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セラピーについて ・・セラピストは助産師?・・

セラピーというと、
「セラピストが、クライアントの心理テスト結果に従い診断し、セッションでのやりとりを分析し、
クライアントの誤った現実認識や無意識的な行動を指摘し、その原因を探り出し、セラピストがその解決方法を考え、
クライアントにアドバイスを与える事により病気を治す場。」
といったイメージを持たれている方もおられるかもしれません。

確かに、この様なセラピーのやり方もあるのでしょうが、私が行っているセラピーとは、だいぶイメージが異なります。
まず、心理テストの位置づけが違います。
心理テストは有効なアセスメントの手段のひとつではありますが、その結果を過信する事は好ましくないと私は考えます。
テストの結果は絶対では無く、診断やクライアントの症状の経過の目安にするあるいは補足的資料として使うといった
認識の方が良いでしょう。
人のこころは機械ではありませんから、算数の様に答えが一つという事はないし、その人の育った文化や環境によっても
答えが違ってきます。テストだけで画一的にクライアントの状態を判断する事は危険です。

また、クライアントを「分析」し、その分析結果を一方的にクライアントに押し付けるという事は最近(のアメリカのカウンセリング)
ではあまり無くなってきています。
私の場合、基本的にクライアントと共に問題に取り組むというスタンスをとっていますので、例えば夢の解釈においても、
「空を飛んでいる夢なので、あなたには性的願望がある」等と断定的な判断を下す事はしません。
人にはそれぞれ、それまでの人生でつちかってきたイメージがあると思うからです。私は、「空を飛ぶ」というイメージが、
そのクライアントにとってどんな意味を持つのか一緒に考えます。
サンフランシスコでカウンセリングを学んでいた時、よく教授達から「セラピストは、助産師みたいなものだ。」と教わりました。
すなわち、生み出すのはクライアントの方で、セラピストは、ただ廻りの環境を整え、出産を見守り、応援するだけなのです。

こんなたとえ話しがあります。トンボが幼虫から羽化する時、殻を破って出て来るのはとても苦しいのだそうです。
この時、苦しそうだからといって、例えば、人間が殻を破ってしまうと、そのトンボの羽根はうまくひろがらず、
結局飛べないトンボになってしまうのです。
トンボにも一匹一匹自分のペースがあって、他人が介入してしまうと、固有の羽化のプロセスが台無しになってしまうのです。

心理学のひとつの大きな流れである人間性心理学では、「精神的病理の多くは自己成長のプロセスである。」と考えています。
ですから、精神的に悩んでいる人達は、悩んでいるが故に自己成長のプロセスの真っ只中にあるのです。
トンボの話しにたとえれば、そういった人達は、今まさに羽化しようとしています。そのプロセスは、だれにも代行する事は
できないのです。

ここまで書くと、「じゃあ、セラピストは高い金もらって何するんだい?」と疑問を持たれる方も多いかもしれません。
確かにセラピストは、クライアントの代わりにそのプロセスの代行をする事はできません。
でも、もし、クライアントが「こんな苦しい殻破りに何の意味があるのか?」と悩んでいるのなら、一緒に考える事はできます。
そして、殻を破ろうとするのを応援し、そのための安全な場所(セラピー)を提供するのです。

「そんな事なら、友達に相談したって同じじゃん。」と言う人がいるかもしれません。
でも、友達に本当にすべて言えますか?友達の前では、かっこ悪い所を見せたくないって気持ちはありませんか?
そういう気持ちがまったく無くて、おまけにあなたの友達があなたの悩みをしっかりと受けとめてくれて、ノンジャッジメンタルな
態度で一緒に考えてくれるのなら、その友達に相談するのも良いでしょう。
でも、そうでない人は、セラピーに行く事で、たいていの場合大きな安心を得られます。

さらに、セラピストと友達の違いは、セラピストは、セラピーの中で起こった事を絶対に外に漏らさない事が義務付けられている
事です(セラピストの守秘義務)。セラピストが外でクライアントの事をしゃべる事は、クライアントの心的な安全を脅かす事に
なるからです。
そして、セラピストは常にクライアントの利益を第1と考えます。

セラピストとクライアントのセラピーを行っている期間にのみ存在します。セラピー期間終了後、セラピストは、
「実は、○○さんが私のセラピーを受けてね・・」なんて噂話はしてはいけませんし、セラピー終了記念にクライアントと
「一杯飲もうか。」なんてことはしないのです。
セラピーが終わり、クライアントの悩みが解決すれば、まったくの他人に戻るのです。
こういう関係だからこそ、クライアントの人達は、自分の真の部分をセラピーの場で出す事ができるのです。

また、もしクライアントが結果として「殻を破るのをやめた。」としても、その結果がクライアントの真の願望に
沿ったものであればセラピストは応援します。殻を破かなくったって恥ずかしがる事はありません。
その時はまだ、機が熟していなかったのかもしれませんし、あるいは、まったく違う形で羽化しようとしているのかも
しれません。
そして、セラピストは、クライアントの選択を最も理解し、尊重している人のひとりなのです。



(向後善之)

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