという見解には同意するものが多い。

MSLT(Multiple sleep latency test)
入眠潜時(入眠に要した時間)を繰り返し測定することにより、日中の生理的な眠気を客観的に測定する方法。
被験者は暗い静かな部屋でくつろいで入眠するように指示される。記録は脳波・眼球運動・筋電図などを中心に記録する。テストは前夜睡眠の覚醒後1時間半から2時間後に開始され、その後2時間おきに1日5回以上行う。入眠したら1分で検査終了とし、入眠しない場合は20分で検査を中止する。
眠気は検査開始から入眠した時刻までの時間で表示する。MSLT値が大きいことは覚醒度が高いことを示し、低いことは眠気が強いことを意味する。
MSLT値は、年齢・前夜の睡眠時間・測定時刻によって異なる。加齢とともに眠気は増加し、成人では午後の早い時刻に眠気が強い。MSLTは睡眠剤による日中の眠気測定や、ナルコレプシー・過眠症・睡眠時無呼吸などの睡眠疾患の診断に用いられる。

エレクトラ・コンプレクス(Electra complex)
女性の持つエディプス・コンプレクスと同内容の観念複合体に対して、ユング(C. G. Jung)が1913年に命名したもの。エレクトラの名称は、ギリシャ神話のミケーナの王アガメムノンの娘に由来する。
男の子と女の子に、両親に対して対称的な態度が存在する。すなわち、4〜6歳の女の子の心には、男の子のエディプス・コンプレクスに相当する父親への愛着や母親への敵意と競争心が認められるという。フロイト(S. Freud)は必ずしもこの考えに同調せず、男女間で去勢コンプレクスの意義が異なり、異性の親への愛着と同性の親への敵意によって一生の運命を規定されるのは、男の子だけであるとした。
エディプス・コンプレクスでは去勢不安が中心となってその後の発達が進むが、エレクトラ・コンプレクスはペニス羨望によって開始され、女の子はこのペニス羨望への対処の仕方に応じて、女性的になったり、男性的になったり、幼児的な甘えた性格になったりする。

エングラム(Engram)
記憶の過程においては、刺激や体験が記銘され、ある期間滞在的に保持ないし把持された後に、再生・再認などの形で現れてくる。ヘリング(E. Hering)は記憶をあらゆる有機体に備わる機能としたが、動物学者ゼーモン(R. Semon)は、これに立脚して有機体に興奮が生じると、記憶を媒介する物質が生成され持続的に残ると考え、これをエングラムと呼んだ。 これによって記憶保持や習慣を説く、すなわち刺激の保持存続を主にしてみた記憶説であり、エングラムの再興奮過程であるエクフォリー(ecphory)によって記憶が再生されるとしている。このような有機体全般にみられる記憶機能をムネーメ(mneme)と呼んでいる。
現在この持続的変化は、神経細胞膜の可塑性や、それらのシナプス結合の特性、神経細胞の核酸や蛋白合成のような化学物質の変化と考えられている。心理学的には、体験の無意識に潜在化された記憶痕跡(memory trace)として、ややルーズに使われる傾向があり、ユング(C. G. Jung)は種族の集合無意識内容、神話的主題にまでこの言葉を応用している。

エロトマニア (Erotomania)
特定の他人から、おそらく密かに愛されていると妄想的に信じる事。通常、その他人は、患者よりも社会的なステイタスが高い。

エントレインメント(Entrainment)
時差ぼけがなおる時のように、生体リズムが外界のリズムと同調化する現象を指す言葉。さまざまなエントレインメント現象の中でも、会話中に相手の言葉にうなずく動作のように、同調化する対象が対人関係の中で相手が発するリズムであるとき、エントレインメントはコミュニケーションとしての意味を持つ。
この対人関係におけるエントレインメントの起源について、コンドン(W. S. Condon)らは、新生児が養育者の語りかけに同調して手足を動かすエントレインメントが観察されることを指摘した。
小林登らはこの現象を定量的に計測し、母親の語りかけから一定のタイムラグをおいて乳児の体動が見られ、また乳児の動きが母親の言葉を誘発していること、雑音では音と体動に一定の関係がみられないことを証明し、エントレインメントが出生後ごく早期から始まる生得的行動であり、母子のコミュニケーションの基礎となることを明らかにした。 クラウス(M. H. Klaus)とケンネル(J. H. Kennell)はエントレインメントを新生児期の母子の相互作用の1つとしてあげている。

※出典:新版精神医学事典(弘文堂)

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