(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)
解離性同一性障害のクライアントさんは、セッション中に交代人格が出てくることが少なくありません。
人格が交代する時には、よく注意しているとなんらかのサインがあることに気づきます。ちょっとした目の動き、指先の
ふるえ、チックなど非言語メッセージを捕まえることは、とても重要です。
セッションの中で、解離性同一性障害のクライアントさんの左手が微妙に震えているのに気がついた時のことです。
僕は、交代人格が出たがっているのではないかと推測し、クライアントさん(主人格)に、左手の震えに注意を向けるように
促しました。すると、左手の震えが激しくなりました。
僕は、クライアントさんに、左手を意識しているとどんな言葉が浮かぶか聞いてみました。「怒り」や「イライラ」といった
言葉が左手の感覚に近いとのことですが、それでも左手の動きは変わりません。
なかなかピッタリした言葉が浮かばないので、僕も、思いついた言葉を挙げていきました。そのうち、僕が「敵意」と言った
とき、彼女の左手の動きがぴたっと止まりました。
彼女によれば、その瞬間「左手から、自分の心臓に向かって、熱いものが流れてくるような感じ」だったと言います。
そして心臓のあたりにもやもやした嫌な気分が残ったのだそうです。このもやもやした嫌な気分が「敵意」という気持ちを
表していたわけです。
主人格は、それまで敵意という言葉は知識として知っていたのですが、感覚としては、どんなものなのか理解できていません
でした。左手から熱いものがながれてきた瞬間、彼女は、主人格のままで「敵意」という感情を実感することができたのです。
つまり、主人格は、「敵意」という感覚を、主人格でいながら持つことができたわけです。
それまでの彼女は、「敵意」という感覚は、別の交代人格に担当してもらっていたのでしょう。
このセッションから1週間後、すごいことが起きました。それまで断片的だった小学校以降の記憶がほぼつながりました。
彼女の中の十数個の人格が1週間で統合したのでしょう。
解離性同一性障害の場合、主人格にストレスを与えるような感情は、別の交代人格が担当します。
主人格が、さまざまな感情を抱えるようになることができるようになると、人格の統合が進んでいきます。
