(本稿は、カウンセラー'sブログより抜粋したものです)
解離性同一性障害とは、かつて多重人格と呼ばれた精神疾患で、たくさんの人格がひとりの人の中に存在し、それぞれの人格同士に
記憶のやり取りがありません。
だれでもたくさんの顔は持っていますが、それはあくまでその人の中のサブパーソナリティであって、記憶はひとつに統合されて
います。
つまり、人格Aが宴会に出た後、人格Bになってカラオケに行ったとすると、人格Aは宴会しか覚えていない、人格Bはカラオケ
しか覚えていないという状態になるのが、解離性同一性障害であって、健康な人は人格A(サブパーソナリティA)と人格B(サブ
パーソナリティB)を意思を持って使い分けることができます。
解離性同一性障害の方へのカウンセリングの中で、「ひとりグループセラピー」を行うことがあります。
クライアントさんにイメージ誘導し、イメージの中で、交代人格に出てきてもらって、人格同士で話し合いをする方法です。
交代人格同士は、基本的に記憶のやり取りがありません。そこで、イメージの中でディスカッションし合って、そうした話し合いを
続けるうちに、交代人格の間につながり感が形成されていき、人格の統合につながるきっかけになり得ます。
クライアントCさん(女性)は、非常にたくさんの交代人格を持つ方でした。
Aさんの中のひとつの人格に自殺願望が出てきて、不安定な状態になったときに、安全確保の体制を人格同士で作ってもらう目的で、
その「ひとりグループセラピー」を行いました。
そのときの「グループセッション」の中で、自殺願望が高まっている人格は、今までほとんど表に出てきていない人格(人格Dと
します)であることがわかってきました。そして、そのグループセッションにも出てきてくれませんでした。
他の交代人格たちが、いくら呼びかけても、人格Dは出てきてくれません。
その時のグループセッションに参加していた人格EやFは、「Dは、人見知りだし、めったに出てこない」と言います。
んー、こまったと思っていた時、僕の携帯の着信音が鳴ってしまったのです。
僕は、カウンセリングの時は、携帯の電源を切るようにしていたのですが、その時は、うっかり忘れていたのです。「まずい!」と
思って、電源を切ったところ、人格E(この人格は、男性です)が、「きっと、Dからの電話だよ」と言いました。
僕は、人格Eに(身体的には、クライアントCさんに)、電源を切った携帯を渡しました。人格Eは、自殺願望の高まっていた
人格Dと話をし、僕の言葉を伝えてくれました。人格Eによれば、人格Dは、僕と直接話すことは拒否しているとのことでした。
この変則的なグループセッションの結果、人格Dの自殺願望は沈静化し、結果的にクライアントCさんの危機は、回避されました。
あの時、いつものように僕が携帯の電源を切っていたら、そして、携帯の電源が入っていたとしても、たまたまあの時間に電話が
かかってこなかったら、Cさんの安全を確保することは、もっと困難を伴うことになったに違いありません。
